ラストネタバレ 同性愛は3年の禁固刑が課せられるモロッコで 映画『⻘いカフタンの仕立て屋』〜映画感想文〜
傑作・名作!
カフタンって知らなくてなんとなくカフスボタン的なものを想像してましたが、
トルコの伝統衣装のことなんですね。
シルクっぽい美しい極上の布に
気が遠くなるほど細かい刺繍や
金糸の装飾のついたオートクチュールの高級品。
それの仕立て屋が舞台。
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既製品の波に追いやられていて
若い人も職人になりたがらない伝統的な世界。
そんな伝統的な舞台で描かれるのは、人間の自由についてのお話。
「伝統イラネ」とか「古いものイラネ」なんて事言わなくても
人間の自由を高らかに描くことはできる。
LGBTQプラスに平等の権利を与えることと
伝統を壊すことはいちいち結びつけて考えなくていい。
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と・に・か・く・映・像・が・素・晴・ら・し・い
!
冒頭の青い生地の滑らかで冷ややかなグラデーションがもうもう素晴らしい。
この映画間違いないわ!と確信できたスタート。
しかもこのクオリティが最後までずっと続く。
夫と若い職人が惹かれあっちゃうわけなんだけど、映像だけでギンギンのビンビンに伝わるわけ。
はっきり言って全シーンエロいのさ。
エロいシーンはぶっちゃけほぼないんだけど
(個室シャワーの足くらい?)
ずっっっとエロエロ。
しかも上品なんですよ。
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キャラが素晴らしい。
妻は気づいてるんですよ、最初っから。
すぐ気づく。
視線1秒で気づいちゃう。
(おそらくずっと前から気づいていた)
妻がどんな気持ちなのか、
夫がどんな気持ちなのかはわかりません。
想像することはできるし
きっとこうだろうと書くこともそりゃできますよ。
でもしたくない。
せっかく2人が押し殺している、相手を傷つけないようにしているのを、僕が明かしてしまいたくない。。
(なにそれ)
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女性映画でもある。
けしてよくあるゲイ2人に挟まれた女、ではない。
変に理解があったり
異常に差別的だったり
途中で映画から消えたり
最終的には急に味方になったりと
ゲイ映画の中で便利に使われる女性キャラなんかではない。
ひたすら自分の意思で強く美しく生きる。
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若い女性客が布を選ぶときに
「このピンクの布はどうですか?」と聞くと
若い女性客は
「ピンクかぁ…」的な感じで結局布を選べずに店を出ていく。
そこでこの映画のタイトル、青いカフタンが効いてくるわけですよ。
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終盤、僕は「さっさと青いカフタン作れよ!」と思っちゃってました。。
夫が全然青いカフタンを完成させねーわけ。
何をしとるんだ、サッと仕上げて他に大事なことに集中すべきだろーよ、と。
浅はか!俺!
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ラストネタバレは以下に!
青いカフタンは妻の死装束用でした。
若い頃に結婚式ができたなら青いカフタンが着たかったって妻は言ってたもんね。
夫は客に売るようだった青いカフタンを妻の葬式で妻に着せるつもりでずっと手元に置いていたんですね。。
「もうミシン使ってください!」って思うくらいの繊細で細かい刺繍。
気が遠くなるほど手間がかかる。
それを妻の死装束に。。
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妻の友人が亡くなったとき 伝統的な葬儀で送られる彼女を見て 「彼女は悔しがってると思うわ。ダンスが好きだったから」と嘆いていた。
おしゃれで先進的だったのにあんな最後だなんて可哀想だ、と。
夫はそれをちゃんと聞いていたんですね。
妻が死んだ後、思考停止したような慣習に沿った葬儀から棺に入った妻を脱出させる。
白装束を脱がして妻に青いカフタンを着せる。
そして夫と若い職人のふたりで、棺を担いでいく。
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妻は死の直前、夫に言っていた。
「愛することを恐れないで」
↑これもどういう意味かは決めてしまいたくはない。
そりゃきっとこういう意味だろうというのはある。
夫と若い職人の関係を妻はめちゃ気づいていたんだから。
だけど、この彼女の美しい言葉の意味を、僕が勝手にこうだろうと決めたり予想したりしたくないんよねぇ。
それくらいにこの妻がめちゃくちゃ1人の人間として自立した存在だった。
素敵だったぁ。
素敵すぎるっていう難点もあるんだけど
ピンクの布がなくなったのを若い職人のせいにしたんだけど実は自分せいだったってのを気づいたんだけど隠していた事件、とかもあって 一点の曇りもない素晴らしい人物ってわけでもないことにしていて上手い。
ただ、それも後になってちゃんと謝るからね。
結局全然人間らしいわけ。
素敵なわけよ。
素晴らしい映画でございました!
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