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023:全てのことには意味がある

ダディットの言葉通り、思い返してみるとそれまでに「サイン」らしきものがあったように思えました。

でも、ヴィラのプロジェクトでは偶然とは思えない出来事がいくつも起こり、まるで「シンクロニシティ」のように感じていたため感覚が鈍っていたのでしょう。何かに導かれているかのようで、「自分が進んでいる方向は正しい」としか思えず、小さなサインに気づくことができずに見落としてしまっていたのです

私はダディットの言葉をきっかけに少し冷静になれました。そして自分が置かれた状況を見つめ直してみたのです。

考えてみても「どうして今回の出来事が起こったのか」という理由はわかりませんでした。でも、たとえ理由がわからなくても「このことを通じて学ぶべき何かがあるから起こったに違いない」と、ポジティブに捉えようと思いました。

今でも誰かにバリの話をすると、「パートナーに裏切られた時、どんな気持ちだったか?」と聞かれることがあります。

普通で考えれば、恨みや怒りが込み上げてきそうですが、そのような気持ちは全くありませんでした。何よりも先に出てきたのは、全てがウソだったこと、そして全てを失ってしまい二度と元には戻らないことへの悲しみや悔しさだったのです。

彼に対する怒りや憎しみなどの感情を持ったことは、今まで一度もありません。それよりも、私の夢に賛同して出資してくれた大勢の人達に対する申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。

実際にヴィラは建ち、ホテルとしてオープンすることができました。問題はパートナーの選択を誤り、そして彼を100%信頼してしまったことです。裏切った彼が悪いのは事実ですが、彼をパートナーとして選んだのが私である以上、責任は私自身にあります。

「もしかしてあの時にこうしていれば」ということが一度もなかったかというと嘘になりますが、でも、過去の出来事を変える事はできません。それまでの出来事から学ぶことは必要でも、過去の出来事を後悔することはやめて、未来に目を向けようと決心したのです。

私は生まれ変わりを信じています。生まれてくるとき、人は自分の人生を自分で決めてくると思っています。人は自分の魂だけで何も持たずにこの世に来て、死んだときも魂だけが帰って行きます。つまり、どれだけ多くの資産を築いても、どれだけ高い地位や名誉を手にしても、それらを持って帰ることはできないのです。

「人生の目的とは、自分自身の魂を成長させること」

私はそう信じています。

ホテルの権利を全て失い、さらに一億円の負債を抱えなければならないと分かった時、私は生まれて初めて、自ら命を絶つ人の気持ちがわかりました。死んでこのことから解放されるのであれば死を選ぶかもしれないと思ったのです。死にたいという感情を理解することができました。

でも、生まれ変わりを前提に考えると、例え死んだとしてもその問題から逃げることはできません。それを解決することが人生の課題の一つだとしたら、壁を乗り越えるまで何度でも同じ事が起こるからです。

問題に直面した時、それを乗り越えるためにいつも私の心の支えとなっていた言葉があります。

人生において乗り越えられない壁はない

この言葉のおかげでどれだけたくさんの壁を乗り越えてきたかわかりません。今回の壁はそれまでの人生で遭遇した壁に比べてあまりにも大きく、「本当に乗り越えられるのか?」と不安になりましたが、「乗り越えられない壁はない。必ず乗り越えられる」と何度も何度言い聞かせました。

なぜ、こんな大きな問題に遭遇してしまったんだろう?という疑問はありましたが、そうすることで「このことから何かを学び、成長する必要があるんだ」と考えて、起きたことをすべて受け入れることができたのです。

今の時点ではまだ返済を続けているので、「乗り越えた」ではなく、「越えている途中」と言った方が良いでしょう。でも、今はもう「本当に乗り越えられるのだろうか?」という不安はありません。これから先、スムーズに事が運ぶかどうかはわかりませんが、少なくとも「自分を信じ、やるべきことをやれば必ず乗り越えられる」という信念が生まれました。

もしも再び何かの壁に当たったとしても、これ程の大きな壁に当たることはないでしょうし、きっと乗り越えられると信じています。

ダディットの言葉は、いまでも私の心の中に生きています。彼との出会いは、当時の私にとってはもちろん、今の私にとっても本当に感謝すべき出来事でした。

読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。