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カザフスタン映画『父は憶えている』カザフスタン人と日本人は顔が似ている

父は憶えている(2022年製作の映画)This Is What I Remember/Esimde
上映日:2023年12月01日
製作国:キルギス 日本 オランダ フランス
上映時間:105分
監督アクタン・アリム・クバト
出演者 アクタン・アリム・クバト ミルラン・アブディカリコフ タアライカン・アバゾバ


23年ぶりに帰ってきた父は記憶がないし話もできない。

鏡なんですね。
そんな父に見られている私たち。

カザフスタンの生活文化や近代化。
そこで23年生きてきた息子、その妻と娘。
父の元妻とその再婚相手の男とその母。

カザフスタンの雄大な山と空と大地、
そしてゴミゴミゴミゴミ!!
そして、雑な洗車場!!

からの元妻の姑の戦闘能力の高さ。
(姑はドーベルマンを操る。)

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画面で行われていることがずっと面白い。

カザフスタンの文化と風景の中での、濃厚で入り乱れる人間関係が面白い。

さらには性差別ですね。
後半から主役は元妻になります。

***

「男が1日に3回タラクと言わなきゃ離婚できない。」
「女性からクルを言っていい時代だ。」

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そもそもカザフスタンはロシアだった。
91年のソ連崩壊で独立国家に。

なんとなくモンゴルあたりくらいに思ってたけど、
キルギスとかウズベキスタンの上にあって、めちゃイスラム教なんですね。

カザフスタン人と日本人って顔が似ていると言われています。
地理的にめっちゃ離れている割に確かに似てると思います。
それで全員めっちゃイスラム文化の暮らしなので正直驚きがあります。

***

男が1日に3回タラクと言わなきゃ離婚できない、ってのは、
離婚を意味する「タラク」を夫が3回言いさえすれば離婚が成立するという慣習から来たセリフ。

それに対して「女性からクルを言っていい時代だ。」ってのは、

クルは「相互離婚」を意味する言葉で、女性から離婚を開始するときに使うようです。
妻からも離婚手続きを始める権利は法的にはあるようですが、
とはいえ夫が一方的に「タラクと3回言えば」離婚成立するのに比べて、妻の方のハードルは高くて、とても不均衡。

また、「女性からクルを言っていい時代だ。」というセリフに示されている通り、女性からクルを言ってはいけない時代が長かったし、「言っていい時代だ」って言わなきゃいけない時って大体まだまだダメな時ですよ。。

この映画でも妻が夫に「クルと言うわよ!」と詰め寄ると、妻は夫にとんでもない酷い目に遭わされてしまいます。。


***

この妻はそもそもは父の妻でした。
なにこの日本語!

えっと、
父(夫)は23年前にロシアに出稼ぎに行ったっきり消息不明になりました。
23年後の今、記憶も発話言語もなくした状態で帰ってきました。

その間に、母(妻)は村の有力者の男を再婚しました。
(させられた感じが強いです)

その有力者の夫は酷いやつだし、イスラム文化の女性差別的側面もあり、母(元妻)は幸せそうではありません。

で、そこには同居している姑がいます。
この姑が最強。
ドーベルマンを操る老女なのです。
で彼女は息子(元妻の夫)こう言います。
「嫁はちゃんと躾なさいと言ったでしょ!」と。

自分だって男から虐げられて生活してきたはずなのに(だから?)、ウチにやってきた嫁にも同じ目に遭わせようとする、積極的に。

↑これは日本でも往々にして行われていることのようですね。

***

父の息子の家族は、妻と幼い娘。

この息子も優しい雰囲気だし新しい価値観を持っているようにも感じるけど、特には男性性ガーッと出して妻を抑え込むようなシーンもあり、やはりまだまだと言った雰囲気。


主演を兼任している監督は上記のようなことを批判的に描いています。

「カザフスタンってこんなだっけ??」
「こんな感じでいいんだっけ?」と
23年前からタイムスリップしてきた老人が無言で
急速に近代化した現代人に問うているのでしょうね。






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