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日々雑感2018

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テキストなどを放り込んでいく場.基本的には読書録・映画録になると思います.2018年は精読を心掛ける!
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2018年2月の記事一覧

「ランドマークが機能しなくなった」東京と「ランドマークが描かれない」東京─背景が語ることはなんなのだろうか2

『シン・ゴジラ』と『君の名は。』を同時期に観て、東京の描かれ方の差異にふと目がいった。 ふたつの作品はアニメと実写という違いはあるものの、『シン・ゴジラ』の場合はCGで実写を補完し、とてもアニメ的な構図でつくられた実写でもある。本質的な違いが存在しているわけではない。 両者の作品はどちらも「東京」という場所を描くことが作品の中ではある一定の重要性を持っているように思われる。 「ランドマークが機能しなくなった」東京 「よく知られているように、初代ゴジラは身長が50mであり、当

分身、幽霊、グリッチ、ノイズ─『SFマガジン「やくしまるえつこ特集」』

書籍詳細 ●特集 やくしまるえつこのSF世界 音楽家、やくしまるえつこの総力特集をおおくりする。 本誌連載中の「あしたの記憶装置」など、 音楽のみならずSF的な世界観を持つプロジェクト、テクスト、 ドローイングや美術作品などでも活躍するやくしまるえつこ。 ディスクガイドや多方面からの評論で彼女のいままでの足跡をたどるとともに、 「タンパク質みたいに」で話題を呼んだやくしまるえつこ×円城塔による 言葉のやりとり「フラグメンツのあいびき」を始め、 彼女を愛してやま

わたしたち「会社員」は、社会という環境が生み出した、あるパターンの一部にしか過ぎないのだとか云々─『社員たち』

書籍詳細 地中深くに沈んだ会社。社長の愛した怪獣クゲラ。卵になった妻。あっぱれ! 大卒ポンプ。不景気なのか戦時下か、今日を生き抜く社員たち。北野ワールド全開! 超日常の愛しい奇想短編集。 ■ 読了. 北野勇作氏のブラックユーモア溢れる奇妙な世界が爽快. 「社員」を描く短編を集めた本作はまさにサラリーマンである我が身に響く内容である. ある日出勤すると会社は地中深くに沈んでいた.社長も一緒に沈んでしまったために失業保険を得るためには社長を掘り出さなければと,掘り出し

「”落ちた”後は上がる以外に道は無し!!」と言った人がいた─『オデッセイ』

さんざん「火星に取り残された男が繰り広げる感動巨編!」みたいな宣伝がされていたが、ネット上に流れていた「火星版DASH村」という表現がまさにジャストフィットな作品だった。 もう単純にエンタメ作品として、なんの癖も嫌みもないとても爽快な気分で観れる作品。 『インターステラー』のマン博士とは打って変わって「とにかく明るいデイモン」と揶揄されるくらいマット・デイモン扮するマーク・ワトニーが魅力的な人物。どんな苦境も持ち前の明るさとユーモアで乗り越える姿はとても爽快。あんだけポジ

物語装置としての窓

夜のファミレスが何故か好きだ。それは、都心ではなくて郊外のロードサイドであればあるほど、人気がなければないほど、私にとっての好みの場所となる。深夜のファミレスには情緒を誘うものがある。 なぜだろうか。 福田雄一によるドラマ『THE 3名様』は、深夜のファミレスでどうしようもない若者3人組がただダラダラとくっちゃべるという作品だ。 ただダラダラと喋るだけ。特に事件が起きるわけでもない。しかし、なぜ、これを面白いと思えるのだろうか。 ファミレス=物語の同時並列ファミレスには、

SF小説からテクノロジーを考えるメモ1

現実を精彩に描くとSFになってしまう、と言われて久しい現代社会とテクノロジーですが、それでもSF小説に描かれる世界は私たちの現実社会やテクノロジーへ何らかの啓示を与えてくれます。 物語として楽しみつつもそこから何が考えられるか、ということを意識しながらなるべく読みたいな。ということで国内SFで色々とメモしてみる。 テクノロジーとの共存(共存した結果、究極的には人間がどのような存在になるかが描かれる) 野崎まど『know』...情報が増えすぎた時代「超情報化時代」に対して「

「初音ミク」を考える─『初音ミクと建築』1

初音ミクと建築について何か考えられないかと勝手に妄想したものです。時間ある方は暇つぶしにでも。 初音ミクとは 初音ミクは、クリプトン・フューチャー・メディアが2007年から展開している、ヤマハが開発した音声合成システムVOCALOIDにより女声の歌声を合成することのできるソフトウェア音源。初音ミクは「未来的なアイドル」をコンセプトとしてキャラクター付けされた。名前の由来は、未来から初めての音がやってくるという意味で、「初めての音」から「初音」、「未来」から「ミク」。ソフト

初音ミクから都市・建築を考えるための断想録─『初音ミクと建築』2

「初音ミク」を考える─『初音ミクと建築』1 ここからは、何か都市や建築につなげれないかなーと妄想したモノです。断片的な思考ですが。 「動員」の性質が変わることによって変わる音楽ホール 劇場や音楽ホールといったビルディングタイプは普段の私たちにとって馴染みのないものである。日本建築学会によって編集された『音楽空間への誘い-コンサートホールの楽しみ』という本にはこんな一節がある。 「…新しいデザインを生む以前にクラシックコンサートホールを支える社会的環境が微妙に崩れようと

「面会室」という異空間─『凶悪』

スクープ雑誌「明潮24」に東京拘置所に収監中の死刑囚・須藤から手紙が届く。記者の藤井は上司から須藤に面会して話を聞いてくるように命じられる。藤井が須藤から聞かされたのは、警察も知らない須藤の余罪、3件の殺人事件とその首謀者である「先生」と呼ばれる男・木村の存在だった。木村を追いつめたいので記事にして欲しいという須藤の告白に、当初は半身半疑だった藤井も、取材を進めるうちに須藤の告発に信憑性があることを知ると、取り憑かれたように取材に没頭していく。 「わたし」と「あなた」が向き

「死」とは?─『ニルヤの島』

人生のすべてを記録し再生できる生体受像(ビオヴィス)の発明により、死後の世界という概念が否定された未来。ミクロネシア経済連合体(ECM)を訪れた文化人類学者イリアス・ノヴァクは、浜辺で死出の船を作る老人と出会う。この南洋に残る「世界最後の宗教」によれば、人は死ぬと「ニルヤの島」へ行くという――生と死の相克の果てにノヴァクが知る、人類の魂を導く実験とは? ※※※ 柴田勝家 /『ニルヤの島』を読んで感じたこと。 その風貌や言葉遣いが柴田勝家そのまんまだということで一昨年去

建築の(ちょっとずれた)面白い本を紹介してみる

最近忙殺されていて思考が硬くなり気味です.ということで,変なことに思いを巡らせたいなと思いまして,キーボードを叩いてみている. 世の中には変わった本が山ほどありますが,例に漏れず建築界にも変わった本が山のようにあります.僕が読んだ建築の中でちょっと変わっているな〜,と思った本を簡単に紹介してみようと思います. という訳で最初はこの本です. 『グッドバイ・ポストモダン』隈研吾 今や,日本人なら誰でも知っているであろう建築家・隈研吾氏が著者のこの本.1989年出版です.ア

卒業制作について

色々悩み始めた時は自分が卒業制作にあたってつくったステイトメントを眺めてみたりするのだが,毎回読むたびに,自分はここから(良くも悪くも)離れられてないなー,と思う.結局制作したものがよかったのか悪かったのかも判断できずに,なんとなく「建築」とか「都市」というものを理解することすらできずに,それに近いのか遠いのか分からないような職について,今もずっとその周辺をうろうろしている. そんなどっちつかずな態度がこのステイトメントにも表れている.そして,このステイトメントは「ここが悪

『二匹目の金魚』─「2018年オススメの漫画」

「#今週のお題」が始まったということで,投稿してみます. 2018年のオススメ漫画はやはり何と言っても敬愛するpanpanya先生の新作『二匹目の金魚』 どこかで見たことのあるようなそれでも見たことのない不思議な街を赤い服の女の子が歩いていくというpanpanya先生お馴染みのスタイル. 「もの」としての本づくり内容ももちろん素晴らしいです.しかし,特に毎回感動するのは,徹底した「もの」としての本づくりなのです. panpanya先生の書籍では読者が手に取って楽しめるよ

FF10に思いを馳せた

テレビのCMで「いなくなった人のことを、ときどきでもいいから思い出してください」なんてフレーズを聴いてしまったものだから、懐かしくなって思わずFF10のムービー集動画をバーっと見てしまった。 FF10は大体、僕が小学6年生だか中学1年生だかのゲームだが、猛烈にハマった記憶がある。 それまでドラクエを主戦場としていおりFFはやっていなかった。その僕が何故FF10に興味を持ったかは不明である。 今見てもストーリーがとても秀逸だし、それに合わせての演出も憎い。OPで流れるジェ