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図書館のお仕事紹介(5)選書

「図書館で購入する本は、誰がどうやって選んでいるの?」という質問を受けたことがあります。実際には館種や規模によってさまざまなのですが、ここではよくあるパターンについてご紹介します。

① 選書担当者が選ぶ

一番オーソドックスな方法で、1人または複数の選書担当者を決めて、その人が選びます。
たいてい図書館には「選書資料」としていろいろな新刊案内や目録が送られてくるので、そこからピックアップしていることが多いです。
私は選書を担当したことはありませんが、担当者のアシスタントとして、特定分野の所蔵状況や利用実績を抽出したり、発注事務を補佐したりすることはよくあるので、選書担当者の苦労というのもなんとなくわかります。
「個人の独断で選んで、偏りがあるのでは?」と思われるかもしれませんが、はっきり言って、あります。もちろん図書館ごとに資料収集方針というのは決まっているので、その範囲内ではありますが、発注された本のリストを見ると「○○さんて、ほんと××関係が好きだよなあ」と思うことはよくあります。ただ同じ人がいつまでもやっているわけではなく、一定期間ごとに担当者は変遷するので、長い目で見るとバランスが取れていくようです。

② スタッフみんなで選ぶ

数は少ないですが、管理職からアルバイトまで含めて全員で選書する図書館もあるようです。
選書はすごい専門知識や経験が要りそうなイメージもありますが、経験者によれば意外と「ビギナーズラック」というのもあるそうで、未経験の新人アルバイトさんが「やるなこいつ!」「その視点があったか!」と唸るような選書をしてくることがあるそうです。
もちろん最終的にはその中から責任者が絞り込むことになります。

③ 会議でえらい人が選ぶ

特に高額な本や貴重書については担当者の独断で選ぶわけにはいかないので、選書会議や選書委員会のようなところで検討することがあります。
その場で何が話されているのか私のような下っ端にはわかりませんが、そのための下調べや資料作成をやらされることはあります…。

④ 見計い

要するに業者の提案による選書です。書店などからあらかじめピックアップした本が送られてきて、図書館はそれを見て必要なものだけを購入し、要らないものは返品します。
直接現物を見て判断できる、すでに本が確保されているので発注から納品までがスピーディ、専門書などはやはりその分野に強い書店の意見が参考になる、という利点があります。
ただ気をつけないと、業者に勧められるままに向こうが売りたい本を売りつけられるリスクもあり、選書の主体性という面では問題もあります。

⑤ 利用者による選書

たとえば大学などでは、学生参加の選書ツアーを開催しているところがあります。
みんなで大型書店に行って本を選んでくるのはなかなか楽しそうで勉強にもなるので、学生の方は機会があれば参加してみてはいかがでしょうか。
また購入希望(リクエスト)というのも、広い意味では利用者による選書と言えそうです。

⑥ 選書の方針もいろいろ

昔聞いた話では、「生きている作家の小説は買わない」という方針の図書館があったそうです。
「生きているうちは評価が定まっていないから」という理由なのですが、すごいですね。長生きの作家だといつまでも買えないことになります。普通の公共図書館だとそうはいかないでしょうが…。
私の勤務先は「芸術的なヌード写真集は買う」という方針なのですが、一度何かの間違いで微妙にポルノ寄りなものを買ってしまったことがあり、私も登録しながら「これっていけないやつなんじゃ…」と思った記憶があります。その本は誰も借りようとしない一方で、あきらかに閲覧されている形跡はあり、少しずつ場所が動いたりページが傷んでいるのがわかって気まずかったです。


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