【後編】~お客様にデザインを、そして自分の経験を学生たちに還元していく~服飾専門学校教員＆セミオーダーシャツブランド 「arita_yuto_kengai」さん
こんにちは、フクコトバのKOUKIです！
私たちフクコトバが、実際にインタビューをさせて頂き「ぜひみなさんにご紹介したい！」と思った方をご紹介するシリーズ「〇〇さんのフクコトバ」です！
〜「〇〇さんのフクコトバ」とは〜
主に、ファッション関係のお仕事をされている（もしくはご経験された）方に対して、ファッションに興味を持ったルーツや、お仕事の内容等についてインタビューをさせて頂き、そのインタビュー内容を記事にして、ご紹介しています。
ファッションに興味のある方、ファッション関係の仕事に興味のある方は、なかな世間一般では聞けないお話がたくさんありますので、ぜひお楽しみ下さい！！
〜「フクコトバ」とは〜
私たちが、ファッション（衣服）には、「花言葉のように、言葉にならない想いを伝える役割がある」と思いつけたコトバです。
この記事では、ファッションに関わる方の「ファッションを通したコトバ（想い）」をお届けします！
今回インタビューをさせて頂いたのは、服飾専門学校の教員を務められる傍ら、ご自身のセミオーダーシャツブランドも立ち上げられている「arita_yuto_kengai」さんです。
自分の感性に従って服を選んでいた幼少期、昼夜問わずひたすら描いて縫った専門学生時代、そしてOEMニットブランドを経て、現在教員とブランドの２つの顔をもつ「arita_yuto_kengai」さん。
セミオーダーシャツブランド「kengai」のコンセプトやデザインに込めた想い、学生たちに伝えたいこと、そしてこれからの夢など「arita_yuto_kengai」さんならではの貴重なお話を沢山伺うことができました。
「arita_yuto_kengai」さんのinstagram
■ https://www.instagram.com/arita_yuto_kengai/
セミオーダーシャツブランド「kengai」の展示受注会のお知らせや、各種サンプル、実際に制作されたオーダーシャツをご覧いただけます。興味のある方はぜひチェックを！！
ご好評頂いている【前編】【中編】はこちら↓
最後となる【後編】では、「kengai」のコンセプトにも繋がる「arita_yuto_kengai」さんデザインに対する考え方や、現在の学生たちの進路、そしてご自身のこれからについてお聞きしています。
（zoomインタビュー実施：2021年9月27日）
①デザイン、そしてセンスとは？
フクコトバ「KOUKI」
これまでもデザインのお話が度々出てきましたが、わたし自身そういったことに取り組んだ経験がないので、差し支えなければ有田先生がどうやってデザインをされているかお伺いしてもよろしいでしょうか？
漠然と何かしら着想を得てデザインに落としてこんでいくのかな、と思ってはいたのですが。
「arita_yuto_kengai」さん
こんな事を自分で言わない方がいいかもしれないですけど、自分はあまり感度は高くないと思っていて。
でもセンスがないってことは、逆に一般の方の感覚に近いんだと。
だからこそ感度が高い人よりは、一般の方に向けてその人達が好きなものっていうのを生み出せるのかなと思っているんです。
なのでデザインする上では、追加していく作業より削る作業が多いですね。例えばパンって1枚シャツのデザインを出したときに、一般の方が着られるかとか、自分は好きやけど、これ服好きじゃない人に見てもらえるのかな、選んでもらえるかな、って思ったときに引き算をしていく。
ここまでやったら少しやりすぎだなって思ったら、デザインをちょっと削ったりとか、もうちょっとシンプルにしたりとかっていう、そういう引き算をする作業を主にしてますね。
フクコトバ「KOUKI」
「kengai」のコンセプトに近いものを感じますね。
「arita_yuto_kengai」さん
まさに考え方としてはそうですね。
自分が学生の時もそうですし、デザイナーとして仕事してる時も多かったんですけども、やっぱりセンスがある人って、沢山いるんですよね。もう本当に。
今の学生でもそうですし、同級生でもそうですし。後輩でもそうですし。
めちゃくちゃセンスあるなって子はたくさん居るんですよね。
なのでセンスや感性を前面に出していくファッションは、もうその人たちが担ってくれるだろうと。
じゃあ自分はどこをするのかって言ったら、センスのある人たちが盛り上げているところに、ファッションに興味を持っていない一般の方たちを、ちょっとでもそちらに近づけていく。そういった所を自分が担って行けたらいいなと思ってやっています。
「kengai」はその考えを形にしたブランドと言えるかもしれません。
フクコトバ「KOUKI」
自分の持ち味を生かして、一般の方たちに寄り添ったデザインをしていくということですね。
今のお話で、センスや感性という言葉がでてきました。
ふたつとも抽象的で捉えようのないイメージですが、ファッションを仕事をする上では切り離せないものだと思います。
さきほども、いつも周りには沢山センスのいい人がいたということでしたが、どういった人がセンスがいいと言われるのでしょう？
「arita_yuto_kengai」さん
デザインを見て「そういう所からデザインを持ってくるんや」と思わされたときに、センスのいいモノの見方をしているな、と思いますね。
例えば服のデザインするとき、服を見るのは当たり前かと思うんですね。
服を見て「新しいシャツを作ろう」となるのは普通だと思うんです。
でも例えば、何でもいいんですけど、、、、、。
なんか全然違うものから、例えば果物から服に落としこむとかって、すごく得意な人っているんですよ。
全然関係のないものを服に落とし込んでいく、そういうことができる人を見ると、すごいなって思いますね。
フクコトバ「KOUKI」
服からの延長線でデザインするのではなくて、服とは一見関係のない事柄を違った目線で見て、そこから服のデザインをする。そういうことが得意な人のことなんですね。
「arita_yuto_kengai」さん
服の話だけではないと思うんですけど、ボールペンってあるじゃないですか。カチカチカチってするボールペン。
あれってもともとあの、キャップ付きのボールペンだったじゃないですか。それで、多分あのキャップ付きだったものを不便だなって感じた人がいて、片手でつけられるようにカチカチカチっていう風にデザインした人がいると思うんですよ。
でもこれはデザインされたものを、より便利にするためのもので、まぁこれはこれですごいなって思ったんです。
けれど、それよりそもそもボールペンを生み出した人っていう人が、そもそもそういうセンスがある人だなっていう感じはしますね。
フクコトバ「KOUKI」
今まで無かったものを生み出す力がセンスなんですね。
マロニエのInstagramで、「arita_yuto_kengai」さんから学生向けて「日頃からアンテナを張って様々な事を素直に吸収して沢山センスを磨く事！」というメッセージが掲載されていた投稿を拝見しました。これも服に限らずいろんなものを見て、そこから発想を得ていこう、という事ですよね。
今のお話だと、どんなものからでも見方によってはアイデアが得られそうです。
「arita_yuto_kengai」さん
そうですね。何が服のデザインになるかっていうのはホントにわかりませんし。
あくまで僕が思うセンスなので、全てに当てはまるかわかりませんけど（笑）
②自分でブランドを立ち上げたからこそ学生たちに伝えられること
フクコトバ「KOUKI」
ここまで「kengai」というブランドのコンセプトや成り立ちなどについて、お伺いしてきました。
現在はブランドの運営をしながらも、引き続き教員生活も送られていると思います。
先程も専門学生たちへの指導についてお聞きしましたが、ご自身の活動に「kengai」の運営が加わったことで、他にもこういうことを伝えられるようになった等、変わったことなどはありますか？
「arita_yuto_kengai」さん
そうですね。
学生たちには、「自分がブランドをやっていたから、こういうことがわかったよ」というような直接的には伝えたことはないです。
けれどkengaiをやっていて良かったな、学生たちに伝えられているなと思うことはありますね。
フクコトバ「KOUKI」
具体的にはどういったことでしょうか？
「arita_yuto_kengai」さん
まずは、企業に属さなくてもちゃんと商品というものを作り上げられる、ということ。
それと、学生たちが服を作って販売したいとなった時に、自分が個人で活動をしているので、品質表示など、しておかなければならないことを伝えられる。今まではそこまでをサポートする先生がおられなかったと思います。
あとはイベント系ですね。
僕自身が個人や仲間たちと展示会やイベントをしているので、学生たちがイベントをするに当たって、どういう所から手を付ければ良いのか、場所はどうやって借りたらいいのか、何が必要なのか、ということ。
なので、学生のうちから個人で活動することをサポートできるようにはなっているとは思いますね。
フクコトバ「KOUKI」
なるほど。
できるならば、学生時代から独立へ向けての活動をしておくほうが良いと思われますか？
「arita_yuto_kengai」さん
うーん、どうですかね。
活動したいと思う感覚があるならば、したほうが良いと思いますね。強制しようとは思わないので。
今はこのコロナ禍の影響もあって、僕達の頃のように本来ならデザイナー、パタンナーとして就職できたはずの子たちも厳しくなっていて。
その状況も踏まえてですが、自分が担任を持った初めて子たちが、卒業と同時に就職せずに独立してブランドを立ち上げをしたんです。
フクコトバ「KOUKI」
それはやっぱり「arita_yuto_kengai」さんの影響が大きいんでしょうか？
「arita_yuto_kengai」さん
僕が教えていたことなので、少なからずあると思いますね。
その子たちは東京で活動し始めているんですけど、これから色んなことに躓いていくでしょうし、結果上手くいくかどうかは彼ら彼女ら次第でもあるので。そういうこともあって、就職とはまた別の道をつくることはできたのかなと。
その点では僕が教員になって教えたことが、良かったのか悪かったのかはまだわからないですけども。
フクコトバ「KOUKI」
今の社会状況を考えると、「arita_yuto_kengai」さんが教員に就かれたタイミングが、卒業後の選択肢を増やすという意味でベストのように感じられます。
「arita_yuto_kengai」さん
かもしれないですね。
僕らの時代は、卒業の時点で就職せず独立した人はいませんでしたから。
③これからのこと
フクコトバ「KOUKI」
幼少の頃から現在に至るまで、沢山お話いただきありがとうございます。
これから先については、「arita_yuto_kengai」さんの中で何かビジョンをお持ちなんでしょうか。
「arita_yuto_kengai」さん
そうですね。
いま考えているのは、「kengai」とは別にもう一つのブランドを立ち上げることですね。
「kengai」に関しては自分がデザイナーだとは思っていなくて、クリエイターという感覚でやっているんです。
でも自分は元々デザイナーでデザインすることも好きで、自分がデザインしたものも世の中に発信していきたいなと。
フクコトバ「KOUKI」
「kengai」は引き算のデザインと話されていましたが、今度の新ブランドはもっと有田先生の個性を足していくデザインになるということでしょうか。
「arita_yuto_kengai」さん
そこまでド派手なものになることはないとは思うんですけど（笑）
「kengai」のちょっと攻めてた商品くらいだと思っていただければ。
フクコトバ「KOUKI」
どんなデザインになるか楽しみですね！
「arita_yuto_kengai」さん
他の活動だと、今後は仲間との展示会にもより力を入れていきたいですね。
専門学校時代からこれまでは、ニットやシャツといった自分の専門分野を深く突き詰めてこれたと思っているんです。
でもジュエリーデザイナーやレザークラフトといった、同世代のクリエイターたちと交流を深めていけば行くほど、いま自分がやっていることはファッションという分野の中の、衣服というジャンル、更にその中のニットやシャツが小さい世界なんだなと感じるようになって。今取り組んでいることも大事にしながら、それ以外の分野のことにも注力していきたいと考えています。
フクコトバ「KOUKI」
展示会などの活動で同世代のクリエイターと出会うことが刺激になり、もっと広い世界に挑戦していきたいという事ですね。クリエイターの方々との話の中で、今後業界をこういう風にしていきたい、というような話は出るんですか？
「arita_yuto_kengai」さん
どうだろうな。自分たちの力でハンドメイドの価値が少しでも上がればいいな、という話はよくしますね。ヒト一人が一つのモノを作るということの価値を理解される世の中になるように頑張りたいなと。機械で大量に作ったものが悪いとは思わないんですよ。むしろそれがあるからこそ、逆にハンドメイドが注目され、クリエイターが増え、そのクリエイターが出会い、出会いを通していろんな活動に繋がっていけばと思ってます。
フクコトバ「KOUKI」
そうなんですね。
私たちフクコトバも、そうしたクリエイターさんとお客さんを繋げていく役割を担えたらと考えているんです。展示会に来られる方は、どういった経緯で見に来られ購入されるのでしょうか。やはり口コミなんですかね。
「arita_yuto_kengai」さん
口コミもありますし、僕たち自身も知り合いの方に「ぜひ来てください！」とお声がけはします。
例えば僕が知り合いや友人に「今度、展示会があるから来て！」と誘ったときに、もちろん僕の作品も観てくれるんですが、それだけでなくて僕以外のジュエリーやデザイナーの作品を見て、買ってくれたりするんです。
その時は自分もすごく嬉しくなりますね。逆のパターンもあります。
本来なら出会うことのなかったお客さんたちと、一緒に活動しているクリエイター達を通して出会うことになったというのが、とてもありがたく感じていますし、そういった繋がり方でお客さんが来てくださってますね。
フクコトバ「KOUKI」
状況的に大々的にイベントを催すというわけにはいかないと思いますが、人と人が繋がる場を設けることがとても大事なんでしょうね。
「arita_yuto_kengai」さん
そうですね。お客さんがまた別のお客さんを呼んで、ほぼ口コミと同じ意味なんですけど（笑）
モノを買ってくださったお客さんが、友人だったりに良さを語ってくれて、「えー！それ私も欲しい！」となってまた次買ってくださると、「自分のことを語ってくれたんや」と思って、ものすごく嬉しくなりますね。そういう出会いがあると嬉しいです。
フクコトバ「KOUKI」
確かに買う側としても、CMだったり著名人のステマに近いような宣伝よりも、知り合いや友人が嬉しそうに商品やそれに込められた想いを語っている時の方が、信頼がおけるようなところはある気がします。
フクコトバ「KOUKI」
「arita_yuto_kengai」さんはお店の制服も製作されると伺ったのですが、これまでどのようなものを作ってこられたのでしょう？
「arita_yuto_kengai」さん
滋賀県にBACKSTAGEというセレクトショップがあって、そこの店主さんの一言がキッカケで始まってるんです。
僕がユニフォームを作りたいって普段から話していたていうのもあるんですけど、そんなにユニフォームやりたいんやったら、、みたいな感じで（笑）。
まずはその店主さんが通っている居酒屋さんの制服から始まって、そこから色んな飲食店さんにご注文頂いてますね。
フクコトバ「KOUKI」
確かにオーダーメイド制服があれば絶対勤労意欲湧くでしょうね。
普段から制服を作りたいと話していたとのことですが、ご自身の中でのはじまりは何だったんですか？
「arita_yuto_kengai」さん
なんかあんまりオシャレじゃないじゃないですか。制服って（笑）。それをふとした時に思って（笑）。
今すぐというわけじゃないんですけど、将来的にやりたい事の一つに、お酒を出す店を作りたいっていうのがあるんですね。
自分が作る店やったら、なんか制服とかオシャレにしたいなと思って。飲食店で制服がオシャレなところってあんまりないよなって。
だったら、こだわってもいいんじゃないかなと思ったんです。
そこから制服を作りたいとなって、色んなところで話をしていたんですよ。
フクコトバ「KOUKI」
制服づくりは、ご自身が将来やりたい事の中の1つという事でしたが、ほかにもあるんですか？
「arita_yuto_kengai」さん
それでいくいと “白シャツ展”というのがしたいです。
まだ僕ひとりで勝手に思ってるだけですよ（笑）
僕みたいにシャツを作られている方っていると思うんですよね
いろんなシャツ作ってはる人に、白シャツだけ出店してもらって、それこそ真っ白い部屋で白シャツだけバーンと並べるような展覧会みたいな感じを想像してて、すごく面白そうだなと。
そういう妄想は沢山あります（笑）。
銭湯が好きなので、銭湯で展示会とか撮影をしたいとかそんなんもありますね。
フクコトバ「KOUKI」
夢が広がるばかりですね。
「arita_yuto_kengai」さん
そうなんですよ（笑）。どんどん溜まっていって（笑）
フクコトバ「KOUKI」
新ブランドや展示会など、今後の活動も楽しみにしてます！
本日は長い時間ありがとうございました！
「arita_yuto_kengai」さん
こちらこそありがとうございました。
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【後編】は以上です！
皆さま、いかがだったでしょうか？
デザインやセンスというと独創性や閃きの要素ばかりだと思っていましたが、お客様のことを考えて、そこからあえて削っていくという形のデザインもあるんですね。
その考えがあるからこそ「kengai」は、単なるオーダーシャツではなく、「arita_yuto_kengai」さんのデザインとお客様のデザインが組み合わさるセミオーダーシャツブランドという形になったのではないかと思いました。
これからもたくさんの人が「kengai」でのオーダーを通してファッションの世界へと踏み入れていくのでしょうね。
「kengai」を立ち上げた経験や知識を学生たちに伝えること。「arita_yuto_kengai」さんのキャリアだからこそ教えられることであり、それがまた新しい世代のブランドへと繋がっていくのではないでしょうか。
新ブランドや展示会、オーダーユニフォームなど、これからのご活動もとても楽しみです！
今回は貴重なお話を本当にありがとうございました！！
「arita_yuto_kengai」さんのinstagram
■ https://www.instagram.com/arita_yuto_kengai/
セミオーダーシャツブランド「kengai」の展示受注会のお知らせや、各種サンプル、実際に制作されたオーダーシャツをご覧いただけます。興味のある方はぜひチェックを！！
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■インタビュー方法
オンライン、対面どちらでも可能。（対面の場合は、関東圏のみ）
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■インタビュー内容
(大枠の質問です。お話の流れによって変更もあります。)
Q：どのような活動をされているのか？
Q：活動をするに至ったきっかけは？
Q：ファッションや衣服に興味を持った経緯や体験談
Q：ご自身や活動でアピールしたいこと
■費用
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