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FUKKO STUDY#1 レポート②SNSによるボランティア募集

FUKKO STUDY#1のイベントレポート、
続いては、岡氏智美氏(館山市地域おこし協力隊)、明城徹也氏(NPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク JVOAD)、木村充慶氏(FUKKO DESIGN理事)による、SNSによるボランティア募集についてです。

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木村
台風15号、19号の時に千葉県館山市を中心に行ったCtoCのボランティア、
つまり、ボランティアを必要としている人が、行政や団体・NPOを通さず、SNSを使って直接ボランティアを募集する、という取り組みにお話しさせていただきます。

僕は、災害が起きたらすぐに被災地に向かうんですが、その時にまず重要なのが、現地の情報に精通している人とのネットワークです。
たまたま館山に住む友人から紹介されたのが、館山市地域おこし協力隊の岡氏さんでした。岡氏さんは映像のディレクターもされていて、台風の直後も、メディアが入っていない地域の状況を動画で撮影し、その場で編集して配信するという活動をされていました。

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岡氏
岡氏と申します。よろしくお願いします。
台風直後、あちこちを回っていたのですが、全く情報が入ってこない地域もまって。例えば、南房総市の最南端にある米良(めら)という地域は、どうも大変そうだということを聞き、言ってみたら報道陣もまだ誰も入っていなくて被災された人達が、どうしようか……とポツンと立ち尽くしているような状態で。それを取り急ぎ情報発信しようということで、映像を撮って配信しました。米良だけではなく南房総全体がひどい状態になっていて、ビニールハウスも壊滅的で、ゴジラのような大きな怪物にぺしゃんと潰されてしまったような状態でした。

動画で被災状況を発信すると同時に、ボランティアや物資が必要だという情報を発信してほしいといった要望も出てきて、どうしたらよいものか、というところで木村さんからちょうどお電話をいただきました。

木村
被災者は、支援を必要としている人はいるんだけれども、自分で情報を発信する、ということを考えていないのではないかと感じました。だから外の人に被害者情報やニーズが伝わらないのではないか、ということです。
それと、ボランティアセンターのような公的な支援窓口だと、どうしても泥かきなどの生活再建が基本なので、仕事に関することなどは、後回しにされてしまうケースもあるんです。もちろん、それはそれで仕方ないんですけれど。

そこで、今回取り組んだのが、「bosyu」というSNSのサービスを使った「お困りごと発信」です。もともとは、いろんな仕事の求人を簡単に画像化して募集するためサービスです。Twitter や Facebookと連動しているので、拡散しやすいし、本人のアカウントに飛んですごく簡単に連絡がつくんです。
さらに、困りごとが解決されたら、「応募済み」表示ができることです。被災地支援で大きな問題は、古い情報がアップデートされないままに拡散されることです。例えば、飲料水が足りない、という情報をSNSで発信すると、さばききれないほどの飲料水が届き続ける。状況は刻々と変わるのに、古い情報がずっとSNS上に残り続けてしまうんです。「bosyu」では募集が済んだものは「応募済み」と表示される機能があるので、すごく便利でした。

このbosyuを使って、軽トラの運転や、ビニールハウスの撤去、倒木の処理や、馬好きの人に観光牧場の片づけをしてもらう代わりに、乗馬も体験できる、というボランティア募集もやりました。

岡氏さんはそれを、“ゆるボラ”と名付けたんです。ボランティアしたいという気持ちはあるけど、実際にはなかなかできないという人は、被災地の中にもたくさんいるので、そういう人たちが、何かできる仕組みがある、ということが浸透していったと思います。

簡単に3つのポイントにまとめると、
①ボランティアを自分ごと化
先ほどの「馬好きさん募集」のように、ターゲットである対象、普通の人も共感できるようなポイントを作ることで、敷居を低くすることができる。

②新たなボランティアの創出
興味のあることを通じて今までボランティアをしたことがない人がどんどん来るようになる。

③被災者との直接コミュニケーション
通常は、ボランティアセンターに当日行ってそこで現場を割り振られますが、bosyuでは、事前に被災者本人とやりとりがあるので、コミュニケーションが生まれる。

さらに面白い動きもありました。“逆bosyu”です。私はこういうことができるのでボランティアさせていただけませんか、というような投稿が始まったんです。私たちの想像してなかった動きが生まれたので面白いと思いました。

最終的には300人以上の人がボランティアに参加して、ニュースなどにも取り上げられました。台風19号でも同じような取り組みをやっていて長野とか福島、千葉でも活動をしました。以上が、活動の報告になります。


次に、明城さんの活動についてお話ししていただきます。

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明城
JVOADの明城です。少し話が変わりまして、NPOの被災地支援について少しお話をさせていただきます。今までもよく出てきた“ボランティア”という言葉からイメージされるのは、個人で被災地へ行って泥掻きや家の片付けをするようなイメージが強いかと思うんですが、実はNPOなどの組織として支援に入る人達も“ボランティア”の中に含まれていると解釈をしています。災害支援の経験を持ったところ、福祉や街づくりなどの専門的な分野の知見のある団体も現場に入って支援活動を行います。

例えば避難所の中では、生活環境の改善、ペットの問題、要配慮者への支援。避難所以外でも、子供や障害者への支援、物資の支援、仮設住宅の支援なども行われるようになっていきます。様々な分野や段階への支援があり、お互いが情報共有しながら進めていくというのが最近の NPO の間での取り組みです。

そこでは、活動報告だけでなく、そこで見つかった新たな困りごとニーズの情報、さらには支援の申し出に関する情報。それを共有することでお互いの団体が繋がって物事を解決していくという状況があります。

台風15号の時にも情報共有会議が行われました。ニーズの8割、9割がブルーシート張りだと言われていたので、行政の方でも自衛隊や消防、建設業協会に声かけをしたり、熊本地震以降、屋根のブルーシート張りを専門でやってきた NPO 団体も千葉県内に入ってきていたので、情報連携をどうするか、さらには圧倒的な数の屋根が破損した家があったので、その数にどう対応していくかを検討していきました。ブルーシートを張れる人は全国でそんなにいないので、今回の千葉に限らず、次の災害に備えてどう解決していくかも、もっと考えていかないといけません。ほかにも、在宅被災者の状況把握が困難だという課題も、一つずつ解決して行くことが必要なんだろうなという風に思っています。

木村
ありがとうございます。かなり色々なニュースでもボランティア不足ということが訴えられていると思いますが、どのように感じますか?

明城
最初はどこも足りない、足りない、という状況が起きます。少し経ってくると足りないところと足りているところの差が出てきます。ですので、その辺の情報発信の仕方であるとか伝え方に気をつけないといけないと思います。

岡氏
どこがボランティアが足りていないかは、被災者本人は大変な状態なので、その渦中で、足りないと声をあげることは難しい。自分でなんとかやろうとはする、というのが現地の状況、実状だと思います。

明城
やはり現場に行くと声をあげていない人がたくさんいたり、ボランティアセンター側にはニーズがない、とは言っても実際困っている人はたくさんいるということはあって。地域が発信しているのか、ボランティアセンターが発信しているのか、行政が発信しているのかで質が変わってくるということもあると思います。

岡氏
私も今までは、ボランティアに行ったこともなく、いきなりボランティア団体に登録して行くのってハードルが高いなというのが正直な自分の気持ちだったんです。でも、SNS だと個人間の繋がりなので困っている人が実際に助けたい人と直接連絡を取り合って、来てくださいという個人のニーズをしっかりと伝えられるところがいいなという風に思いました。

木村
直接繋がることで、関係性が深まって、一週間後また来ますとか一ヶ月後、来年また復旧したらボランティアではなくて遊びに来ます、というような流れができたらいいですよね。
一方で、課題もあると思うのですが、明城さん、いかがですか?

明城
最近よく聞くのが、ボランティアセンターに行きづらい方もたくさんいるのではないかという話です。それはボランティアセンターというものが認知されてきたからともいえると思います。だからこそ、安全面の確保や、保険んについて、大変な作業をさせてはいけないとか、格好はこうだ……というような“お作法”のようなものが出てきて、それが少し堅苦しいと思う人も出てきているのではないかとも思っています。

逆に、CtoCの今回のような新しい動きが出てきたことによって、堅苦しくないような形でこの良さを活かしながら安心安全なボランティア活動へ繋げていけるよう、最善の落としどころ見つけ、課題を整理していく必要があると思います。

木村
ボランティアセンター自体も弱者を助けるという点では一番大事なところだし、多分両方で共存していくという形ができればいいかなと思いました。今、より使いやすく、より被災者のことを考えたサービスをFUKKO DESIGNで作っていこうとしていますので、今後もよろしくお願いします。
皆さま、ありがとうございました。

文:Aiko TSUJI
編集協力:FASHION HEADLINE
写真:ボラ写プロジェクト

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続いて次回は、今回の台風で初めて店舗の休業情報をつぶやき話題になったローソン公式Twitterのあきこちゃんの中の人を務める白井明子さんと、映画『天気の子』の気象監修をした気象研究官の荒木健太郎さんが登場。災害に対する日頃からの備えをテーマにトークセッションの模様をお届けします。

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