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「自分ごと」のそとに7人で|堀はぐみ|2023-24 essay 14

こんにちは。ふくしデザインゼミ・コーディネーターの大澤です。2度目となる「ふくしデザインゼミ 2023-24」、28名のゼミ生とともに、東京八王子、伊豆大島、滋賀高島、長崎諫早の4地域をフィールドに〈福祉をひらくアイディア〉を考え抜いた日々も、3月3日の公開プレゼンテーションで一区切りを迎えました。

正解のない世界を漂流する2ヶ月のプロセスのなかで、若者たちは何を感じ、何を思ったのか。ゼミ生一人ひとりが捉えたふくしデザインゼミとは?2ヶ月のプログラムを終えたゼミ生のエッセイ第3弾。essay 14は、小松ゼミのはぐみんの言葉です。


福祉をもっと知りたい!

私はもともと、地域コミュニティの希薄化や孤独・孤立の問題に興味があった。大学2年生の夏にボランティアをしたコミュニティカフェ。スタッフさんや障害当事者のお客さんから話を聞くなかで、日本では障害を持つ方の権利が守られていない現状があることを知った。例えば日本は障害者権利条約に批准しているのに、精神障害者の強制入院に対して勧告がでるくらいその条約を守れていないことなど、どれも重大な話なのに私が知らないことばかりだった。人権には関心があったし意識が高いほうだと思っていたけど、私は何も知らなかった。

でも悲観的になっただけではなく、そういう課題があるからこそ、「福祉っておもしろいかも?」「関わりたい!」「私にも関われる可能性がある気がする」とわくわくも感じていた。

そんなときにふくしデザインゼミと出会った。「地域」「福祉」というキーワード、去年の様子、「おもしろそう!!!」と感じる要素しかなくて、迷わず応募したのだった。

バラバラな7人、わくわくな私

わくわくが最高潮で参加したキックオフキャンプ。どんなことが学べるのかな、どんな人がいるのかな、と楽しみに会場へ向かった。

1日目はとにかく、講師の話を聞いて、考えて、話して…。生産性・効率性やゴールへの最短距離を求めがちないまの時代のこと、一方で、目的を定めないことから生まれる可能性についてなど、本当におもしろい話ばかり!

小松ゼミのテーマ「『ただ、いる』を浮遊しながら考える」について話す小松さん

1日目の最後には個別ゼミで集まって話をした。私の所属は小松ゼミ。同じゼミのメンバーはのちのち、「あのときは気まずい空気感が流れていた…」と話していた。メンバー7人、みんなが自分の話をして、これまで生きてきた背景や思いがバラバラすぎて、「これからこのメンバーでうまくやっていけるか…」と不安だったみたい。

私は、わくわくしすぎていたのか、鈍感なのか(笑)、気まずさを感じることもなくメンバーの話を聞いて、「この人たちと2か月間どんなことができるんだろう」と想像をふくらませていた。

そんな、思いや背景を強く持つメンバーが集まった小松ゼミの方向性は、具体的なゴールやアウトプットを考えるのではなく、「武蔵野会の現場を通して自分のテーマを探求する」こと。7通りの自分ごとを通して、「ふくしをひらく」について考えていく。

気まずかった(らしい)キックオフキャンプ1日目の個別ゼミ

「自分ごと」のそとにあるものに目を向ける

フィールドワーク1日目は、社会福祉法人武蔵野会が運営する八王子福祉作業所に滞在した。「自分ごとを通して」という方向性を頭に置いていたからか、「自分がどう思ったか」という視点をかなり大事にしていたし、自分のなかではなんとなく、納得する答えを得られたような感覚になっていた。

八王子福祉作業所で、なにかしてもいい、なにもしなくてもいい、「ただ、いる」滞在

そんななか、フィールドワーク2日目の最後の最後の話し合いの時、ゼミ生のまゆごんが問いかけてくれた。

「たった1日の滞在で、福祉のことや作業所のことを、わかったつもりになっていないか?」

私はハッとさせられた。短い滞在だけで、小松ゼミのテーマの「ただ、いる」ということについて、その人がその人らしく、操作なくいられるということ(福祉やケアの究極の目標のようなもの?)について、わかった気になっていた。

「自分ごと」を考えすぎて、「利用者さんや職員さんはなにを考えているだろうか、どう思っているだろうか」という視点が、あまりにも足りていなかったのだと思う。

「沢山のことを考えた2日間だったなあ」と充実した気持ちになっていたから、最後の最後にまゆごんに突っこまれて、「こんなに考えても、まだ足りない視点があるの…」と泣きたくなる感じもした。それと同時に、ふくしデザインゼミに参加しなければたどり着けなかった場所にいるような、なんだか違う人間になれそうな、そんな感じもしていた。

異なる背景をもつメンバーだからこそ、大事な視点に気づかせてくれる

まだ知らない「福祉」をさがしに

フィールドワーク後は、3月の「福祉をひらくアイディア」を発表するプレゼンテーションの準備。発表形式が指定されていないなかで、小松ゼミ7人の思いを一つのかたちにまとめるのはすごく難しかった。

最終的に私たちが3月3日のプレゼンで発表したアイディアは「八福ひょっこりゼミ」。

私たちは、相手も自分も尊重しながら、7人分のもやもやを大事にしながら、対話を重ねてきた。それぞれが持ち寄った「自分ごと」からはじまり、福祉施設を浮遊することで、「自分ごと」のそとにある、まだ知らない福祉にも目をむけるようになった。これからも、さまざまな福祉施設に「ひょっこり」訪問し、対話を継続していきたい。それが「八福ひょっこりゼミ」だ。

プレゼンのなかで8分間の対話をして、それを観客に聞いてもらった。
小松ゼミのプロセスを表現できたと思うし、私たちらしい発表だったと思う。

今も、あのプレゼンでよかったのか、よくわからない部分はあるけれど、とにかく、やり切った2か月だった!

私個人としては、今後も福祉に関わるボランティアや勉強を続けたいと思う。自分の興味のあること、やりたいことに正直でいたい。
ゼミで学びあった視点を持って、いろいろな活動することによって、また、新しくみえてくるものもあるかもしれないと思うと、わくわくする。

福祉には、私の知らないことが、みえていないものが、まだまだたくさんあって、打ちのめされることも傷つくこともあるかもしれない、でもやれるところまではやってみたい。

それに、一緒に2か月間がんばってきた仲間たちがいることは心強い。みんな何かしらの背景があってこのゼミにたどりついた人たちだから、ちょっとどころではなく個性的な人たち。ゼミを終えても、それぞれがこの先経験することを話せる場があるのはうれしい。

「何をしたの?」ときかれると、よくわからない2か月だったけれど、とにかくたくさん考えた時間だった。ここで学んだ視点や築いた関係性を、この先も大切にしていきたいと思う。

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|このエッセイを書いたのは|

堀 はぐみ(ほり はぐみ)
国際基督教大学教養学部2年

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