クラウドベースの協働作業・スモールスタート・データの転用可能性について|「BIM1000本ノック──BIMに対する解像度を上げるために」

建築を情報の観点から再定義しその体系化を目指す建築情報学会。その立ち上げのための準備会議が開催されている。

建築情報学会の準備会議の第2回は「BIM(Building Information Modeling)」を対象にして開催された.

建築設計における新しいワークフローとして登場したBIMだが,こういう企画が催されるということは,その浸透度はまだそこまでの段階ではないのだろう.
仕事柄,設計者から設計上でのBIMの利用についての話を聞くときには3Dの高精度なモデルでのシミュレーションが...といった話がほとんどでそれを聞いて「BIMってそれだけのツールだったっけ?」と思うこともしばしばである(ただ仕事の効率なんて話をしてもしょうがないから話していないのかもしれない)

実務に携わっている訳ではないのだが,こうしたBIMに関する赤裸々な応答がなされていることは非常に興味深い.なので所感を.


クラウドベースの協働作業について

BIMというツールの前に,まずは2ページ目で触れられているようにGoogleDocなどを利用したクラウドベースの協働作業の文化が根付く必要性があるのではないかと感じる.

なぜか.
そこではそのクラウドベースでの作業の生産性を上げるために自分たちで「ルール」を設定するということが必要になってくる.そして,その「ルール」は自分たちで設定したからこそ,改変可能である.ある「ルール」の効率性が有効でなかったらすぐさま変えればいい.
こうした「ルール」決めはタスクマネージメントスキルの点で非常に重要だ.

クラウドベースでの作業はメールなどとのやりとりとは異なり時間的なロスがない.しかし一方で,そうしたロスのない同時作業は「ルール」を定めないと(共通認識が生まれず)無法地帯になってしまう可能性がある.クラウドベースの作業はそうした「生産性」に関する認識を発生させるためのきっかけとして非常に有効である.
私たちはプロジェクトアイデアの質については議論するが,プロジェクトの生産性についてはあまり議論しない.また,クラウドベースでは全員が「ルール」のつくり手であり受け手である.そこでは,押し付けの規則ではなくフラットに運用される「ルール」が求められる.その文化をまず根付かせるためにクラウドベースの協働作業の文化が根付く必要性があるのではないか.

プロジェクトが長ければ長いほど,初期に設定する共有のソフトウェア環境,データ構造,マネージャー,連絡手段...などなどを細かく設定しておくことが重要になってくる.

まずはそうした「ルール」決めのある種の「難しさ」と「効率性への寄与」などをお手軽に体験するため,手のつけやすいGoogleDocなどを利用し,スモールスタートでクラウドベースの協働作業の文化を根付かせる必要性を感じる.


スモールスタートからの浸透について

またもやスモールスタートなのだが,当方は実務者ではないのでわからないが,BIMは少人数の組織の方がインパクトあるのではないかと思う.協働はやはり組織スケールが大きくなると運用が大変なので,挫折感の方を味わってしまうことになるかもしれない.

この辺りは記事内の

BIM普及のためには、特定ソフトウェアのトレーニングよりも、複数人で課題に取り組むためのコラボレーション環境を作るところからスタートさせてはいかがでしょうか。
「BIMは怖くない」というのは地味だけど重要なキーワードだと思います。私の周りを見渡してみても、9割の人はソフトウェアを開いたことがないというのが実情です。...(中略)...スピードは実務やコンペなどで急かされてやっているときに早くなりますから、そういうところではなく、まずは道具を手なずけておくことが大切です

等々の発言が重要で,実務上などで急務を要するように取り入れられては良い点を教示できずに終わってしまう可能性がある.まずはゆとりのあるプロジェクトなどで試行するのが良いと思う.
「ソフトウェアは締め切りによりスキルがエンパワーメントされる」と孔子は言いましたが,BIMの場合は「ワークフロー」という性質上,その恩恵は受けにくい感じがする.

あとは前述したように関係人数が多くなるとリスクが高くなるので,小組織や小さなチームでまず成功体験が積み重ねられるのが良い気がする(言い方を変えれば「遊び」を担保する場所ということですね).
ただ小規模の組織にとってはコスト的なハードルが障壁としてあるのかもしれない.


データの転用可能性について

豊田啓介さんの

BIMソフトに閉じることなく、さまざまなソフトを気軽に使い倒せることが大事

辺りも大事でBIMのデータが汎用性あるものとしてさまざまなところで使えるようになると良いという意味でUnity BIM Importerとか重要感あるネ.

これもやっぱり導入コストが...ね....

サポートして頂いたものは書籍購入などにあて,学びをアウトプットしていきたいと思います!