盲ろう者が主演した世界初の映画 『フィーリング スルー』 アカデミー最優秀短編映画賞候補作 〜映画感想〜
この映画は盲ろう者が主演した世界初の映画とのこと。
ロバート・タランゴ(Robert Tarango)は実際に盲ろう者。
聴覚障害者として生まれ、映画が好きで夢は俳優になることだった。
しかし学生時代に視力も失ってしまう。
その後、ニューヨークのヘレンケラー国立センターで職業訓練を受け、カフェテリアで働き始めるも、俳優の夢はずっと抱いていた。
ある日、映画のために盲ろう者を探していた監督のダグ・ローランドがロバートと会い、数週間後、ロバートの映画出演が決定。
世界初の盲ろう者の主演俳優となりました!という流れ。
"The Feeling Through Experience"
この映画のようにバス停で盲ろう者の方と出会ったという体験を監督のダグ・ローランドも実際にしたそう。
そしてこの体験を映画にしたいと思い、ヘレンケラー国立センター と提携して盲ろう者の主演俳優を探して、俳優の夢を持っていたロバートと出会い、映画が完成。
世界の映画賞を受賞してますし、第93回のアカデミー賞最優秀短編映画賞の候補にもなってます。
上映時間18分の冒険
確かにね、すごくいいんですよ。
映像もいいんですが、淡々としつつも、
「どうやってコミュニケーションをとれば!??」っていうのがサスペンスになっているし、
それが成功した時に小さなカタルシスがあるし、
言葉もなく同じことで笑い合えるシーン(鞄にペットボトル入ってた…)は本当に平和な幸せなシーン。
盲ろう者ならではのコミュニケーションとしてのふれあい(手のひらに文字を書くとか、普段は手を握りあって手話で会話するようです)がより温かな人間関係を結ぶきっかけともなっていって、
上映時間18分なんだけどそこそこの冒険をしたような、何かを獲得できた感がありました。
何かってのは、「へこたれずに生きよう」っていう前向きな気持ちでしょうか。
この青年だってかなりきつい状況にある。貧困で帰る家もなく、友達の家を転々としているっぽい。
その彼が、自分よりも人生ハードモードっぽい男性と出会い、自分よりも全然人生を楽しんでいそうな姿を見て、
説教くさくなく、あたたかで明るい気持ちで前向きになれる。
続編希望
こりゃもう続編希望ですよ。長編希望ですよ。
アーティの恋模様見たいもん。
で、その場合気を付けてほしいのは(偉そう…)、アーティを単なるメンターとして使わないで欲しいんですよね。
まさかそうはならないと思いますが、単なる涙活コンテンツとして消費されない、盲ろう者のリアルな感情、生活、物語が見たいですね。
ぜひぜひぜひ、お願いします!
ネタバレは以下に。
ある夜、黒人青年が盲ろう者の男性と出会う。
この黒人青年は貧困で帰る家もなく困っているっぽい。
盲ろう者の男性は白状を持ち交差点でずっと立っている。
その男性に、路上生活者が近づく。
「小銭を…」
路上生活者は男性が持っているカードを読んで立ち去る。
手には「私は盲ろう者」のカードを持っている。
盲ろう者とは、視覚と聴覚の両方に障がいのある人。
聴こえないし、見えない。
男性は「バス乗り場へ連れて行ってほしい」と書かれたノートを見せる。
男性は自分の肘を青年に掴ませてバス停まで案内させる。
青年は戸惑いながらもバス停へ連れて行く。
男性はベンチに座ると、ノートを開きペンを走らせる。
「次のバスまでの時間は?」
「近くにコンビニは?」
青年は、聴こえず見えない男性にどうやってそれを伝えたらいいか一瞬困るも、
青年は男性の手のひらに指で文字を書く。
そして男性を連れてコンビニへ。
飲み物を選びレジに行くと、男性は財布を青年に託す。
青年は自分がほしいもの(ガム?)も一緒に買う。
「これも一緒に」と店員に言う。
もちろん男性には聴こえていない。
さらに青年は財布を返す前に、紙幣を一枚自分のポケットに入れる。
レジの店員はそれを見ている。
青年「盲ろう者なんだ」
もちろん男性には見えも聞こえもしない。
コンビニからバス停に戻るとちょうどバスが出たところ。
男性はバスの音も聞こえないのでそれに気づいていない。
二人でベンチに座ると男性はノートを書く。
「運転手に129丁目で降りると伝えて」
青年は男性の手のひらに「わかった」と書く。
男性は青年の手を握り、若々しい手を感じて
「若者よ」と言葉を発する。
そこからノートや手のひらの指文字を通して、お互いの名前を言い合ったりする。
男性「会えて嬉しい」
青年「俺もだ」
青年「なぜこんな夜遅い時間に?」
男性「デートだ」
男性はベンチで眠ってしまった。
青年は男性のノートを見る。
ノートには「96丁目はどこ」などの文字がいっぱい。彼の生活が読み取れる。
中には「キスしていい?」という文字も。
青年は遠く感じていた盲ろう者の男性を身近に感じる。
そして目を閉じ耳を塞ぐ。音は消え画面は真っ黒。
微かにバスの音が聞こえる。
来たバスをつかまえて二人で乗る。運転手に「129丁目で彼を下ろして」と頼む。
運転手は「わかった」とそっけない態度。青年は心配になり、「ちゃんとアーティを129丁目に下ろしてくれよ」と重ねる。
運転手は「わかってる、アーティを129丁目で下ろす」と諭すように言う。
おそらく、運転手にとってはいつものこと。アーティを129丁目で何度も下ろしている。
青年、男性の手のひらに「U OK (大丈夫だ)」と書く。
男性、青年の手のひらに「YOULL BE OK(君は大丈夫だ)」と書いて彼をハグする。
バスの乗客が暖かい視線を彼に向けている。彼はゆっくりバスを降り、見送る。
ポケットの紙幣を、寒い夜路上で眠っている男性のコップに入れる。
終わり
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