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日々雑感2018

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テキストなどを放り込んでいく場.基本的には読書録・映画録になると思います.2018年は精読を心掛ける!
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#文章

知らないを知る

今更ながら2017年の振り返り。 2017年はお世辞にも実りのある年とは言えなかった。 基本的には手応えを感じるようなことは一度もなかったし、自分のやるべきことを意識できていたとも思えないし、客観的にみても何か成果を出せていたようには思えない。とことん迷走した年であったように思う。 今の会社に入ったのは、社会的に自立したいだとかそれっぽい考えがあったというよりか、6年間「建築」について勉強してみて、「建築」がどういうものか結局全然わからなかったからである。そのまま博士に行

『メイキング 人類学・考古学・芸術・建築』

書籍詳細 人類学と考古学、芸術、そして建築。 これら4つのAをすべて、世界を探究する技術として捉えなおしたならば、どんな風景が広がるだろう。そのために石器を試作し、浜辺を歩き、ある1体の彫像を1週間観察する。そんな授業を続けてきたインゴルドが送る、文化人類学の冒険の書! ■ 2018年1冊目。 あまり頭に入って来なかったな... しかし、建物は世界の一部であり、世界は停止したままではなく、常に成長、衰退、再生という無限のプロセスを展開している。いかに人間がそれを釘づけ

トヨタの新しいコンセプトカー「e-Palette」がちょっと面白そう

トヨタは”モビリティ版アマゾン”を目指す トヨタがCESで発表した新しいコンセプトカーがちょっと面白そう. どういうものかというとまずは下の動画をご覧くださいませ. 自動運転車にさまざまなサービスを付加し,モビリティを耐久消費財ではなくサービスとして提供する,という,まあありそうといえばありそうな提案なんだけど,それがビジュアライズされて公式に発表されたということは大きな意味を持つのだろうな. つまりこのニュースはトヨタのような一時代を築いてきた会社が自動車産業において

『サービスデザインの教科書』読書メモ

書籍詳細 〈価値提供〉から〈価値共創〉へ! サービスの概念を根底から覆す新しいデザイン手法を、日本における第一人者が紹介する、決定版入門書! 「モノのビジネスからコトのビジネスへ」という言葉に代表されるように、近年「サービス」への関心はますます高まり、製品は分かちがたく結びつくようになっており、その流れは、IoT、ビッグデータ、AIの発展によって加速していくと予想される。 また、ビジネスシーンにおいて「デザイン思考」が急速に注目されているように、「これまでにない新しい価

デザインは思ったよりも影響力が強い─『悲劇的なデザイン』

書籍詳細 人が触れるモノやサービスを作る全デザイナー、特に美術教育を受けた者に捧ぐ。新時代のデザイナーのためのリスクマネジメント・ガイドブック。今、デザインは社会において大きなインパクトをもった。そして明らかになってきたのは、デザインには物事を革新する良い力だけでなく、人を「殺し(第1章/第2章)」、「怒らせ(第3章)」、「悲しませ(第4章)」、「疎外感を与える(第5章)」力がある。命を奪いかねないインターフェイス、怒りをあおる失礼なテクノロジー、思いがけず悲しみを呼ぶ仕

『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』読書メモ

書籍詳細 「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」―。人間は、どこまでも滑稽で「不合理」。でも、そんな人間の行動を「予想」することができれば、長続きしなかったダイエットに成功するかもしれないし、次なる大ヒット商品を生み出せるかもしれない!行動経済学ブームに火をつけたベストセラーの文庫版。 読了.経済学の本すらほとんど読んだことなかったが,平易な文章と興味深い実験の数々ですっと読

「ランドマークが機能しなくなった」東京と「ランドマークが描かれない」東京─背景が語ることはなんなのだろうか2

『シン・ゴジラ』と『君の名は。』を同時期に観て、東京の描かれ方の差異にふと目がいった。 ふたつの作品はアニメと実写という違いはあるものの、『シン・ゴジラ』の場合はCGで実写を補完し、とてもアニメ的な構図でつくられた実写でもある。本質的な違いが存在しているわけではない。 両者の作品はどちらも「東京」という場所を描くことが作品の中ではある一定の重要性を持っているように思われる。 「ランドマークが機能しなくなった」東京 「よく知られているように、初代ゴジラは身長が50mであり、当

分身、幽霊、グリッチ、ノイズ─『SFマガジン「やくしまるえつこ特集」』

書籍詳細 ●特集 やくしまるえつこのSF世界 音楽家、やくしまるえつこの総力特集をおおくりする。 本誌連載中の「あしたの記憶装置」など、 音楽のみならずSF的な世界観を持つプロジェクト、テクスト、 ドローイングや美術作品などでも活躍するやくしまるえつこ。 ディスクガイドや多方面からの評論で彼女のいままでの足跡をたどるとともに、 「タンパク質みたいに」で話題を呼んだやくしまるえつこ×円城塔による 言葉のやりとり「フラグメンツのあいびき」を始め、 彼女を愛してやま

「”落ちた”後は上がる以外に道は無し!!」と言った人がいた─『オデッセイ』

さんざん「火星に取り残された男が繰り広げる感動巨編!」みたいな宣伝がされていたが、ネット上に流れていた「火星版DASH村」という表現がまさにジャストフィットな作品だった。 もう単純にエンタメ作品として、なんの癖も嫌みもないとても爽快な気分で観れる作品。 『インターステラー』のマン博士とは打って変わって「とにかく明るいデイモン」と揶揄されるくらいマット・デイモン扮するマーク・ワトニーが魅力的な人物。どんな苦境も持ち前の明るさとユーモアで乗り越える姿はとても爽快。あんだけポジ

物語装置としての窓

夜のファミレスが何故か好きだ。それは、都心ではなくて郊外のロードサイドであればあるほど、人気がなければないほど、私にとっての好みの場所となる。深夜のファミレスには情緒を誘うものがある。 なぜだろうか。 福田雄一によるドラマ『THE 3名様』は、深夜のファミレスでどうしようもない若者3人組がただダラダラとくっちゃべるという作品だ。 ただダラダラと喋るだけ。特に事件が起きるわけでもない。しかし、なぜ、これを面白いと思えるのだろうか。 ファミレス=物語の同時並列ファミレスには、

SF小説からテクノロジーを考えるメモ1

現実を精彩に描くとSFになってしまう、と言われて久しい現代社会とテクノロジーですが、それでもSF小説に描かれる世界は私たちの現実社会やテクノロジーへ何らかの啓示を与えてくれます。 物語として楽しみつつもそこから何が考えられるか、ということを意識しながらなるべく読みたいな。ということで国内SFで色々とメモしてみる。 テクノロジーとの共存(共存した結果、究極的には人間がどのような存在になるかが描かれる) 野崎まど『know』...情報が増えすぎた時代「超情報化時代」に対して「

「初音ミク」を考える─『初音ミクと建築』1

初音ミクと建築について何か考えられないかと勝手に妄想したものです。時間ある方は暇つぶしにでも。 初音ミクとは 初音ミクは、クリプトン・フューチャー・メディアが2007年から展開している、ヤマハが開発した音声合成システムVOCALOIDにより女声の歌声を合成することのできるソフトウェア音源。初音ミクは「未来的なアイドル」をコンセプトとしてキャラクター付けされた。名前の由来は、未来から初めての音がやってくるという意味で、「初めての音」から「初音」、「未来」から「ミク」。ソフト

初音ミクから都市・建築を考えるための断想録─『初音ミクと建築』2

「初音ミク」を考える─『初音ミクと建築』1 ここからは、何か都市や建築につなげれないかなーと妄想したモノです。断片的な思考ですが。 「動員」の性質が変わることによって変わる音楽ホール 劇場や音楽ホールといったビルディングタイプは普段の私たちにとって馴染みのないものである。日本建築学会によって編集された『音楽空間への誘い-コンサートホールの楽しみ』という本にはこんな一節がある。 「…新しいデザインを生む以前にクラシックコンサートホールを支える社会的環境が微妙に崩れようと

「面会室」という異空間─『凶悪』

スクープ雑誌「明潮24」に東京拘置所に収監中の死刑囚・須藤から手紙が届く。記者の藤井は上司から須藤に面会して話を聞いてくるように命じられる。藤井が須藤から聞かされたのは、警察も知らない須藤の余罪、3件の殺人事件とその首謀者である「先生」と呼ばれる男・木村の存在だった。木村を追いつめたいので記事にして欲しいという須藤の告白に、当初は半身半疑だった藤井も、取材を進めるうちに須藤の告発に信憑性があることを知ると、取り憑かれたように取材に没頭していく。 「わたし」と「あなた」が向き