シアトルでアウトドア - ピンクサーモン編 -
その噂を耳にしたのはまだ日本にいた頃だ。シアトルに少しの間滞在したことがあるというチームのメンバーがデスクでそう口にしていたのだ。それは職場の休憩中の他愛のない会話だった。それは何気ない一言に過ぎなかったのだ。ただその一言はまるで壁にくっついたガムのように引っ付き、ぼくの頭から離れなかった。
釣り好きの自分としては聞き捨てならないセリフだった。あんな立派で美味しい魚が釣れるだって?
銀色に光り輝くサーモン。そんな魚を釣り上げた日にはそれはそれは幸福な気持ちになるに違い。きっと引きだって「ぐぐぐ!」なんてレベルじゃないだろう。「どどど!」って感じかもしれない。いや「だだだ!」って感じかもしれないぞ。想像しただけでヨダレが出てきそうだ (実際に出ていたかもしれない)。それからというもの、「いつかシアトルに行ったらサーモンを釣ってみたいな」という気持ちを心の奥底でそっとずっと温めてきたわけだ。
そしてついにその時が来た。シアトルではいくつかの種類のサーモンを釣ることができるが、その中でもピンクサーモンという種類が2年に1回シアトルの海にやってくる。このピンクサーモンは砂浜からでも手軽に釣ることができて、まだまだ釣りビギナーのぼくにとっては持ってこいだ。
今年はピンクサーモンが釣れる年。夏の間 (厳密に言えばおおよそ8月の後半から9月の頭まで) しか釣れないとのことだから、このチャンスを逃す手はない。というわけで、いざピンクサーモン釣りへ!
釣り場所
訪れたのはLincoln Park (リンカーンパーク)。ぼくが住んでいるWest Seattleの南側に位置する海沿いの公園だ。
仕掛け
みんな同じお魚を狙うだけあって、仕掛けもほぼ同じものを使っていた。大体ピンク色のプレートをつける。好みによって白だったりグリーンだったり。このプレートがヒラヒラする動きが、弱っている魚が泳ぐかたちに見えるようだ。それに釣られるかたちでサーモンがパクっとしちゃうみたい (面白い仕組みですね)。
そして針には宇宙人の刺客にしか見えないタコ型のルアーを追加でつけたり、つけなかったりという具合だ。ぼくは宇宙人の刺客にお世話になることにした。
このルアーを海に投げ込んで巻いたり止めたりをひたすら繰り返す。
いざ釣り開始!
釣り場に着いたのは朝の5:15ごろ。まだ夜明けが始まるか始まらないかといった時間帯であたりは真っ暗。それでも波打ち際には既に30人くらいの釣り人が並んでたのだから驚きだ (みんな早起きだこと)。
朝6:00頃になるともう肩と肩とがぶつかり合うくらいの大賑わい。このくらいの時間から周りも一斉に釣れ始める。まさに祭りといったところだ。ピンクサーモンがぴしゃぴしゃと浅瀬を跳ねながらばんばん浜に引きずり出される光景は壮観というほかなかった。これは誇張なくすごい。
なかなか釣れない…
みんなポンポン釣れている。右も左も大漁である。なんなら「いやー今日もいっぱい釣れた」とホクホクしながら帰り支度をする輩まで出てくる始末。
が、しかしぼくだけ釣れない…。
仕掛けも竿も周りと一緒なはずなのになぜか自分だけ釣れない。「日頃の行いが良くないからかな‥」と首を傾げながらしばらく竿を降り続ける。「ひょっとして宇宙人の刺客がぼくだけを陥れようとしているのか?」と余計なことを考えながら釣りを続ける。そうしているうちにあることに気付いた。
自分だけよく根がかりしているのだ。根がかりとは水中にある岩や木などに針が引っかかってびくともしなくなっちゃうやつだ。根がかりしないために「ルアーが海面に着く前に巻き始めた方がいいのかな?」と気づき、思い切って隣のよく釣れているお兄ちゃんたちに質問してみた。
と兄ちゃんたちが言うではないか。もちろんこういったテクニックに正解はないだろう (正解があるとしても海の中だけだ)。けれど、少なくともみんなそれで釣れているのなら試してみる価値はある。よし、言われた通りにやってみよう。
いよいよ…
試してみること3分。そしたら、いやはや。
釣れた!嬉しかったーーー (笑)。
「自分だけが釣れていない」という変な緊張感から解放されて、どっと肩の荷が降りた。周りの兄ちゃんたちもおっさんたちも「イェーイ!」と言いながら拍手して祝福してくれた。きっと釣れていないぼくのことを気づいて肩越しに案じてくれていたのだろう。うぅーーーみんな優しすぎる。
まとめ (る必要もないのだけど)
海には深さに応じて層というものがある。表層、中層、低層みたいな。この層を"タナ"と言ったりするわけだが、もちろんお魚がいるタナを狙わないと釣れる魚も釣れないというものだ。
冷静に振り返ってみると、ぼくはおそらく魚がいないところ (タナ) でずっとルアーを泳がしていたんだろう。そりゃー自分だけ釣れないわけだよ。今回は魚がいる"タナ"を探す重要性というものを身をもって学べた釣りとなった。
念願のサーモンを釣った感想はというと…
いやーーーーーー感動した。サーモン釣るためにシアトルに移住してきた自分としては(違うだろ)感慨深いものがあった。ちなみに引きはというと、「どどど!」って感じだった。そもそも「ぐぐぐ!」と「だだだ!」の違いもよく分からないというツッコミだけは勘弁してほしい。まあサーモンが釣れたから、何はともあれよかったということにしよう。
釣ったサーモンには筋子が!これを醤油・みりん・酒で漬けるとおいしい酒のつまみになりましたとさ。
それではどうも。お疲れたまねぎでした!
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