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地方公共団体情報システム標準化法とマイナンバーとデジタル庁の仕事

※これは、「未完成な僕たちに愛を Advent Calendar 2021」の六日目の記事となります。未完成のままで、検証も不十分となりますので、ご了承ください。

 2021年5月12日に参議院本会議経過し、自治体ごとに分かれていた情報システムを、事務処理内容の共通性や行政運営の効率化の観点から標準化するための法案が可決、成立しました。

※ 総務省 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律 

行政のデジタル化に向けた主な経緯

2000/11 IT基本法制定 IT戦略本部の設置(現IT総合戦略本部)

2013/05 マイナンバー法制定

2014/01 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)設立

2016/12 官民データ活用推進基本法制定

2018/04 デジタル・ガバメント閣僚会議設置
    高度情報通信ネットワーク社会形成基本法

2019/05 デジタル手続法制定

2019/06 マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針の決定

2020/05 新型コロナウイルス感染症への対応

2020/06 マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改革WG設置

2021/09 デジタル社会形成基本法及びデジタル庁設置法施行
    高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部
               (IT総合戦略本部)」廃止
    デジタル社会推進会議設置

マイナンバー利活用と情報システム調達費用の削減と地方自治体の主体性

 地方自治体の情報システムの調達および利活用に関しては、2000年に成立したIT基本法や、e-Japan戦略により「データ立国 ニッポン」「電子自治体」政策が進められてきました。

 小泉内閣(2001年4月~2006年9月)で始まったe-Japan戦略では、「住民基本台帳ネットワークシステム」(住基ネット)が目玉でした。住基ネット上には、住民基本台帳の4情報(氏名・生年月日・性別・住所)、個人番号、住民票コードとこれらの変更年月日と変更理由を含む変更情報が記録されます。住基カードは「身分証明書としても使えます」と言われていましたが、コードの割り当てが行き届かなかったり、地方自治体のサーバーの機能が不十分だったため、再検討が求められました。また、その時の議論が、第2次安倍内閣で始まったマイナンバー制度へ引き継がれることになりました。

 地方公共団体の情報システムの標準化の主な目的は、マイナンバーカードの利活用促進と、「オープンな標準」に基づく情報システム調達の拡大と費用削減です。そのため、OSSの活用やクラウド移行、カスタマイズを減らすなどの調査・取り組みを行ってきました。

 しかしながら、地方自治体が行っている業務を整理することが難しく、サービスの多様化や法制度の大幅な変更、行政改革の流れの中で人員数は削減の方向にあるなど多くの問題があります。

 国と自治体の「情報システムの共同化・集約の推進」に関しては、「地方自治の侵害になる」となどと批判されました。ただ、番号制度対応業務について、オンラインによる即時処理の必要性が高くないことなどの理由で、番号連携サーバーと業務システムのデータのやり取りはCSV形式のファイルで行うことが採用されたりしています。これは、国と自治体が一体となってシステム構築をしていれば、別の解決策があったのではないかと思われるところです。

 そのような状況を変えるため、国が定めた基準に適合したシステムの導入を自治体に義務付けるようにしました。対象は住民基本台帳や児童手当など17業務を想定し、標準化によってシステム改修に伴う費用の軽減や、ガバメントクラウド(Gov-Cloud)との情報連携を行います。

マイナンバーに関わる情報システム

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マイナンバー制度における情報連携について - 総務省

 マイナンバー制度で各自治体に導入される「中間サーバー」は、国の機関やほかの自治体との間で住民情報を連携させるために、各自治体の各種業務システムの住民データが、副本として標準化されたフォーマットで保存されます。2013年11月10日、マイナンバー制度の「中間サーバー・プラットフォーム構築」のプロジェクト管理支援業務の一般競争入札が、いったん落札したNTTコムウエアが辞退したため、再入札でNECが2014年1月に8億8800万円で落札しました。

 個人向けのマイナンバーを生成する「番号生成システム」は、2014年1月に、NTTコミュニケーションズを代表としてNTTデータと富士通、NEC、日立製作所の5社が参加するコンソーシアムが選定され、落札金額は税込み68億9580万円でした。

 「情報提供ネットワークシステム」は、社会保障・マイナンバー制度や年金などの行政システムと接続し、情報連携を仲介する中枢を担うものとなります。2014年3月31日、設計・開発業者を、同じくNTTコミュニケーションズを代表としたコンソーシアムが落札しました。落札金額は税込み123億1200万円でした。

 「統合宛名システム」とは、自治体が各システムで独自に管理している宛名情報を集約管理するシステムで、自治体業務で重要な位置付けを持つものとされています。各自治体ごとに仕様が異なり、中間サーバーで対応する必要があります。

COVID-19以後の課題

BIT VALLEY - #04 地方行政におけるDX推進~地方公共団体のシステム標準化とガバメントクラウドの整備~ [Tf9nMlcHrDc - 1237x696 - 5m10s]

Youtube, BIT VALLEY 2021 #04 地方行政におけるDX推進~地方公共団体のシステム標準化とガバメントクラウドの整備~, 2021/10/12, https://www.youtube.com/watch?v=Tf9nMlcHrDc

 行政の給付金や助成金等支援策に係る申請が膨大になりました。オンライン手続きの不具合、国と地方のシステムの不整合が多発しました。医療の現場負担増、要因不足、資材不足、オンライン資料、陽性者報告のFAXでの申請など、抜本的な解決方法をとる必要に迫られています。マイナンバーカードによる罹災証明発行についても、今後必要になります。

 マイナンバーのシステムを管理するJーLIS(地方公共団体情報システム機構)という法人を改革し、マイナンバー制度全般の企画立案を一元化、J-LISを国と地方が共同で管理することで、業務の加速化する必要があります。

 政府が描く工程表では、22年夏までにシステムの標準規格の仕様書をつくることになっています。それを基にIT業者がシステム開発に乗り出し、同年度末にシステムを完成させます。25年度末までに全自治体がシステム導入を終えるという方針が決まっています。

 全国の1741市区町村が住民の情報を管理するシステムはバラバラなので、1000以上のシステムを対象に一元的なプロジェクト管理を行う必要があります。

「同法案や基本方針を見る限り、標準化の粒度や中央省庁と自治体の役割分担など、未決定の項目が多い。「5年後までに移行」という期限に縛られ、プロジェクトの難度の高さを考慮せず計画を進めれば、かつて同じ要因で刷新プロジェクトが頓挫した年金システムや特許庁システムの二の舞いになりかねない。」
※浅川 直輝, 「5年後の自治体システム標準化」に生煮え感、過去の失敗を繰り返すな, 日経XTECH, 2021-02-25,  https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00139/022200076/

デジタル庁の業務

 菅首相の強い意向により、1年足らずの9月1日に発足したデジタル庁は、総理大臣直轄で他の省庁に勧告権があり、行政情報システムと関連予算を一括管理する強い権限を持つ異例の官庁です。デジタル改革関連法案には45か所の誤りを残したまま国会に提出されるなど、完成度に疑問の残る法案でした。また事務次官相当のデジタル監に民間人を充て、最高技術責任者や最高製品責任者などを民間企業から登用し、職員約600名の3分の1は企業と兼務可能な非常勤を含む民間出身者という民間主導の官庁です。
 一貫してみられるのは、マイナンバー制度の普及です。これを軸に、デジタル化を進めようとしていますが、すでに設置されている地方公共団体情報システム機構(J-LIS)と足並みがそろってない、もっといえば足を引っ張られているのではないかと想像されます。
 
※ 参考 原田富弘, デジタル庁は何を狙っているか, 2021.11.08, 東京保険医協会, https://www.hokeni.org/docs/2021110800012/

国の情報システム

 国の情報システムを①デジタル庁システム、②デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システム、③各府省システムの区分に分類し直し、基本的な方針を策定し、予算を一括計上することで、統括・監理する。重要なシステムは自ら整備・運用を行う。

地方共通のデジタル基盤
 地方公共団体の情報システムの統一・標準化として、約1700の地方公共団体の様々な情報システムを対象に、基幹業務システムの標準仕様の作成や、全国規模のクラウド環境である 「ガバメントクラウド」の整備に向けた企画と総合調整を行う。

マイナンバー制度
 マイナンバー制度全般の企画立案を一元化し、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)を国と地方が共同で管理し、マイナンバーをどのように利活用するべきかを、政府内や民間企業と協議しながら取り組みを推進する。

準公共
 国民の生活に密接に影響する医療、教育、防災など、生活に密接に関連する分野において、デジタル庁と関係府省でデータ連携を効果的に行うためのシステム構築や標準化などを進める。

データ利活用
 個人、法人、不動産・地図など公的機関で登録され、法人や個人を一意に特定・識別するID制度や、情報の真正性などを保証する制度を企画・立案し、社会の基本的データを「ベースレジストリ」として整備します。一度、提出した情報を、再び提出することのないワンスオンリーな行政手続きを実現します。

サイバーセキュリティの実現
 専門家チームの設置し、システム監査をおこなう。

デジタル人材の確保
 国家公務員総合職試験にデジタル区分の創設を検討要請。
 

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