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「大学での数学の勉強例」という名の自己紹介


 今更ながら自己紹介(というより過去紹介)をします。数日前「やわらかくない?トポロジー」というnoteを書いたように、私の専門は幾何学の中の代数的トポロジーと呼ばれる分野でした。

 実は昨日、メインサイトの方で「代数的トポロジーのロードマップという名の自己紹介」という記事を投稿しています。「また自己紹介するのか」と思われるかもしれませんが、メインサイトの方は「数学のどのような分野を勉強したか」という「数学を知っている人向け」でした(数式もありませんし、雰囲気だけなら数学をそれほど知らなくても読めます)のでnoteでは「大学(院)の数学科でどのような過ごし方をしたか」に特化して書こうと思います。

 メインサイトの方の記事は以下になりますのでぜひこちらも合わせてごらんください。

下積み時代の大学1年生~2年生

 理学部に入学した大学入学直後はスポーツで言えば基礎体力作りにあたる下積み時代です。微分積分学や線型代数をはじめとする基本的な数学の分野をひたすら勉強していました。

 この頃はとにかく新しいことを吸収するのが楽しかったこと、大学に必修科目もなく、履修登録が"なんでもあり"だったこと(講義の二重登録が黙認されていたり、テストに合格するだけで単位が出たり)が相まって上級生の授業も履修しまくりました。

 幸いなことに、どの講義でも打ちひしがれることなく楽しく受けられましたが、2年生のときに名前につられて4年生配当の「整数論」という講義を受けてみたときはあまりのレベルの高さ(前提知識の多さ)に圧倒されました。

ひたすらゼミ時代の大学3年生~4年生

 大学2年生3年生から「系登録」により本格的に「数学科」となりました。大学2年生までにある程度単位をそろえてしまっていた(ただ、理学以外の一般教養の単位は全然そろえていませんでした)ので、必要な講義の数がグッと減り、時間的な余裕ができてきました。
 
 この頃の勉強の軸は「ゼミ(セミナー)」でした。主に輪講と呼ばれる形式で、一冊の数学書に対し参加者の学生が交代で担当分を黒板を使って発表(授業)するというものです。

 ゼミには大きく分けて2種類あります。学生が講義と関係なく、自主的に集まって開催する、いわゆる自主ゼミと、講義として教授など先生の監督のもとおこなうゼミです。いずれにしても少人数のことが多いです。私が通っていた大学では1学年で60人ほどの数学科の学生がいました。しかし「幾何学の演義(学生が問題を解いて発表する形式)で一定以上の成績を獲得すれば後期の幾何学のゼミ形式の講義に参加する権利を得る」などのボーダーがあり、運よく権利を得たのですが、学生は4人でした。

 多くの数学科の学生は両方の経験があると思います。また掛け持ちもあり「○○の自主ゼミでは…」みたいな会話もよくなされます。私自身、複数のゼミに参加しました。

 ゼミで発表することは素晴らしい経験で「学びの量が尋常ではない」と当時から感じていました。発表日までにいろいろな文献を読み漁り、行間を読み取り、必死に証明を考えました。準備万端で臨んだつもりの発表も、少しの論理の破綻で失敗したこともありますが、そういったときに建設的な議論が生まれて数学の良さを実感することもありました。

 大学4年生のときはいわゆる卒論の代わりに教授とのゼミに臨みました。私が通っていた大学の唯一の必修科目でした。本来は教授に2~4人ほどの学生がついて輪講を行うらしいのですが、私は運よく学生が1人だけで教授とのマンツーマンゼミでした。自主ゼミも複数こなしながら、毎週3時間超の発表なので常に準備に追われていました。自分よりも内容をはるかに深く広く知っている教授の前で発表するのはプレッシャーもすさまじかったですが、だからこそ得られたものも大きかったです。

 そういえば、教授が何気なく言っていた一言「僕は数学が苦手だから」は衝撃でした。世界的な賞をいくつも受賞し、世界のトップを走る人でさえ驕らずに謙虚に数学と向き合っていることを思い知らされました。

「研究」を体験した大学院生時代

 大学院修士課程から「研究」が始まりました。ただ博士課程以降の単独で課題を設定して解決までのプロセスも自分で構築するという本当の研究ではなく、先生に手取り足取り研究テーマの選定や具体的な勉強の流れまで導いてもらいながらのものでしたので疑似的な研究と言っても良いかもしれません。

 大学院も修了のために必要な単位というものはありますが、学部生のときに取っていた講義をもう一度取る(テストだけ受ける)、時折専門分野に関連した集中講義を受けるみたいな過ごし方で、学生生活のほとんどを毎週のゼミの準備に費やしていました。

 この頃も基本は教授とのマンツーマンのセミナーで、週に1回3時間ほどのものでした。修士1年生後半のテーマ設定後はとにかく論文を読みました。今思うと「無限に論文が読める環境」そして「ほしいだけ本が借りられる環境」が"最強"すぎました。そして修士2年生前半で修士論文の骨子を決め、秋に書き上げました。こちらも「手取り足取り」だったのですが、そのおかげで新しい結果を出せて修士論文としてしっかり形に残せました。

まとめ

 大学入学から大学院修士課程修了までの数学の勉強風景を振り返ってみました。最近は「学生のときにもっと勉強できたのでは?」と思っていたのですが、こうやって振り返ってみるとそれなりに勉強していたんだなあと実感します。(全然満足はしていません。)
 あくまで一例ですが「数学科の人ってこういう勉強をしているんだ」という参考になっていただければ幸いです。少し長くなってしまいましたが今回は以上です。よろしければメインサイトの方もご覧いただければ幸いです。

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

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