「作るを作る」ということ

友達と雑談していて「文系卒エンジニアはモノを作る以上のことができない」という話を聞いた.つまり「何かを作る」はできるが「”何かを作る”を作る」ができないという意味である.考えてみると工学とは本来そういう性質を持った学問であり,工学部を出てない人がそれをできないのは普通である.というか工学部を出ててもできない人が大半であるような気がした.

例えば「Webサイト作る」はできるけど「アクセス履歴の計測とその分析に則って最適なWebサイトを作る」はできない.それはWebサイトを作る行為を作ることだから.

または「機械学習のパラメータチューニングを行う」はできるけど「パラメータチューニングの自動化システム」はできない。それはパラメータチューニングの行為を作ることだから.

あるいは「アルミ鋳造で部品を製造する」はできるけど「アルミ鋳造の厚みと不良率の関係から最も利益率の高い厚みを計算する」はできない.それはアルミ鋳造の行為を作ることだから.

よく考えると工学部の研究というのはハードウェアからソフトウェアまで一貫して「作るを作る」に言い換えることができるのかもしれない.たまにそこを間違えて「とりあえず作っちゃいました」みたいな結果を見せると「やっただけの研究」と指摘される.これわりとみんな経験あるのではないだろうか.再現は研究の出発点としては悪くないとは思うけど,それはまだ研究ではないという意味である.

そういう意味で,日系メーカーが新卒に現場研修をさせるのは合理的なのかもしれない.大卒は現場のやる仕事を抽象化して再構築することを求められるので,現場を理解して現場と同じ目線を持つ必要がある.これはデザイン思考みたいなもので,この視点を欠くと現場が受け入れられないゴミができる.「作るを作る」をやるにはお勉強だけでは足りない.

「作るを作る」という行為は分野に関係なく必要とされるので,大学の専攻は関係ない.大体みんな卒業したら違う分野の仕事やるでしょ,俺もそうだし,今の上司もメンターも大学時代の専門は今と全く別である.つまり「作るを作る」を叩き込まれると分野関係なく仕事はある.ひとつメタな作業だから適用範囲が広い.

話は戻るが,文系卒エンジニアはこれができないという話である.私の周りには文系卒エンジニアはいないのでよくわからないが,例えばHTMLとCSSをポチポチ触って勘でそれっぽいWebページ作ってるWEBエンジニアとかがそれだろうか.しかしまあ,開発工程にはそういう人員も必要なのでそれでいいと思う.現に仕事はあるわけだし(私はしばしばそういう連中に苛立たされているが)

ただし,文系卒エンジニアが「作るを作る」側に回れるかは、よくわからない.学部4年と修士2年の歳月をかけて取り組んだ人でもできてない人が大半だから,難しいのかもね.実際「作るを作る」をやろうとするとすごい大変で,賢い人がやっても失敗するものだし.


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