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日々雑感2018

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テキストなどを放り込んでいく場.基本的には読書録・映画録になると思います.2018年は精読を心掛ける!
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#Design

『サービスデザインの教科書』読書メモ

書籍詳細 〈価値提供〉から〈価値共創〉へ! サービスの概念を根底から覆す新しいデザイン手法を、日本における第一人者が紹介する、決定版入門書! 「モノのビジネスからコトのビジネスへ」という言葉に代表されるように、近年「サービス」への関心はますます高まり、製品は分かちがたく結びつくようになっており、その流れは、IoT、ビッグデータ、AIの発展によって加速していくと予想される。 また、ビジネスシーンにおいて「デザイン思考」が急速に注目されているように、「これまでにない新しい価

デザインは思ったよりも影響力が強い─『悲劇的なデザイン』

書籍詳細 人が触れるモノやサービスを作る全デザイナー、特に美術教育を受けた者に捧ぐ。新時代のデザイナーのためのリスクマネジメント・ガイドブック。今、デザインは社会において大きなインパクトをもった。そして明らかになってきたのは、デザインには物事を革新する良い力だけでなく、人を「殺し(第1章/第2章)」、「怒らせ(第3章)」、「悲しませ(第4章)」、「疎外感を与える(第5章)」力がある。命を奪いかねないインターフェイス、怒りをあおる失礼なテクノロジー、思いがけず悲しみを呼ぶ仕

読まれる(物語られる)ことを意識すること─『プロローグ』

小説の書き手である「わたし」は、物語を始めるにあたり、日本語の表記の範囲を定め、登場人物となる13氏族を制定し、世界を作り出す。けれどもそこに、プログラムのバグともいうべき異常事態が次々と起こり、作者は物語の進行を見守りつつ自作を構成する日本語の統計を取りつつ再考察を試みる……。 プログラミング、人工知能、自動筆記…あらゆる科学的アプローチを試みながら「物語」生成の源流へ遡っていく一方で、書き手の「わたし」は執筆のために喫茶店をハシゴし、京都や札幌へ出張して道に迷い、ついには

なぜ「〈物語〉シリーズ」では建築が描かれるのか─背景が語ることはなんなのだろうか

高校二年生の阿良々木暦はある夜、伝説の吸血鬼であり、 “怪異の王”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと 衝撃的な出会いを果たす。 まばゆいほどに美しく。 血も凍るほどに恐ろしく。 四肢を失い、痛々しくも無残な伝説の吸血鬼。 全ての〈物語〉はここから始まる— 西尾維新による原作小説「傷物語」を、「Ⅰ鉄血篇」、「Ⅱ熱血篇」、「Ⅲ冷血篇」の 全三部作として映像化。『〈物語〉シリーズ』、『魔法少女まどか☆マギカ』の 総監督新房昭之とシャフトが送る、『化物語』で描

物語装置としての窓

夜のファミレスが何故か好きだ。それは、都心ではなくて郊外のロードサイドであればあるほど、人気がなければないほど、私にとっての好みの場所となる。深夜のファミレスには情緒を誘うものがある。 なぜだろうか。 福田雄一によるドラマ『THE 3名様』は、深夜のファミレスでどうしようもない若者3人組がただダラダラとくっちゃべるという作品だ。 ただダラダラと喋るだけ。特に事件が起きるわけでもない。しかし、なぜ、これを面白いと思えるのだろうか。 ファミレス=物語の同時並列ファミレスには、

東京駅丸の内駅前広場にもっと注目してほしい

最近,日本の都市空間においてとてもインパクトのある空間が誕生しました. それが,2017年12月7日に全面供用が開始された「東京駅丸の内駅前広場」です. 2012年に復元が完了した東京駅の駅舎はインパクトを持って完成し,すっかり東京のお馴染みの顔となりました.そして,歩行者空間「丸の内中央広場」,交通空間からなるこの駅前広場も地味ではありますが,東京駅の駅舎と同じくらいとても興味深いプロジェクトです. 何が興味深いのか簡単に解説します(正確な表現ではなかったら,ご指摘く

二重橋駅に〈丸の内〉が追記された

少し前から地下鉄に乗っていて「あら?」と思っていたことがあったのだが,ある人のツイートを見て,やっぱりそうだったのか,と改めて思ったことがある. それは,千代田線二重橋駅に〈丸の内〉という名称が追記されたことだ. 確かによくよく考えてみれば,東京駅に行くには二重橋駅で降りるのが結構近い.これまではなんとなく大手町駅から降りてしまっていたけど,僕がいつも用があるところからは二重橋駅の方が大手町駅より近いかもしれない. そもそもなぜ「二重橋」だったかと言うと皇居へかかる橋に

自分たちの生きる都市・時代について思いを巡らす|『ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命』

4/28より上映が始まった都市活動家・作家のジェイン・ジェイコブズのドキュメンタリー映画を視聴。建築学徒にとっては必読書と言われるジェイコブズ著の『アメリカ大都市の死と生』だが、実際のところ、本書が著された1960年代のアメリカがどのような背景でジェイコブズがどのような活動を行ったか、そしてジェイコブズがどのような人物だったかは分からなかった。映像を通してその姿を見ることでより著書への理解が深まる内容であった。 お時間ある方はぜひ見に行ってみてください。 1961年に出版

「違和感」を肯定的に─『建築と日常 特集:平凡建築』

編集者・長島明夫氏による個人出版本『建築と日常』の最新号を読んだ。特集タイトルは「平凡建築」。 ここで語られる「平凡」とは要約するとこういうことだ ①「平凡」であるということは「並」であるということ。つまり、建築の基本的性能(雨風をしのぐ、など)を満たしていること。 ②人間が文化的に生活する安定した環境は大多数の「平凡」な建築の調和によって生み出されている。 ③ほとんどの人は「平凡」な建築の中で生活している。「住めば都」という言葉があるように平凡な方が愛着が発生しやすいの

ハレルヤ! モーゼス─『評伝 ロバート・モーゼス 世界都市ニューヨークの創造主(マスタービルダー)』

ただいま上映中の『ジェイン・ジェイコブズ|ニューヨーク都市計画革命』にヒールとして登場しているロバート・モーゼスの評伝を読んだので,備忘録. 上記事でもちょっと触れたように上映中の映画では映画というメディア上,物語を分かりやすくするためジェイコブズvsモーゼスとした上で,モーゼスを「悪」としていました. しかし実際,現実はそんな単純な訳ではなく,モーゼスが徐々に凋落し始めていたところ,時代の後押しもあり,ジェイコブズがすごく力を得たという背景があるみたいです(映画は良いです

レクチャー「ゲームのノウハウで日本の建築は世界トップに立つ 」メモ

今日聞いてきたイベントについて簡単に備忘録.「建築」の部分を入れ替えれば何にでも差し替えれそうだが,色々と勉強にはなった(「建築」はほとんど関係なかった).今はゲンロン8のゲーム特集を読んでいるので,タイムリーといえばタイムリーだった.ゲーム系の読書録は下記. スピーカーはサイトウ・アキヒロ氏(亜細亜大学 都市創造学部 教授) 使いやすいインターフェースについて●ボタンだらけのリモコンは誰も使えない─使っていないボタン・機能が多い.機能を増やすためにお金かけて,結果として

スキン&フレーム(屍体標本系),インテグレーション(ノンヒエラルキー系),セクション・ディスプレイ(素材転倒系),スワッピング(部材転倒系)─隈研吾氏の建築から

役得な仕事で建築家の松島潤平さんのレクチャーを拝聴したので,ログ.内容としては,5月11日に『建築と「もの」』というレクチャーで行ったものと同様とのことなので,下記のURLにすべてまとめられている(こういうの素晴らしい!).というわけで個人的に気になったところだけざっくりと. 松島潤平氏は、建築家・隈研吾氏の事務所出身。 レクチャーのスタートは自身の隈建築カテゴライズを披露した上で、自身の作品へと繋げていた。自身が勤めていた事務所でのつくり方を思想的に深化させた上で、自身の

クラウドベースの協働作業・スモールスタート・データの転用可能性について|「BIM1000本ノック──BIMに対する解像度を上げるために」

建築を情報の観点から再定義しその体系化を目指す建築情報学会。その立ち上げのための準備会議が開催されている。 建築情報学会の準備会議の第2回は「BIM(Building Information Modeling)」を対象にして開催された. 建築設計における新しいワークフローとして登場したBIMだが,こういう企画が催されるということは,その浸透度はまだそこまでの段階ではないのだろう. 仕事柄,設計者から設計上でのBIMの利用についての話を聞くときには3Dの高精度なモデルでのシ

「サヴォア邸ツアーβ版」やってみた

「Unity」や「OculusGo」など個人レベルでも廉価でゲームなどを制作し体験できるようになった現代ならではの建築のトレーニングは考えられないか. と,そんな思いでポツリと呟きをしたところ,Cinema4DとUnrealEngineで近代建築の代表作ル・コルビュジェの「サヴォア邸」を巡る「サヴォア邸ツアー」を制作されている方からレスポンスをもらいました. β版は当初windowsのみでしたが,早速macでも操作できるように対応してくださいました. せっかくなので遊ん