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確率統計を数学で愉しむ

高校では2022年度からいわゆる「新課程」が始まりました。今回も、ベクトルが「数学C」に移動されるなど大きな変化がありましたが、その中でも数学Bの「統計的な推測」(旧課程の選択単元「確率分布と統計的な推測」が対応)が実質必修化されたことは大きな衝撃でした。私も仕事の関係上、2025年度の大学入試を見据えて「統計学」の学習を始めました。しかし最初はなかなかやる気が起きませんでした。なぜなら「統計学に数学と同じようなモチベーションを持てない」という感覚だったからです。

そこで今回は「数学好きの高校生(もしくは大学生や社会人)が確率統計を愉しめる」ようなトピックを紹介したいと思います。もちろん、数学好きでなくても「こんな視点もあるんだ」と思っていただければ幸いです。


「数列」で愉しむ

(離散型)確率変数$${X}$$について

$$
\displaystyle E(X)=\sum_{i=1}^{n}X_{i}P\left( X=X_{i}\right)
$$

$$
\displaystyle V(X)=\sum_{i=1}^{n}\left( X_{i}-E(X)\right)^{2} P\left( X=X_{i}\right)
$$

これはいわゆる「期待値」と「分散」の定義式です。いずれも数列の和を用いて表現しています。そのため、以下の等式の証明は実質数列の練習問題として処理ができます。

$$
E(X+Y)=E(X)+E(Y)
$$

さらに$${X}$$と$${Y}$$が独立な確率変数、
つまり$${P(X=X_{i},Y=Y_{j})=P(X=X_{i})P(Y=Y_{j})}$$が常に成り立つとき

$$
V(X+Y)=V(X)+V(Y)
$$

こういった確率変数の等式の証明を自力でおこなってみると、教科書では無機質に書かれている部分も愛着を持って見られるようになりますね。

「極限」で愉しむ

教科書ではさりげなく書かれるであろう事実

「ポアソン分布は二項分布で近似される」(少数の法則)

を証明するには数学Ⅲで本格的に学ぶ極限の知識が必須になります。
(確率統計が数学Bまでの話となると必然的に数学Ⅲの内容を前面に出せなくなり、証明がきちんと書かれないことが予想されます。)

むしろ極限さえ知っていれば、ポアソン分布や二項分布を知らなくても十分証明可能です。以下に主張を書きます。

$$
\displaystyle \lim_{n\to\infty} \frac{n!}{k!(n-k)!} \left(\frac{c}{n} \right)^{k}\left( 1-\frac{c}{n} \right)^{n-k}=\frac{e^{-c}c^{k}}{k!}
$$

統計では$${n}$$を限りなく大きくすれば~~に近似できるという話題が出てきます。このような場面では極限が大いに役立ちます。

「積分」で愉しむ

「数列」(離散)と「極限」と言えば連想されるのは「積分」ですね。
高校で学ぶ確率分布で連続的なものとして「正規分布」が登場します。

確率密度関数$${\displaystyle \rho (x)=\frac{1}{2\pi v} e^{-\frac{(x-m)^{2}}{2v}}}$$で与えられる分布を正規分布$${N(m,v)}$$と書きます。このとき$${N(0,1)}$$の期待値は以下の式で計算できます。

$$
\displaystyle E\left(X\right)=\int_{-\infty}^{\infty}x\cdot\frac{1}{2\pi } e^{-\frac{x^{2}}{2}}dx
$$

積分区間に$${\infty}$$が入っており不穏ですが、被積分関数は高校で学ぶ数学の範疇ですね。置換積分により容易に積分が可能です。

(応用編)「大学で学ぶ数学」で愉しむ

個人的に「今ココ!」な愉しみ方です。
「積分」で愉しむにしても、実は大学レベルの積分が登場しますし、正規分布も多次元ならどうなるだろう?といった広がりもあります。
また「測度論」といった本気で確率論を勉強するなら必須の理論も関連してきます。
実は確率統計を読み解けば読み解くほど数学が出てくると実感しています。
色々な話が湧き出てきそうですが、本来の目的から脱線するので今回はこの辺にしておきましょう。

まとめ

今回はふわっと、数学好き目線の確率統計の楽しみ方を紹介しました。多くの人の学びの一助となれば幸いです。
主にはてなブログで高校で学ぶ数学から代数トポロジーといった専門的な数学まで幅広い記事を投稿していますのでこちらも是非ご覧ください。

それでは最後までお読みいただきありがとうございました!

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