01_TOP1都城市民会館AR

建築の3次元デジタルアーカイブの未来はどこへ?─『旧都城市民会館』3DDAトークセッションレポート

01_TOP2_撮影:大隣昭作

菊竹建築設計事務所によって設計され,1966年に竣工した都城市民会館.
変わらない部分と社会の変化や技術の発展によって変わっていく設備などの部分を分け,屋根は部品化された部材を用いて,交換可能なものとして設計されたメタボリズムの思想が取り込まれた建築である.
鉄筋コンクリートの基壇の上に鉄骨屋根架構が載る特徴的な形態を持ち,まるで昆虫のような独特な姿が印象的だ.


旧都城市民会館の「残る部分」

竣工してすぐに掲載された建築専門誌『新建築』の解説で,菊竹氏は「残る部分」について語っている.
建築は「残った部分」こそが「かつての空間を如実に物語る場合」があるという.

建築のもっとも根本的な問題として,共通に人道的空間をどう獲得し確保するかということがある.それは部屋のレベルをこえた建築総体としての問題である.あまり適切でないが〈焼跡の空間〉といういい方をすれば,玉石とか暖炉とかが,まざまざと空間を再現してくれる”残る部分”としての強さをもって残っている場面を見ることがある.これはひとつの示唆を与えてくれる.とくに残った部分が,かつての空間を如実に物語る場合であって,”残る部分”が的確に空間の基本的構造を支えるという認識と,耐火的な部分だけが残ったという認識である.この認識には差異があろう.しかしこれは,新らしい問題として,どういう部分を残し,残すためにはどうすればいいかという問題の手掛かりを与えるという点で,また建築の主要な空間をどう処理するかということを考えさせてくれる上で,新らしい視覚を提供してくれる.

都城市民会館ホールの残るべき部分はどこか.それは残すべく計画されねばならない.”残る部分”こそ建築のもっとも基本的空間でなければならないからである.私はそれをすべてコンクリートでつくることにした.台座ともいうべき下部構造の主要部分が,鉄筋コンクリートで構築してあるのは,この意味である.”残る部分”に対して,”変る部分”がある.時代とともに,技術の進歩,社会の変化によって利用のされかたの違いができて,新らしいものに交換され,捕捉され,修正が予測される.

(『新建築』1966年7月号)

しかしながら物理存在としての「旧都城市民会館」は2019年夏に解体されることが決定した(2019年9月現在,解体されている途中だ).
それでは,「旧都城市民会館」という建築が持っていた空間は未来永劫失われてしまうのだろうか.いや,そうではない.

菊竹氏が触れている「変る部分」について考えてみよう.
ここで菊竹氏は「技術の進歩,社会の変化によって利用のされかたの違いができて,新らしいものに交換され,捕捉され,修正が予測される」とし,コンサートホールの設備などは変わっていくものだとしている.つまり,建築は避けがたく(少なくとも一部は)変化していくものだということが明言されている.
そこから考えてみると50年以上の時間は「旧都城市民会館」という建築を大きく変化させた.それは菊竹氏が考えていた「残る部分としての鉄筋コンクリート」を飲み込むほどに.
つまるところ,この建築の解体が決定するのはそうした「変る部分」の帰結だと言えるのかもしれない.しかし一方で,50年以上の時間がもたらした変化は「旧都城市民会館」自体が「残るべき部分」ともされるような存在となったと考えられるのではないだろうか.

前置きが長くなってしまった.
今回の記事で触れるプロジェクトや技術は,「新しい建築の残る部分のあり方」を提示しているのかもしれない.
それが『旧都城市民会館』3次元デジタルアーカイブプロジェクトだ.


『旧都城市民会館』を3次元スキャンする

『旧都城市民会館』3次元デジタルアーカイブは建築・都市のデジタル化を推進するgluonと測量の分野で蓄積を持つクモノスコーポレーションによるプロジェクトである.
クラウドファンディングにより活動のための費用が募集され,見事達成.

272人,1,732,500円の支援総額が集まり,「旧都城市民会館」の解体1週間前にスキャンが行われた.スキャンして得たデータは点群データに変換して,支援者に配布されるほか,さまざまな活用が検討される.
この度,8/28にシンポジウムが行われ,中間報告がなされた.
本記事ではその模様をレポートする.


考えうる限り,最悪のコンディションで

登壇者はgluonの豊田啓介氏(以下,豊田),金田充弘氏(以下,金田),クモノスコーポレーションの中庭和秀氏(以下,中庭)
そして,スキャン・解析協力をしたHoloLabの藤原龍氏(以下,藤原,CGデザイナーの長坂匡幸氏(以下,長坂,福岡大学の大隣昭作氏(以下,大隣)が同席した.

DSC00048のコピー

左から金田氏,豊田氏,中庭氏

まず計測当日の様子が話された.
期せずとして,予定していた計測日前後の九州は災害級の大雨となった.先に現地入りしたgluonの堀川淳一郎氏は土砂崩れにより分断され,まったく動けなくなるなどのトラブルがあり,考えうる限り最悪のコンディションでの計測となったという.

豊田:屋根からの雨漏りはひどく,iPhoneから警報が鳴り響く中での計測となりました.

02_計測の様子A

中庭:今回使用した計測機は計1,000万円くらいになる機材.防水じゃないので,壊れてしまうのではないかとドキドキしました(笑)

02_計測の様子B

金田:計測では建築全体をスキャンするため,代表的なホールだけでなく,裏側の部分まで撮影する必要があります.キャットウォークは昔のものなので木でつくられており,明らかに腐っている.いつ踏み抜いてしまうかヒヤヒヤしながらの計測でした.

豊田:
とはいえ,計測中は金田さんの楽しそうな顔が印象的でしたね(笑)

金田:
普段は見れない裏側の部分まで見ることができるので,菊竹さんがここで何を考えたのかを読み解いていくような貴重な経験ができました.


フォトグラメトリについて

今回の計測では点群生成用のレーザースキャンによる計測,フォトグラメトリ生成用に一眼カメラ+ドローンによる撮影が行われた.
レーザースキャンによる計測では,すでにgluonの成果として#デジタル芸大がある.

一方で,フォトグラメトリは今回が初の試みとなる.
そのため,フォトグラメトリに詳しい藤原氏,長坂氏,大隣氏が計測メンバーに入ることとなった.

豊田:藝大の点群のスキャンデータを公開したところ,藤原さんたちによって「点描芸大」が生まれるなど,思いも寄らないクリエイティビティの連鎖が起きました.その縁で今回,フォトグラメトリの部分で協力していただくことになりました.


藤原: フォトグラメトリは写真から3Dモデルを立ち上げる技術です.
中でも,私が取り組んでいるのは広域フォトグラメトリ.これは非常に手間がかかるもので,取り組んでいる人があまり見当たらない分野でした.
成果として公開した「銭洗弁天VR」は,Twitter上で12,000のRT,各種メディアにも取り上げられ,海外の人からもリアクションがありました.
非常に反響が多くて驚きました.
「銭洗弁天VR」は3,600枚の写真から構成され,処理に1週間丸々かかりました.これを聞いたら広域フォトグラメトリは非常に手間がかかりそうだなということが分かりますよね.
上記記事では,藤原氏によってフォトグラメトリのプロセスが解説されている


長坂:私は品川の開発で取り壊される予定だった「高輪橋架道橋」をフォトグラメトリで3Dモデルとして構築した「高輪橋架道橋フォトグラメトリ / Takanawa Underpass」を公開しています.

ここは頭がぶつかるような非常に天井が低いトンネルで,この場所での体験は単なる写真や動画じゃ伝わりません.そこで,実際に中に入って体験できるようにしようと思い,フォトグラメトリモデルを制作しました.
大変だったのは,トンネル内が非常に暗いことでした.暗いところは特徴点が把握しにくいため,フォトグラメトリが上手くいきません.なので,写真自体を明るくして対応してます.また,ここでは音が重要なため,音の取り方もトンネルの位置ごとに変えています.
豊田:VRで体験しましたが,空間だけではなく,音があるため,非常に臨場感を感じるものになっていましたね.


手持ちカメラだけでは屋根部分などの撮影ができない.
そのため今回は,普段はドローンによる写真測量を行う福岡大学の大隣昭作氏も参加した.

大隣:非常に天気が悪かったため,行ってもドローンは飛ばせないのではないかと思っていましたが,雨のやんだ少しの合間を狙って撮影を行いました.
普段は自動でドローンを飛ばすアプリで計画をつくった上で撮影を行うのですが,今回は建物を記録するということで,より詳しく撮ろうと思っていました.しかし,藤原さんや長坂さんが非常に細かく撮っていたので,これはとても時間が足りないと思い,まずは全体のイメージをつかめる写真を撮って,別の日に細かい写真を撮影することにしました.

藤原
:当日は天気が悪く,暗い上に,屋根からの雨漏りもひどい.水たまりもあるので,そこが反射してうまく撮影できるか心配でした.

今回のプロジェクトでは「現在を切り取ることができるが寸法的な精度は低いフォトグラメトリ」と「高精度で取得するが,空間の雰囲気は切り取ることができない点群」を組み合わせて,それぞれの苦手なところを補完しています.つまり,見た目はフォトグラメトリ,精度は点群.

一眼カメラとドローンの撮影で合わせて10,000枚の写真を撮影しました.これをソフトに入れて解析の上,フォトグラメトリを行います.
ソフトの選択肢としてはReality Capture3DF Zephyr.今回はRelity Captureを使用しています.
こちらの方がメッシュの精度がよりよく,建物のエッジがぱきっと出るのです.


金田:長谷川逸子さんがデザインした椅子も撮影しています.

画像6

シンポジウム会場には長谷川逸子氏が設計したとされる旧都城市民会館の椅子の現物が持ち込まれた.
こちらの椅子は360°観察できるようARで公開している.
大隣:普段はmeta shapePix4Dというソフトを使っていますが,今回初めてReality Captureを使ってみたら,筋交いの部分まできれいに処理されていました.線とか面をきっちり出すのに向いていると感じました.処理や制作に関してはxRArchiのdiscord内にチャンネルをつくり,ディスカッションしながらブラッシュアップしていっています.
情報をオープンにすることで精度が高まっていくのは現代的だなと思いました.

03_筋交い_画像提供:大隣昭作

フォトグラメトリによって生成された筋交い部分


データで現れる旧都城市民会館

3次元計測は,数々の測量を行い,豊富な実績を持つクモノスコーポレーション(以下,クモノス)が担当した.本シンポジウムでは,その計測の結果が公開された.

クモノス:今回は「FARO® LASER SCANNER FOCUS」という機材を使用しています.これは無色透明のレーザーの反射距離とRGBの情報でスキャニングし,点群を生成するものです.レーザースキャナ自体の距離精度は1mm.
今回の計測では内部と外部合わせて100GBほどのデータ量になりました.

スクリーンショット 1

公開されたデータ
クモノス:大隣さんがドローンで撮影されたデータと重ね合わせて見ると,おおよそ5cm以内の誤差に収まりました.今回,公開するデータはRealworksというソフトで処理を行っています.公開するデータは,いくつかのバージョンを用意する予定です.


藤原
:一眼カメラからフォトグラメトリを生成すると誤差がかなり出るため,特徴点を手作業で指示していく必要があります.そこに加え,レーザースキャンで距離を正確に出し,フォトグラメトリをパッチで繋げていくとかなりうまくいきそうです.また,点群をモデリング化して貼り合わせることもできるので,データの生成手法の選択肢はかなり増えます.


金田:屋根裏から地下ピットまですべて三次元化されているので,断面図のように見ることも可能です.
今回,計測に行って分かったのですが,「旧都城市民会館」の緞帳は織り上げ式ではなく,1枚まっすぐでつくられています.断面図を見るとフライタワーより緞帳の納まる部分が高く,それを覆うような形で躯体ができていることが分かります.

スクリーンショット 5

スクリーンショット 3

点群として生成されたデータはさまざまな角度から見ることができる
金田:また,近代的な劇場だと空調は床吹が一般的ですが,当時はまだそのようなものはありません.
ここの設備は代々木競技場を担当した井上宇市氏が設計しており,代々木競技場と同じくノズル式の巨大なバズーカが出ているのが分かります.

スクリーンショット 4

豊田:コンサートホールは音響などを考慮しなければならないため,入れ子のような構成となっているのが一般的です.しかし,「旧都城市民会館」はひとつのシェルだけで囲われています.本当なら外壁がないとおかしい.
空調ダクトもないのに,50年以上も造形的に芸術的な作品として保たれたことは驚くべきことで,設計者の凄みのようなものを感じます.

金田:
また,この建築は時代的には大量生産時代よりも少し前で,オリジナルのディテールが豊富です.
ここにしかないディテールがたくさんあり,それをデータとして保存できたのはよかったです.

04_(ディテール)2

04_(ディテール)1

建物内のディテールをフォトグラメトリによって構築
豊田:その部分で言えばフォトグラメトリは質感とかが如実に表現されるので,うってつけでしたね.雨樋の苔むした感じもフォトグラメトリだと表現できています.

04_(苔むしたディテール)

金田:今回,「旧都城市民会館」の3次元デジタルアーカイブに取り組もうと思ったのは,既に取り壊されてしまった築地市場を撮らなかったことを後悔していたことからでした.それを聞いたgluonの瀬賀さんが都城市に掛け合ってくれて,今回のプロジェクトが始まりました.
このプロジェクトではまず残すことが重要だと考えていますが,さらには,そのデータをいかに活用していくか,それを考えていくことが非常に重要なことだと考えています.


計測データをいかに活用するか─クモノスコーポレーションの事例から

今回取得した3次元データをどう活用するか.
まずは,長年3次元測量に関わるクモノスコーポレーションがその活用事例をプレゼンした.

バーチャル空間のアクティビティ

中庭:ヤンマースタジアムのプロジェクトでは,取得したデータを活用して,設置する看板のシミュレーションなどを行えるようにしました.また,長居公園のプロジェクトでは公園自体を点群で取得し,新しいレストランの配置計画に活用しています.

金田:
データがあるだけでフィジカルでなくてもさまざまな使い方を想像できますね.たとえば,データを整えていけば,バーチャル空間上でイベントもできます.

豊田:
VR空間の中でのイベント会場として貸し出すことができるようになるかもしれません.そうすれば,バーチャル空間上で得た利益を本体維持のための費用に使えることもできます.


データを比較する

中庭:改修のために2007年に阪神甲子園球場を点群データとして残しました.
2019年現在の阪神甲子園球場とどこが変わったか,重ね合わせて比較することができます.高精度の点群なので,たとえば,グラウンドとブルペンではマウンドの高さが違うなど,細かいデータの比較も行えることができます.
金田:データとして比較できるというのは面白いですね.

中庭:
同様の事例としては,改修前の2002年の東京駅もデータとして保存しています.

豊田:
空襲で焼け仮のものとして再建された上屋が,仮の姿のままデータで残されているのは非常に重要なことですね.


設計に応用する

中庭:大阪万博公園の「太陽の塔」の改修では,3次元スキャンデータを設計施工に活用しています.
ここでは120カ所から計測したデータをモデリング化して図面と突き合わせ,耐震工事のための正確な図面を割り出しています.また,中央の「生命の樹」にはそもそも図面が存在せず,さらには貴重な作品のため触れることができないので,足場を組み立てるにあたり正確な3次元データが必要となりました.
結果として工事は1年4カ月で完了し,3次元スキャンデータが非常に役立ちました.


では,旧都城市民会館のデータをどうするか?

クモノスコーポレーションのプレゼンを受け,最後に今回のプロジェクトで取得した3次元データをどのように活用するか話し合われた.

金田:建築家や建築学生が活用するだけでなく,都城市に還元できる形で活用していきたいと思っています.
現状ではデータをオープンにすることはセキュリティの問題でハードルが高く,公開される機運がまったくありません.なので,公共建築のデータは公開すると良いことあるよねという成功体験をつくっていくことで,もっと事例を増やしていきたいと考えています.
今回,都城市からは基本的にデータはオープンにしていいと言われているので,まずは市民も見ることができる形にしていきたいと思っています.
しかし,今回の100GBの容量のデータをシェアするのは難しい.簡易に共有できるプラットフォームは何がいいのか,悩みものですね.
また,こうしたデータのバリエーションが増えていけば,どんな発信ができるのか考えることも重要になってくると思います.
豊田:最近,出版業界では,発売前に全文公開なんてしたら売れないと思われてたのに,いざ公開して見ると,実は売れる,なんてことが起こっているようです.日本中の観光名所を3Dデータで公開したら,行きたくなる人も増えるのかもしれません.
クリエイター用作品配信サイト「note」では「全文公開」している記事が投稿されている


旧都城市民会館AR

藤原:プロジェクトの当初の予定にはなかったのですが,旧都城市民会館ARを制作しました.これは大隣さんが撮ったドローンベースのフォトグラメトリモデルがあまりにも精巧で,ぜひいろんな人に見てもらいたいと思ったのがきっかけでした.
Twitterの「 #都城市民会館AR 」には100件ほど投稿されており,建物だけどペットみたいに扱われているのが面白いなと感じました.

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名建築をスマートフォンで見ることができる「旧都城市民会館AR」が,クラウドファンディング支援者に先行公開された.その後,データの軽量化を図り,現在は建築の価値をデジタルで後世に継承すべくWebARを広く公開している.(リンク先で体験することができる)
金田:海外で撮影されているのもあり,こういう楽しみ方もあるのだなと感心しました.いろんなところでいろんな人が建築で遊んでいるのは新鮮ですね.

豊田:
可愛いと感じるのは新鮮.東京都庁だって可愛くなるかも.愛着のもたせかたの可能性としてありえるなと思いましたね.ミニチュアになった時の嬉しさに似ています.


バーチャルイベント会場としての可能性

豊田:ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」ではユーザー自らが3Dモデルでつくった「ワールド」をアップロードすることができます.たとえば,内側だけカスタマイズした「旧都城市民会館」をワールドとしてアップロードするなど,いろんな人が改変して楽しむというあり方も考えられます.
金田:市民会館のサイズの決め方はイベントによって決まるそうです.
一般的には一番大きなイベントは成人式で,都城市では結婚式もやっていたそうです.つまり,この建築にとってイベントは重要だった.そういう意味では,バーチャル上でイベントをやるなど集まる場所になることにも非常に可能性が感じられますね.


リアルとバーチャルを繋ぐ

豊田:現状,デジタルデータはデジタル世界で閉じています.
解体が終わった敷地にARマーカーを置いてタブレットやスマートフォンをかざすとARで見れるなど,リアルと接続できる可能性はさまざまにあると思います.
たとえば,現在進んでいる2025年の万博の会場でも3Dデータを活用できるようになると面白いのではないかと考えています.1970年万博の会場を全部3D化して,VRで見れるようにするとか.データが足りないところを当時参加していた人から集めていくなど,さまざまな可能性が考えられます.

先日,xRArchiというxRと建築のコミュニティが主催するVR空間デザインコンテスト「VRAA01」の審査イベントに参加しました.
そこでは現実の会場を3Dスキャンし,ミラーワールドをつくって,リアルとバーチャルを繋げたイベントをしていました.
このようにリアルとバーチャルの両方の空間をもっと活かしていく方法を探っていけるといいですね.

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現実会場をフォトグラメトリによって3Dモデルを立ち上げバーチャル会場を制作.両者をスクリーンで繋いだイベント「VRAA MeetUp」
金田:取得した現実のデータがあるからこその試みですよね.
ノートルダム大聖堂が焼失した時も,たまたま3Dデータが残っていたので,再建に活用できるのではないかと聞いています.そもそもデータがあることの重要性は高いと言えます.
そういえば,都城市に説明した時のタイミングもノートルダム大聖堂が焼失したくらいの時期でした.
豊田:熊本城も3Dスキャンされていますが,崩壊後のものしか残っていませんでした.国宝文化財は必ず3Dスキャンするくらいに当たり前にならなければいけないなと思います.


取得した3次元データの活用については,さまざまなアイデアが登場した.こうした議論はそもそもデータがないと始まらない.そして,その活用例はどんどんと実装されていかなければ知見を蓄積することもできない.

汎用版の点群データは,研究や教材としての活用や,クリエーターによる自由な創作活動に役立つようオープンソースとして公開されている.点群データを使って,実際に3次元モデルをつくってみるのはいかがだろうか.

たとえば,2019年10月号の『CG WORLD』では映画天気の子「Google Earth プロ」「Google Earth studio」が活用され,都市の3次元データがアングル決めやロケハンの下見,そして映像自体に使われていることが明かされている.またカメラで撮影したものから立ち上げた建築や都市の3次元モデルも使われているらしい.このように思わぬところに建築や都市の3次元データの活用の可能性が潜んでいるかもしれない.

そのような観点でも,こうしたプロジェクトが自発的に起こり,クラウドファンディングを通して多くの人の支持を得たことは大いに価値があることだろう.
今回のトークセッションは未だ見ぬ可能性について語り合う機会となった.
『旧都城市民会館』3次元デジタルアーカイブプロジェクトは現在進行中だ.これからも引き続き動向に注目していきたい.
(文責:hukukozy


参考ページ 

gluon(グルーオン)
「建築・都市」「テクノロジー」「ビジネス」を軸に、領域を横断して新しい価値を生み出すコンサルティングのプラットフォーム。コンピューテーショナルデザインを取り入れた設計・制作を展開する豊田啓介、エンジニアリングを専門とする金田充弘、建築周辺分野の先端技術実装に豊富な実績を持つ堀川淳一郎ら、それぞれの専門領域を繋ぎながら、ビジョン構築や技術実装に取り組んでいます。

KUMONOS CORPORATION(クモノスコーポレーション)
1995年、阪神・淡路大震災の復興への貢献を目指して、大阪府箕面市で創業。“測れないものを測る” をモットーに、常識を覆す測量システムを創造し、さらに、創業当初から導入している3Dレーザースキャナの活用により、建築・土木の分野のみならず、文化財・スポーツ施設・観光資源などの維持メンテナンス、映画・VRなどのコンテンツビジネスなどの各分野でも実績を重ねています。

●『旧都城市民会館』3次元デジタルアーカイブプロジェクト


デジタル芸大

銭洗弁天VR

高輪橋架道橋フォトグラメトリ / Takanawa Underpass

VRAA MeetUp

●旧都城市民会館AR


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福田晃司.建築専門誌の編集者です.91年生まれ.デジタルデータと建築が融合すると何が起こるのかをウォッチングしたく,Unityなどをいじりつつネットサーフィンする日々.xRと建築のコミュニティ「xRArchi」/計算分離派

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