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就職するならベンチャーか大企業か、という話

「そういやさ、なすびさんDoorDashに転職したんだってさ」

ぼくの元上司 であり今でもよくお世話をしてくれている長ねぎさん (ということにしておこう)はドライブしながら、助手席に座るぼくにそんな話を振ってきた。なすびさん、というのはAmazon本社で長いことプロダクトマネージャーで活躍していたぼくらの知り合いだ。なすびさんはぼくらが仕事をしていた (ぼくは今でもその分野で仕事をしているわけだけど) セールの機能開発においてスター的な存在だったので、「次はそんな会社に行くんだ」と驚き半分、でもどこか腑に落ちたような不思議な感覚に陥った。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれないけれど、DoorDashというのは2012年に創業されたスタートアップで、フードデリバリーのサービスを提供している会社だ。フードデリバリーサービスと聞くと、日本だったらきっとUber Eatsが思い浮かぶに違いない。DoorDashはそんなUber Eatsも差し置いてアメリカでは最大のシェアを集めているみたい (現時点で)。つまり早い話、イケイケのスタートアップに転職した、という話である。もう上場しているし創業10年にもなるわけだから"スタートアップ"というとしっくりこない人もいるかもしれないけれど、いずれにせよ"飛ぶ鳥を落とす勢いの新興企業"と言っておけば収まりはいいはずである。

そういえば転職先としてシアトルのAmazon本社でもスタートアップ・ベンチャーの世界に飛び込んでいった同僚はまあまあいる。アマゾンジャパンでもちょくちょくいた。大きなプロジェクト運営やプロダクト開発をした先のチャレンジとして「もっと小さい環境で一から立ち上げたい」という気持ちが湧いてくるのだろう。その気持ちはとってもよく分かる。

ちなみに新人のプロダクトマネージャーやエンジニアの人で「わたし、boomerang "ブーメラン"なのよ」と自己紹介してくれた人が何人かいたのだけど、いつも「一体どういう意味なんだろう?」とモヤモヤした気持ちで反応に困っていた。そんなときぼくのしかめ面を見かねたのか「元々Amazonにいたんだけど、スタートアップに飛び込んでさ…でもなんか合わなくて結局戻って来ちゃった!」とわざわざ説明してくれた優しいエンジニアくんがいた。

なるほど、ブーメランのようにヒューッと戻ってくるというパターンがあるのか。そんな話を聞いているとスタートアップや大企業は遠いようで近いような感覚を覚える。

ベンチャーか?大企業か?

なすびさんやブーメランさんのことを思い出してるうちに、新卒の就活時に「ベンチャーに就職すべきか?もしくは大企業にすべきか?」みたいな話があったことを思い出した。もちろん最初から規模の大きい日本のクラシックな企業をターゲットに就活していた人にはそんなこと考えたこともないかもしれない。ただベンチャー企業への就職を考えた人、もしくはぼくみたいに実際に新卒でベンチャーに就職した人にはそんな話が耳に入ってきたり、自分で考えてみたりという人もきっといるんじゃないかと思う。「これから就活します!」という人にとっても、一つの考慮事項になるのかもしれない。

ベンチャーと大企業。この2つが天秤にかけられるのは、それぞれが相対するメリット・デメリットがあると考えられているからなんじゃないかと思う。

例えばベンチャーならざっと以下のような感じだろうか。

◆メリット
・経営者と近い距離で仕事ができるし、若いうちから多くの裁量が与えられる
・新規事業の立ち上げなどのエキサイティングな仕事ができる

◆デメリット
・仕事がヘビーでプライベートがないかも?
・会社のネームバリューがないと後々のキャリア(例えば転職の時なんか)で不利になることも?

大企業ならこんな感じなのかな。

◆メリット
・制度もしっかりしているし人材も揃っているから、安定して仕事ができるかも
・会社のネームバリューがあれば転職をするときなんかも潰しがきっと効くはず?

◆デメリット
・上にいっぱい先輩社員が詰まっていて、若いときは下積みばかり
・定形業務が多くて刺激少なめ

だいぶステレオタイプな感じかもしれないけれどこんなところだろうか。ぼく自身はフリービットというベンチャーに行った後、アマゾンという (人が言うところの) 大企業に転職したわけだ。ぼくは大学の就活時には「絶対ベンチャーがいい!」と思っていた方なので (詳細はこちらの記事に書きました)、ベンチャーか大企業かで迷ったわけではないけれど、こういう議論を今でもちょくちょく見るので思うところを書いてみる。

どっちがいいのか?

自分の経験から言えることは、「ベンチャーか大企業か」という切り口はあまりに大雑把だということだ。

例えば「ベンチャーなら若いうちから多くの裁量が与えられる」という点についても本当だろうか?正直こればっかりは会社やマネージャーに依存するのではなかろうか。ベンチャーだからこそ創業者・起業家の意向が強すぎて、自分で考える余地が与えられないということも十分に考えられる (そして実際にあるケースだと思う)。

また「大企業に入っておけば転職で潰しが効く」という考え方もどうなんだろう。やっぱり実力や汎用性のあるスキルがないと採用のチャンスは増えないんじゃなかろうか。もし首尾よく採用されたとしても、「この人肩書きだけじゃん…」とドン引きされた暁には待っている未来は暗いだろう。

じゃあどうすればいいか?

ぼくなりの結論を言うと、ベンチャーか大企業かという括りだけにこだわるんじゃなく、集めた情報をもとに直感で就職先を選ぶといいんじゃないかと思う。会社説明会やOB訪問などで会った人の印象、聞いた仕事の内容、などなどに自分の心がどう反応したかを観察して、その気持ちに正直になることだろう。「なんとなくあの会社行きたいな」という感覚で十分なのだ(もちろん面接時にはそれっぽい理由をいうことは求められるかもだけど、それはそれである)。

直感に頼るというと随分乱暴な話に聞こえるかもしれない。でも直感に頼るというのはある意味でとても論理的な行為だと思う。

人は直感に刺さる何かに直面したときには"ピンと来る"ものだ。なぜ人はピンと来るのか。それはこれまでの人生で経験してきたことや考えてきたことを踏まえて今自分が探しいている答えが(たとえそれが断片だとしても)あるからだ。Aで成功して、Bで失敗して、Cで中休みして、その先にDに求めていたものに偶然でも辿り着いたとき、人は「これかも」と直感で気づくものなんじゃないかと思う。ピンと来るときはいつだって自分が次にやるべきことを告げられているんだと思う。それは仕事でもプライベートでもなんでも。

ベンチャーか大企業か?みたいな話は部屋探しに近いかもしれない。部屋のサイズとか部屋数とかの条件は考えるべき大事な事項ではあると思う。なんだけど最終的に部屋を決める時って、(多くの場合)その部屋を実際に見て(たとえオンライン上だとしても)ここいいな!と思ったところに直感で決めるものなんじゃないだろうか。少なくともぼくはそうだったなーという感じです。

今日はそんなところで。一時帰国中に訪れた鎌倉にて。建長寺ってほんとうに素敵な場所だなと。

それではどうも。お疲れたまねぎでした!

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