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闇金ウシジマくん

私が大好きな漫画の一つに「闇金ウシジマくん」がある。

今や実写化もされて、ドラマや映画にもなっているこの漫画。まだ「闇金ウシジマくん」を知らないという方のためにもこの漫画の魅力を少し紹介したいと思う。

闇金と聞くと、違法な利息や度を越えた過激な取り立てなど怖いイメージしか浮かばない。しかし、タイトルからは闇金だけど心優しい「ウシジマくん」という取り立て屋さんを描いたハッピーな漫画を想像する方もいるだろう。

結果からいうと、そんなことは全くない。
そうであってほしかったが、そんなことは全くない。

ウシジマくんの暴力性、残虐性、は闇金界の中でもトップクラスを誇っている。
時には他の闇金がしっぽを巻いて逃げ出すような恐ろしいヤクザとも敵対するし、小遣い稼ぎに、同業者まで餌食にするという清々しいほどの悪である。

借金の利息は10日で一割の“トイチ”である。1年で一割ではなく10日で1割という暴利。
しかもこれは優良な顧客に対しての利息で、信用のない顧客にはさらに高い金利を要求する。
相手を見て、利息を自由に変えるのもウシジマくんの怖いところである。

そんな暴利は返せるわけがない。
借りた人間の借金はほぼ確実に雪ダルマ式に増加し、返済できずにパンクする。そこから容赦ないウシジマくんの取り立ての日々が始まるのだ。

そんなウシジマくんにお金を借りに来るのは、他の消費者金融ではもう貸付を拒否されるようなどうしようもない人間ばかり。

そんな社会からみたらどうしようもない人間たちにも、人生があり、変わりたい、成功したいという気持ちがあるのだ。でも、やっぱり変われずに怠惰な日々をまた繰り返してしまう。そんな人間なら誰しもが抱えたことのあるだろう心の葛藤をリアルに描き上げているのもこの漫画の魅力である。

もしかしたら神様が人生でお金よりも大切なことに気付かせるためにその人たちをウシジマくんのもとに導いてるのかもしれない。

人間は落ちるところまで落ちて初めて変わることができるのだということをこの漫画は教えてくれる。
ウシジマくんからの地獄の取り立ての日々で自分の人生を見つめ直すことができた人間が少なからずいるのだ。

そんなことはお構いなしに、ウシジマくんの容赦ない取り立ての日々は今日も続くのである。


しかし、なぜそんな恐ろしい主人公の漫画のタイトルが「ウシジマ“くん”」なのだろうか。

作品を読んでいても登場人物でウシジマくんを実際に「ウシジマくん」と、くん付けで呼ぶような人は、小学校からの同級生であり職業探偵の“戌亥”という人物一人だけである。

残虐極まりないウシジマを“くん”付けで呼ぶことで、脳裏から離れないウシジマの恐怖のイメージを少しでも和らげようという試みも感じられないことはない。

しかし、実際に漫画を読み終えると、気づけば親しみをこめて「ウシジマくん」と呼んでしまっている。
残虐の中に垣間見えるウシジマくんの魅力に読者はみんな魅了されてしまう。それこそがタイトルに隠されたこの漫画の最大の魅力でもあると私は思うのだ。

しかし、例えどんなにウシジマくんに魅了されたとしても、ウシジマくんからだけはお金を借りてはいけない。借りたら最後、その先には地獄のような恐ろしい取り立ての日々が待っているのだ。

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