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図書館のお仕事紹介(4)装備

また前回から大幅に間が空きましたが、シリーズ第4弾です。

装備とは

これはみなさんおなじみの、図書館の資料に背ラベルやバーコードを貼ったり、フィルムコーティングしたり、ハンコを押したりする仕事ですね。図書館業務のなかでもある意味一番わかりやすいものかと思います。

ただ装備作業にもそれぞれ目的があり、気をつけるべきポイントもあるので、個別にまとめてみました。

1、所在を明示する

要するに「本が迷子にならないように住所を書いて貼っておけ」ということですね。背ラベルに書いてある「請求記号」が住所にあたります。小さい図書室では請求記号を使わず、色別シールなどで対応する場合もあります。また辞書等の館外貸出できないものに「禁帯出」シールを貼ったり、別置されているとか、その他注意が必要なものに適宜目印を付けます。

目的はとにかく「利用者が探している資料を見つけやすくする」「誤配架を防ぐ」ことです。とくに狭い図書館で配架場所が複雑に入り組んでいたりすると、装備でわかりやすくしないと本がすぐ行方不明になり、利用者が怒りスタッフが泣きます。

2、図書館の所有物であることを証明する

本は図書館の財産であり、公共の財産でもあります。
さらに資産価値があり、売ってお金に替えられます。
したがって「盗難と横流しの防止」は装備の重要な目的です。

本というのはまったく同じものが何千部何万部と製造されて流通しているので、もし装備がなかったら、図書館の本が盗まれて古本屋に売られても「これはうちの図書館から盗まれた本だ!」と証明できません。
実際、蔵書印から盗難が発覚することはよくあります。
たいていの図書館では無断持ち出しを防ぐ対策(秘密です)をしていますが、それをくぐり抜けて盗まれる可能性はありますし、内部の犯行だと防ぎようもありません。

図書館の本から完全にその痕跡を消すのは至難の業なので、装備がされていることで、犯罪を抑止する効果もあります。

3、本を保護する

代表的なものはおなじみの透明なブックコートフィルムをかける方法ですね。ブックジャケット(カバー)の紛失防止にもなります。フィルムによってはUVカット効果もあり、本の日焼けを防いでくれます。
(余談ですが私は図書館で働くようになって、自分のUVカットも気を使うようになりました。窓際の本があっという間に劣化するのを見ていると、紫外線が怖くなりますね)

このフィルム貼りはよくネット動画でも紹介されていて、人前でやってみせるとみなさん「おおっ!」と感心してくれるのでちょっと得意です。まあ図書館員であれば高確率でできることですごく高度な技術というわけではないですが、ちょっとしたコツがあり、油断すると気泡やシワだらけになってしまうのです。定規を使って押しながら引っ張るのがポイントです。

フィルム以外にも、和紙を使って弱い部分をあらかじめ補強したり、付録のパンフレットなどが紛失しないよう足をつけて本体に貼りこんだりします。

貴重書は本そのものに手を付けないのが原則で、ハンコを押したりシールを貼ったりできないので、スリップという栞を挟んで情報を書きこんだり、保存箱をつくって保護したりします。

4、図書館を嫌いにならないように

世の中には図書館が嫌いな人がいて、その理由に装備を挙げることがあります。図書館はベタベタハンコを押したりシールを貼ったりして、本のデザインを台無しにしていると言うのです(一方で図書館独特のラベルやハンコを好きな人もいてくれるのですが…)。

それも一理はあるので、私が装備をするときは、なるべく無神経にならないように心がけてはいます。装備によって情報を覆わないのは基本で、小口や見返しにデザインがある場合はそこを避けたり、カバーをめくると本体の表紙に番外ネタがあったりするものはカバーを片側だけ留めて、めくってみられるようにしています。

まあ装備というのも図書館業務全体では単純作業として軽視されがちで、ボランティアさんに任せたり外注したりすることもあり、大量の本を一律の規格でやっているとそこまで気を使っていられないところもあるかもしれません。

私自身はけっこう装備の仕事が好きで、他業務の合間を縫ってコツコツ手を動かす時間を楽しみにしています。


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