見出し画像

第20回Book Fair読書会@新宿~でみが心に棲みついた~

家で読書する時、なぜかホットコーヒーと白湯を交互に飲んでいます。ふっかー復活委員長です。

Book Fair読書会、今回は初の新宿駅付近での開催でした!!

かねてからやりたかった新宿で、第20回目の節目を迎えられたことに感謝です。

ちなみに終了後、参加者の方のひとりが「(会場近くの)紀伊国屋書店寄って帰りま~す」と言ってくださったことが、主催者としては計画通りでした(笑)。

ニャンちゅうさん(15)→三浦しをん『お友だちからお願いします』だいわ文庫

画像1

昨年4月に、Book Fairは本のプレゼント企画を行いました(同月にええやん朝活読書会さん、夢想読書会さんも開催)。ニャンちゅうさんは今回、そこで私が贈った本を紹介してくださいました。

この本は、日常の何気ないつぶやきを赤裸々に綴ったエッセイになっていて、ニャンちゅうさん曰く「とっかかりやすい」。

三浦さんの著書は未読だったため、「どんな人なのかな」「題名通り、著者の自己紹介的な本なんだな」と読み進めたそうです。


「エサを与えないでください」という項では、いくら「ちょっとずつ」と言ってもキャベツを一気食いするウサギに、実家で食べ過ぎる三浦さん自身の姿を重ねます。

こんな風に、『舟を編む』などで著名な作家さんだけれど、読者と変わらないことを思っていたりもする。心の距離が縮まり、「お友だち」になれそうな予感がする一冊です。ふっかー個人としては、「花粉症」のエピソードが面白かったですね。

スペインでは4月23日が『サン・ジョルディ』の日と呼ばれ、親しい人にバラの花と本を贈る風習があります。本を愛する皆さんも、今年は意識してみてはいかがでしょうか?

KENさん(3)→浜口倫太郎『AI崩壊』講談社文庫

画像2

AI「のぞみ」によって医療が画期的に進歩した2030年、人々は理想の暮らしを手に入れたかに思えた。しかし、何者かの手によって「のぞみ」は暴走、遂に〈命の選別〉を始めた。止められるのは開発した天才科学者・桐生のみ…。

たった3行なのに激動のあらすじ。KENさんが、映画でも話題のエンタメ小説を紹介してくださいました。

KENさんの印象に残ったポイントは4つあるといいます。

1.法の壁に阻まれて「のぞみ」の認可が遅れ、病の妻を救えなかった天才科学者・桐生浩介の苦悩(彼がテロリストの濡れ衣を着せられ、逃亡するアクションものとしても楽しめる)

2.AI導入はメリットが大きいが、それによって職を失う人が出てくる

3.データ収集や、小型飛行ロボット等による「監視社会」の怖さ

4.犯人が「のぞみ」を暴走させた理由に見る、日本社会の問題点

読みどころがとても多いですね。個人的には、全ての企業が採用基準をAIに委ねたら、どうなるの…と思ったりします(これもある意味、命の選別?)。

考えてみれば2030年なんて、あっという間ですよね…

ヒロさん(12)→畑中三応子『ファッションフード、あります』ちくま文庫

画像3

第三次タピオカブームが辿るのは、「ティラミス」ルートか、それとも「白い鯛焼き」ルートか…こんな問いかけから始まったヒロさんのプレゼン、今回の紹介本は食の流行年代記です。

この本によると、ブームとなった食品は意外と廃れることなく、一般的に定着している傾向があるようです。特に古いと言われないティラミス・もつ鍋・豆乳なども、実は1980~90年代に「ナウかった」と聞くと、ちょっと不思議な感覚になります(←筆者は平成初頭生まれ)

例えばファッションなら、一世を風靡した装いが「終わり」、やがてリバイバルする。でも食に関しては牛丼や寿司のように、終わったブームが地層のように堆積し「文化」「伝統」になっていく特徴がある。

タピオカは生き残れるか(文化になれるか)!?と予想するためのヒントとしても、楽しめる本かもしれません。

紹介後は、「(最後の一粒まで吸える)ストローが発明」「飲んでいる人を見るのが面白い」「黒糖タピオカを考えた人は凄い」など、タピオカトークに花が咲きました。

tsukasaさん(初)→糸井重里『ボールのようなことば。』ほぼ日文庫

画像4

「3分の1くらいは腑に落ちたけれど、3分の2は、この人何言ってるんだろう?と思ってしまった」というtsukasaさん。読めば読むほど味が出る、糸井重里ワードの世界へといざなってくださいました。


この本は、コピーライターの糸井さんがこれまでに発信してきた言葉を厳選し、まとめたものです。多様な人と出会い、多彩な仕事を作ってきた方の言葉には、やはり容易には理解できない深みがあるのでしょうか。

他方ネットレビューでは、「シリーズが進むにつれてわかってくる」との声もあったそうです(ふっかー個人としても、2作目『ふたつめのボールのようなことば』が一番印象に残っていますね。「正解病」の話とか)。

ちなみに、糸井さんはコロッケ(芸人さんではなく食べ物の方)をたとえに出す頻度が高いのだとか。

そしてtsukasaさんは、印象的な言葉として「やらない言い訳をして、いつかやる、と言う人は絶対にやらない」「好きな人に会えるのは、好きな人が好きな場所」をあげてくださいました。

仕事に行き詰まっている人がパラパラとめくれば、何かしらのアドバイスが見つかる本ではないでしょうか。

◆tsukasaさんが不定期で開催されている読書イベント『Flügel』のホームページはこちら!


じゅんぺいさん(10)→筒井美希『なるほどデザイン 目で見て楽しむ新しいデザインの本』MDNコーポレーション

画像5

最近、デザインの勉強を始めたというじゅんぺいさん。あらゆるデザインには、「受け手に対して何を伝えるか?」という意図が込められており、この本はそれを意識して見るきっかけになったとか。

料理本の関するデザインを例にとると、「初心者向けの入門書として、長く使ってほしいのか?」「普段から料理をしている人に、新しいことを提案するのか?」の二択だけでも大きく変わります。

前者なら、分量を細かく明記しつつ、完成図は大きく載せる。後者の玄人向けには、あえてレシピの内容はほぼ書かず、「挑戦したくなる」ような彩りを重視する、という手法があるそうです。

電子書籍で実際のページを見せていただきましたが、一目瞭然。本のデザインが目を引くかどうかは、とても繊細な要素によって決まるのだと改めて思いました。

更に、著者の後輩たちによる「惜しい!」デザインが紹介されている点も面白いですね(「悪い」ではなく、「惜しい」のがポイントかと)。

じゅんぺいさんはこの本を読んでから、すぐにデザインのセンスが上がった…とまでは言えなくとも、街や商品の見方は明らかに変わったとのこと。

「おしゃれ」「奇抜」といった言葉で片付けがちなデザインを、創り手視点で考えてみたい方にいかがでしょうか。


k-yamaさん(初)→ヘルマン・ヘッセ(訳:実吉捷郎)『デミアン』岩波文庫

画像6

私の記憶が正しければ、Book Fairに岩波文庫が登場するのは初(意外!)。ヘッセは、ノーベル文学賞も受けたドイツ生まれの作家ですね。

初参加のk-yamaさんは、「どんな人間も、真の天職は自分自身に到達すること」と、いきなり素敵なフレーズを披露してくださいました。

登場人物は、シンクレール(ふわっとした少年)と、彼にアドバイスをくれるデミアン(しっかり者)。例えばシンクレールが仕事に悩んだ時、デミアンは「自分本位でやればいいんだ」と助言します。

k-yamaさんは、デミアンの「僕たちの中に誰かがいて、それが何でも知っていると心得ておくことはとてもいいことだよ」という言葉が、特に印象に残っていると話します。

自分がやりたくないことを無理に頑張っていると、心身にダメージを受けがちです。そんな時k-yamaさんは、自分の中の誰かが「これは違うぞ」と方向転換しようとしてくれているのかもしれない、という感覚になるそうです。

そう思えるのも高校生の頃、『デミアン』の言葉に触れたからこそ。「ずっと自分の中にいる、心の恋人のような本」という紹介は、胸に響くものがありました。

こーせーさん→坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』KADOKAWA

画像7

読む前は、受験ノウハウが書かれていると思い「手に取ることはないだろう、という本の代表だった」とこーせーさん。しかし『ビリギャル』の内容は、いい意味で予想を裏切るものでした。

ストーリーは、「さやか」「さやかの母」「塾の坪田先生(著者でもある塾長)」の3人を軸に進みます。

さやかは入塾当初のテストで、「Hi,Mike」を「ひ、みけ」と読むなど、高校生としてはありえない解答を連発。しかし、坪田先生は「手強い」と感じると同時に、その素直さを評価しました。

先生と相談したさやかは、「ジャニーズのアイドルが通っているから」という理由で慶應大学を志望し、勉強を始めます。ただ、そこは「98%が合格できない」と言われる名門校。やはり一筋縄ではいきません。

そんな状況で、さやかの支えになったのは「信じてくれた」母の存在でした。母は、試行錯誤の末に「子どもの考えを信じ、どんな時でも味方でいる」と決めていました。

結果的に、さやかたち3人の子どもが自由すぎる行動に走り、傍から見れば「全員グレた」「家庭崩壊」。当然、周囲からは批判を受けます。それでも「うちの子はこんなに素敵です」と言い続ける母の姿勢は、少なからず合格につながったと言えます。

受験勉強を頑張った経験は、その後の人生にも活かすことができます。ビリギャルだったさやかさんは、教育関係の大学院に入り直すなど、今でも学び続けています。そうした後日談も含め、「ぜひ読んで知ってほしい」(byこーせーさん)一冊です。


ふっかー→服部昇大『日ポン語ラップのBー子ちゃん』このマンガがすごい!comics

画像8

表紙でB子ちゃんが断言しているように、「ラップが今、日本でもっともまともな音楽」だと信じ、この本を紹介します。

ラップというと「不良の文化」「洋楽の方がカッコいい」と思われがちですが、今回は日本語ラップのおすすめポイントを2つご紹介します。

ひとつ目は【自己啓発本との親和性が高い!】→人生の指針や覚悟を綴った本を読むと「あ!これ、ラッパーの○○が言ってた!」と閃くことがあります。

KREVA、SEAMO、RHYMESTER…自分を奮い立たせる「人生訓」のようなリリックが多いので、自己啓発本の「主題歌」としてラップはピッタリです。

ふたつ目は【ホームタウンへの愛を感じろ!】→日本語ラップの担い手たちは、地元をレぺゼン(代表)する意識が強い。一旗揚げたのち、故郷への感謝を込めてフェスを開くアーティストも多いですね。

彼らの歌詞を通じて地域の文化や、人々の郷土愛を感じることができます。特にstillichimiyaなどの「甲州弁ラップ」はおすすめです。

ちなみに、これらは直接この本に書かれているわけではなく、読みながら個人的に感じたことです(笑)。でも、ラップに対する先入観を、楽しく変えられる内容であるのは間違いなし。ぜひ、沢山笑ってほしいです!

私は、今脚光を浴びている『フリースタイルダンジョン』や『ヒプノシスマイク』については知識がなく、単純に好きなラッパーの曲を聴くだけです。しかし、自分のスタイルで問題ない、とにかく音と言葉を楽しめばいいと、この本に改めて教えられた気がします。

参加者の皆さん、本当にありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?