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図書館のお仕事紹介(16)福袋

福袋といえばお正月の風物詩ですが、最近では図書館でも「福袋企画」を取り入れているところがありますね。
図書館員が選んだ数冊を外から見えないような袋に入れて、封をしたまま借りてもらい、中身は開けてみてのお楽しみ、というわけです。

私の勤め先でも、数年前から福袋企画を続けています。

数年間やってみてわかったのは、福袋には人間のハートに火をつける何かがあるらしいということです。

今まで誰も借りなかった本でも、袋に詰めて「福袋」と書いただけで飛ぶように借りられていきます。年によっては企画初日の午前中にほぼなくなってしまい、「なくなるの早すぎるから追加でもう少し作って!」と指令が出たことまでありました。

図書館の福袋なので借りたら返さなければいけないし、金額的にお得ということはないのですが、通常配架の本に比べて選書から袋詰めまで司書の労力が余分にかかっていることを考えるとコスパが良いと言えなくもありません。

作業手順

福袋は私たちにとっても楽しい仕事ではありますが、作業的にはまあまあ大変で、手順としてはこうなります。

テーマを決めて選書

最初は全部同じ「福袋」という名目だったのですが、やはりテーマがあった方が良いだろうということで、最近は各袋ごとに違うテーマを決めて選書しています。
たとえば「世界を旅する」「温泉でほっこり」「今日から新しいことを始める」「動物の赤ちゃん」「和の伝統美」みたいな感じですね。
急に言われてもなかなか思いつくものではないので、ふだんから書架整理なんかのときに「あ、これ福袋に良さそう」というものを見つけたらリストアップしています。
選書で心がけているのは「正月なのであまり不吉なものは避ける」「誰が借りるかわからないので賛否が分かれるテーマも避ける」「期限内に読み切れるように文章の多いものは絵本や写真集を組み合わせる」「ふだん配架場所が離れているものや同じキーワードでヒットしにくいものを組み合わせる」といったことでしょうか。

リスト化してデータを管理

本が決まったら各袋ごとに通し番号を振ってリスト化し、中身のバーコードをコピーして、カウンターで開封しなくても貸出処理ができるようにします。

福袋の厄介なのは、OPAC画面上では通常の配架場所にあることになっているため(「福袋に入ってます」と表示するわけにいきませんからね)、何も知らない利用者から「この本、見つからないんですけど…」と言われたり、他館から取り寄せの依頼がかかったりすることです。
一応最新刊や人気の本も避けてはいるのですが、ふだん誰も借りない本のくせになぜかこういう時に限って問い合わせがあったりするので、そうなると一度決めた袋を分解しなければなりません。
いっそ割り切って福袋用の本は利用不可にする手もありますが、これはあくまでも遊びなので、今すぐこの本を必要としている利用者を優先しています。

袋詰めして展示

そして前日にはスタッフ総出で袋詰め作業です。
お揃いの袋に入れてテーマ名を貼り、館内の福袋コーナーに並べます。
ずらっと福袋が並んだところはなかなか壮観です。折り紙などで工夫してお正月らしく飾り付けもします。

利用者の反応

どういう福袋が人気なのか、すべての袋にフィードバックがあるわけではないので何とも言えないのですが、利用者が感想を寄せてくださった例を見る限りでは、あまり抽象的で思わせぶりなテーマやびっくりするような本が入っているものよりは、「お餅」というテーマでお餅の歴史とレシピの本が入っているような、わかりやすい福袋のほうが好評のようです。
自分が選書した袋が最後まで売れ残っていると「ちょっとテーマがわかりにくかったか…」とか「もっと別のテーマにするべきだったかも」とかクヨクヨしてしまいますが、「あの福袋すっごく良かったです!」と言ってもらえるとやはりうれしいです。

おまかせの気軽さや開けてびっくりのワクワク感も楽しみつつ、正月からハズレを引きたくないし、ガッカリもしたくない、という複雑な利用者心理に応えるのはなかなか難しいです。

みなさまには、本年もたいへんお世話になりました。
どうぞ福多き年をお迎えください。



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