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【祝20周年】西嶋「伊坂幸太郎ジャパンならね、W杯で優勝することもできるんですよ」

伊坂幸太郎さん、小説家デビュー20周年おめでとうございます!!!

個人的には、『陽気なギャングが地球を回す』で伊坂デビューを果たしてから、今夏で14年になります。

そこで、昨年参加した「伊坂幸太郎読書会」後に書き殴った「伊坂幸太郎ジャパン」企画をリメイクしました。

サッカーが好きな方も、伊坂さんが好きな方も、両方好きな方も、両方そうでない方も(本当に?)、この奇妙な世界を楽しんでいただければと思います。

超余談ですが、私は伊坂さんの同級生(『絆のはなし』参照)で、元サッカー選手である浮氣哲郎さんと、Jリーグのイベントで一緒にボール蹴った記憶があります...多分!

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衝動の発端は、又吉直樹さんの『劇場』でした。

作中では、主人公がウイイレ(と思われるサッカーゲーム)のエディットモードで、文豪だらけのチーム作成にハマる場面があったのです。

「太宰と芥川が得点ランキングトップ」「トッティと競り合う三島、ロベカルを削る川端」「切り札は朔太郎」...実は恋愛劇としてかなり切ないシーンなのですが、サッカー好きとしては笑いをこらえきれませんでした。

そこで、「伊坂幸太郎(個人的に一番好きな小説家)のキャラでフォーメーションを組んだらどうなる?」という好奇心がムクムクと成長してしまい、四の五の言わずに勝負(by門馬さん→『陽気なギャングの日常と襲撃』)…したのが、2019年の5月!

完成したフォーメーションが、これだっ!

◆伊坂幸太郎ジャパン 4-2-3-1

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【GK】鯨(『グラスホッパー』)

人は誰でもシュートを外したがっている。GKにはセービングの技術は勿論、相手に「こいつはシュートが入らない」と思わせる存在感が求められます。

その点、大柄で冷静沈着、さらに対峙した相手を必ず絶望させるオーラを持つ鯨は、適任であると思われます。

失点に絡んでしまった仲間には、そっと『罪と罰』を手渡す気配りも発揮してくれることでしょう。

【右SB】雪子(『陽気なギャング』シリーズ)

私、オーバーラップの回数は有限なの。「雪子には今回、右サイドを守ってもらう(by成さん)」...サイドバックで重要なのは、やはり攻め上がるタイミング。

正確な体内時計を持つ雪子なら、計算され尽くしたポジショニングから、味方の走り込みにピッタリなクロスを供給してくれそう。

ポーカーフェイスでサイドを攻略していく様は、現実のサッカーで言えば内田篤人のイメージですね。きっと、魂のランクも爆上がりだ!

【右CB】成瀬(『陽気なギャング』シリーズ)

ロマンはゴール前だ。あの(騒がしい)ギャング集団をまとめる調整力は、まさに折り紙つき。迷わずキャプテンに任命したいと思います。何かと暴走しがち(守備を留守にしがち?)な雪子のカバー役にも。

右に走るフリをして左に走ったり、靴紐を結ぶ仕草でオフサイドトラップを撹乱したりと、サッカーは騙し合いのスポーツ。

「人間嘘発見器」と呼ばれる成瀬の特殊能力は、ディフェンス面で多いに役立ちそう(もはや審判をやってほしい)。

【左CB】千葉(『死神の精度』『死神の浮力』)

俺が、ヘディングで競るといつも勝つんだ。死神なのに、なぜか独特の安心感が魅力の千葉さんを起用します。気絶能力を使うのはさすがに反則!だと思いますが、人間離れしたポテンシャルをサッカーでも見てみたい。

また、彼はどこにでもひょっこり現れる神出鬼没の特性を持っているので、知らぬうちに相手ゴール前に出現し、ちゃっかり点を取るサプライズにも期待したいです。

ただ彼が試合に出たら、もれなく雨が降ってしまうのがネックですね…

※ちなみに、空中戦という観点では190cmの繭美(『バイバイ、ブラックバード』)を使いたかった。でも体重200キロは、さすがに半分くらい絞ってもらう必要がありますな。その類いの言葉、全部辞書から消してるだろうけど。

【左SB】兜(『AX』)

蟷螂の斧=中距離砲。家族の為に戦う恐妻家ファイターを左SBに。

サッカーでは地味なポジションの選手が、シーズンに一度くらいのペースで強烈なシュートを叩き込むことがあります(「年イチミドル」などと呼ばれる)。

この「影の殺し屋」も、普段は黙々とボールを繋ぎながら、勝負所で何か起こしてくれそうな予感がしますね。

ちなみに、深夜に魚肉ソーセージでたんぱく質を補給するなど、ライザップ的な体作りにも余念がありません。

【CH】常磐風我&優我(『フーガはユーガ』)

おまえたちに驚くサッカーを見せてやる。フットボール史上初の「試合中に入れ替わる双子」。どちらかをベンチに置いておけば交代枠の節約になるが、そんなセコい戦いはしたくない!

しかし、双子を活かすサッカーなんて◯カイラブ◯リケーンくらいしか思いつかない!

それでも、数々の困難を乗り越えてきた兄弟の連係プレーに賭け、ダブルボランチを任せます。

廃品回収のバイトをしながらサッカーを続け、日本代表にまで登り詰めた経歴も話題になりそう。

【右SH】キルオ(『ゴールデンスランバー』)

(急にシュートして)びっくりした?伊坂キャラ屈指の戦闘能力を持つキルオを右サイドに配置です。かつてザックジャパンでは、岡崎慎司がこの位置からゴールを量産(唐突に戦術的な話)。

キルオならば、名前の通りにキレのある動きでタックルをかわし、意外性のある一撃も見せてくれるのではないか!

常に不敵な笑みを浮かべ、仮に決定機を逃しても意に介さないであろう、メンタルの強さも買いたいですね。

その一方で、突然やる気をなくし、交代を要求してきそうな懸念もありますが...

【左SH】蝉(『グラスホッパー』)

世界から自由になるには、点を取ればいい。左サイドで猛威をふるうのは、群れない刺客。今回は自らがナイフになってもらいます。

後方から攻め上がる兜との、「昆虫殺し屋コンビ」で敵陣を制圧してほしいですね。

キルオ同様俊敏で、どんな相手にも怯まない負けん気の強さは魅力的です。報酬次第では、ポストプレーやニアでの潰れ役など「汚れ仕事」も厭わない、多分。

【トップ下】小津(『PK』)

勇気は伝染する。決定力も伝染する。殺し屋やギャングばかりのチームにおいて、唯一の本職。

実は『ラッシュライフ』の青山など、他にもサッカー選手はいるのですが、「キャラの濃さ」でどうしても見劣りします。

W杯予選の経験者であり、巧みなドリブル突破は頼りになります。性格も真面目でプロ意識は高く、推しも推されもせぬエースでしょう。

とはいえ、万全を期すために、PKキッカーは千葉さん(←最も脅迫とは縁なさそう)に託します。っていうかこのメンバー、半分以上誰かに脅されてる人じゃないですか(亡霊含む)?

【FW】久遠(『陽気なギャング』シリーズ)

オフはNZで羊と自主トレ。確か、イタリアかブラジルか、サッカーの本場では抜け目のないストライカーを「スリ」に例えていたはず。つまり、盗みの天才である久遠は、ワントップで間違いないでしょう。

上背がない分、ゴール前では駆け引きの上手さで勝負したい。小動物のようなルックスだから「嗅覚(いい位置にいるFWを誉める際の常套句)」という言葉も似合います。

それにしても、陽気なギャングは4人中3人が先発起用。思いっきり、自分の好みが出てしまいました。まぁ響野さんは、実況席でずっと喋ってればいいと思います。

【監督】陣内(『チルドレン』『サブマリン』)

監督が恰好良ければ、選手はぐれねえんだよ。指揮官は、家裁調査官から異色の転身を果たした陣内さんの出番です。現実のサッカーでも、元銀行員のサッリ監督が「サッリ・ボール」と呼ばれる攻撃的なスタイルで、活躍しています。

また、陣内さんの型破りな行動・言動は、人気のサッカー漫画『ジャイアントキリング』の主人公・達海猛監督を彷彿とさせます。一見無愛想でも、実はしっかりと「人を見ている」部分も共通しています。

きっと、奇抜な練習メニューや大胆な采配で、世界を驚かせてくれる...はず。例えば、仙醍キングスの山田王求(『あるキング』)を抜擢し、野球との二刀流を実現するとか。

ただ、あまりにエキセントリックだと、チームが混乱するかも。そこで、綿密なゲームプランを練ってくれそうな池野内征爾(『クジラアタマの王様』)にヘッドコーチ(参謀)をお願いしたいですね。

【マスコット】アイムマイマイ(『シーソーモンスター』)

ベストセラー絵本から飛び出し、サッカーチームのサポーターに。そののんびり平和主義な立ち振舞いが、速攻ファーストの風潮に波紋を投げかける。

なお、最近は「ちょいわるマスコット」ブームでもあり、そちらの役回りは謎のハシビロコウ(『クジラアタマの王様』)にお願いしたい。真の強者は、ベラベラ喋らず堂々としてるもんだよ。ね、響野さん??

【ホペイロ(用具係)】田中(『オーデュボンの祈り』など)

うん。そのスパイクなら、そりゃ、そう。「田中はスポーツできないからダメですか!?」という、熱狂的なファンの要望に応え抜擢。

普段は無愛想で選手とも距離を取るが、自作のスパイクを薦める(←違法?)時だけはやたらと饒舌になる。

きっとあなたも伊坂ジャパンに入れば、グルーシェニカーならぬ、スタンリー・マ「シューズ」を履かされるだろう。

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いかがだったでしょうか?

こうしてみると、伊坂作品はエッジが効いていながらも、読者の想像力を邪魔しない「弾力」があると思います。

答えを押し付けない柔軟さがある、とも言うべきか...

ちなみに、最近では「『砂漠』の西嶋ってJ2、J3辺りの熱狂的なサポーターにいそうなキャラだ」と感じるようになりました。なんでだろう。

25周年の頃には、もっとパワーアップした布陣を組めることを願いつつ、この企画を締めたいと思います。


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