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地元でも愛されるお土産「だるまぷりん」誕生物語

取材・文:品川結貴

Cultive291で2024年2月3日(土)、4日(日)と開催されたエンジョeat!!!に出店された「だるまぷりん」さんの誕生秘話を取材させていただきました。

―いのうえさんは永平寺にあるお土産屋さんだったのですよね。

井上さん:はい。永平寺という場所は1925年に京福電鉄が永平寺に通り、福井駅からの観光客が増えていき、その後は観光バスで団体客が多く来るようになり、多い時には年間で150万人観光客が来るような観光地となりました。バブル後には団体客が減りコロナ前では50万人程度。今では50万人を切っています。お土産物店は永平寺の門前町に複数あり、当店は永平寺からは少し離れた場所にあります。

―井上さんはどのようなご経歴なのでしょうか。

井上さん:私は高校までは福井で育ち、大学は大阪、就職も大阪でした。ものづくりの仕事に興味があったので、化粧品のOEMの会社に勤め、企画・提案から営業までの流れを経験しました。結婚を機に福井に戻りましたが、サービス業で土日休めない両親のもとで育ったので、働き方を重視して土日が休める医療機器の販売をやっていました。ただ、やはりものづくりをしたいという気持ちから、父にうちでやらないかと言われ、家業を継ぐことに決めました。

―自社製造を始めようと思ったきっかけは何ですか。

井上さん:当店は駐車場は広いのですが、永平寺からは少し距離があるためゴールデンウィークなどの繁忙期は賑わいますが、閑散期には不利です。さらに、永平寺から帰る道中にはたくさんの土産物店があり、そこで同じような商品を売っているので、自分のお店にくる頃にはすでに多くのお土産物を買っていることが多かったです。そのため他店舗との差別化が必要だと感じました。

―どのように自社商品を始められたのですか。

井上さん:最初は自社に製造する知見がなかったので、OEMでブランディングやパッケージにこだわった商品を作りました。ただ、細かい味など、製造の方と伝わらないこともあり、自社での製造の必要性を感じました。

―自社ではどのような商品を作られていますか。

井上さん:永平寺そば、だるまぷりん、ふくのいもなどを自社製造して販売しています。蕎麦はもともとお土産物店の2階で飲食をやっており、そちらで蕎麦を出していました。お客様より「越前そばと永平寺そばな何が違うの」と聞かれた時に明確に答えられなかったので、蕎麦について調べたところ永平寺町で蕎麦を栽培しており、福井でも土地によって蕎麦の味が違うそうで、その永平寺町栽培の蕎麦で作った乾麺と冷凍の生そばを販売しました。観光業だと売上の波が大きいので、ネット通販を開始することで、売上を平準化したいという考えもありました。

―蕎麦の販売からスイーツ事業に参入されたのですね。

井上さん:はい。スイーツ事業をやりたいと思い、永平寺により近い店舗を借りたかったのですが、この周辺には店舗としては廃業しているけれども自宅と同じ建物となっているところが多く、店舗が借りられませんでした。そこで当店の横にコンテナでお店を出そうと思いました。プリンにした理由はプリンは設備や技術などの参入障壁が低いという観点と、永平寺は三世代旅行客も多いので、お子様からお年寄りまで幅広く食べていただけるものと考えました。

―デザインやブランディングも素晴らしいですね。井上さんが作られたのですか?

井上さん:デザインは友人に作ってもらっています。だるまぷりんはデザイン性を活かしやすい商品として可愛いデザインを施した瓶を使用しています。実は恐竜発掘プリンとだるまぷりんは同時にアイデアがありました。東京でタピオカが流行った時にお店でも恐竜デザインのタピオカを販売したところ人気だったので、恐竜もやりたいと思いました。ただ、永平寺で恐竜はちょっと違うのではと考えていたところ、母に「だるま」はどうかという意見をもらいました。だるまと禅の関係性を知り、永平寺を知ってもらうためのモチーフとして良いと考えました。ブランディングは自分が考えています。

―地元のお客様にも人気な商品ですね。

井上さん:福井の人が永平寺に来るのは初詣が多いのですが、永平寺にはお守りはあるのですが、おみくじはありません。そこでお客様に「おみくじはないの?」と聞かれ、永平寺のおみくじにはならないですが、「だるまおみくじ」を作りました。そのほか金銀のだるまシールを集めるとノベルティがもらえる仕掛けなど、地元の方にも愛される工夫をしています。

―次に開発されたのは「ふくのいも」ですよね。

井上さん:はい。だるまぷりんは人気なのですが、やはり冷蔵商品で賞味期限も長くはないので、お土産品として難しい部分があります。そこで常温で、かつ福井の食材で安定して仕入れることができる「とみつ金時」を使った商品として「ふくのいも」を作りました。

―よくある商品開発では、まず商品をこだわって作って、その後にブランディングや営業・マーケティング、経営を考えるケースが多いですが、井上さんの場合は逆の考え方ですね。どのように学ばれているのでしょうか。

井上さん:福井だと情報が限られているので、流行っているお店の考え方を学ぶために2、3ヶ月に1回程度東京で開かれるスイーツ等の勉強会に参加しています。またまだ製造キャパシティーが大きくないので、高付加価値の商品としたいのでギフトショーなどの展示会にも足を運びます。

―すごい勉強熱心ですね。今後の展開はどのように考えられているのでしょうか。

井上さん:やはりここ最近は新幹線の延伸に向けた動きが大きいです。3月には福井駅内にお店ができ、だるまぷりん、恐竜モチーフのクッキー缶を販売します。さらに永平寺なので和菓子なども挑戦してみたいと思っています。


取材後記
「ものづくり」が好きとおっしゃる井上さんでしたが、考え方が「もの」に対するこだわりだけではなく、経営や営業・マーケティングの観点がしっかりとお持ちなのは、企画のご経験だけでなく、何よりもお客様はそのほかの人の話を熱心に耳を傾け勉強されてきた姿勢なのではと感じました。
「ものづくり」となると、とにかく良いものを作るという考えが先行してしまい、後から流通をどうするのかなどと考える事業者様も多くいますが、良いものだから売れるというわけではなく、しっかりと物流、商流、情報流を意識していけると良いと感じました。
素敵なブランドをどんどん作っていく井上さん、今後の更なるご活躍期待しております!


だるまぷりん

ふくのいも

■店舗概要

<ふくい南青山291>
・所在地:〒107-0062
東京都港区南青山5丁目4-41 グラッセリア青山内

・電話番号
Cultive291:03-5778-0291
Connect291:03-5778-0290

・営業時間
Cultive291(カフェ):9:00-21:00 (フードL.O.20:15/ドリンクL.O.20:30)
Connect291(ワークスペース):9:00-21:00

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