見出し画像

本を継ぐもの~第47回Book Fair読書会~

2022年最後の読書会、にぎやかに納めました!

今回お借りした会場は、かーなーり快適な(どうりで年末しか借りられないわけだ・・・)レンタルスペースでした!

いい環境のおかげもあり、とっても開放的な雰囲気で語り合えました。
みんな思わず身を乗り出して聴いたり、人柄を伝え合える場面が多かった気がします。

そして、参加者の皆さんにはいつも準備や片付けにご協力いただき、本当にありがたいです!

来年も、楽しく読書会を続けていければと思います!

それでは、本と帯の紹介をどうぞ!
(ニックネーム横のカッコ内数字は、通算の参加回数です)

ヒロさん(22):佐藤究『テスカトリポカ』KADOKAWA

第165回直木賞・第34回山本周五郎賞をダブル受賞!!


◆本や帯の紹介
〈1〉闇社会を半端ないスケールで描く、エグい面白さのクライムノベル。
残虐なメキシコの麻薬密売人と、日本の医療界から追放された心臓外科医。危ない2人がインドネシアで出会い、恐るべき臓器ビジネスが始まる。その標的は・・・

〈2〉題名の『テスカトリポカ』とは、アステカ王国に伝わる神の名前。
「生贄の心臓を捧げる」神話と、現代を覆う野望が見事にリンクし、予備知識がなくても楽しめます。ページを捲る手が止まらん!

〈3〉麻薬密売人・バルミロの通称は「粉」。実はコレ、彼が得意とする拷問のスタイルなんです。
え、そんなこと考えるの?って怖さがあり、でも異様なカッコ良さもあって・・・。
決して僕はヤバい奴ではないですが(笑)、だらけがちな年末年始に喝が入る面白さです。

◆リアクション、雑談
・「粉」の拷問、気になって調べてみたら、北野武監督の映画で似たようなシーンがあるみたいです(ヒロさん)。

・参考文献に、磯部涼さんの『ルポ 川崎』が。参加者さんの中には、この本を連想した方や、積読している方がいました。

・偶然にも一昨日、ふっかーも本作を読み終えており、ヤバい奴疑惑が2人になりました。

カラシニコフさん(初):ハチミツ二郎『マイ・ウェイ 東京ダイナマイト ハチミツ二郎自伝』双葉社

M-1決勝2回の実力者。

◆本や帯の紹介
〈1〉今でも、新宿の『ルミネ The よしもと』でトリを飾る人気。プロレス愛を感じる企画も面白い。それでも「芸人って大変だな」と思わされる、苦労話の詰まった自伝です。

〈2〉インディーズの事務所立ち上げや、日比谷での野外単独ライブなど、色々やっているのにうまくいかない。さらに、2度も死にかけるほどの病や、家族との問題も降りかかる。

〈3〉一方で、「二郎会」の仲間たち(サンドウィッチマン・伊達さん、タイムマシーン3号・関さん、ですよ。さん等)や、大師匠・ビートたけしさんを始め、太田光さん、故立川談志さんの激励も彼を支える。芸人からの評価は高い。
あまりテレビには出ない方ですが、こういう人が、もっと日の目を浴びてほしい気持ちになりました。

◆リアクション、雑談
・カラシニコフさんはM-1に挑戦したことがあるそうです!
必要なのは「相方と、2000円と、スベる勇気」

・ライブの最前列を1万円にしたり、お笑いへの姿勢からもプロレス好きを感じる(カラシニコフさん)。

mayuさん(4):木下龍也『あなたのための短歌集』ナナロク社

2022年10月、『情熱大陸』に上陸した歌人。

◆本や帯の紹介
〈1〉木下龍也さんは、依頼者から届いたお題で1首つくり、「あなたのための短歌」として販売しています。
テレビで木下さんを知り、翌日にはこの歌集を買いに行きました!

〈2〉まず刺さった歌は「愛された犬は来世で風となりあなたの日々を何度も撫でる」。私も犬を飼ってるから「ずっとそばにいてくれるんだね…」と、エモい気持ちに。
別の人(依頼者)に向けられた言葉だけど、自分にも刺さる感覚が面白いと思いました。

〈3〉この本はめちゃくちゃ売れていますが、実は木下さんには印税が入っていません。そのお金で歌集を購入し、図書館などの施設に寄付する計画を進めているそうです。
また、送信した後の短歌は”依頼者のもの”になるため、木下さんは手元からデータを削除しています。自分の作品だからと執着せず、手放せるところも凄いと思いましたね。

◆リアクション、雑談
・この歌集には、死をイメージさせるものから、大喜利感あるネタ、思いの丈をぶつける言葉まで様々なお題が。

・mayuさん曰く「人の朗読を聴くのと、自分で読んでみるのとでは歌の響きも変わってくる」
ちなみに、ふっかーは「足のつくことに戸惑うこれまでは溺れるだけの海だったから」を推します〈真顔〉。

えみさん(6):エリック・ホッファー『波止場日記 労働と思索』みすず書房

えみさんが選ぶ、2022年の「大事にしたい」一冊。

◆本や帯の紹介
〈1〉今日は「心がざわざわしたときに読む本」を持ってきました。
哲学者であり、港湾労働者でもある人の日記です。

〈2〉この人って基本的に口悪くて、仕事の愚痴や「穿った見方」が多い。友達なら楽しいけど、家族だと困るかも(笑)。幸せをそのまま幸せとして、受け取れないところもあるのかなと。
日によって文章の長さはバラバラで、労働組合についてやんややんや言ってるときもあれば、「今日、積み下ろしでペアになったのめっちゃいい奴イェイ」みたいな日記もあって。

〈3〉でも、どこを見ても共感できるところがあって、自分が持っていた感覚を言語化してくれているような気がします。
このおじさんと、もしかしたら近い部分もあるのかな、と思えるのが面白いし、大事にしたい本です。

◆リアクション、雑談
・(質問)ざわついたときに読むとどうなる?一緒にイライラしたり増幅装置にならない?→毒はあるけど、読むと落ち着く!(えみさん)

・(質問)読んだきっかけは?→雨瀬シオリ『ここは今から倫理です。』で、エリック・ホッファーが紹介されていて、読もうと思いました。(えみさん)

・(えみさんから質問)よく読み返す本はありますか?→サミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』(カラシニコフさん)、マリリン・バーンズ『考える練習をしよう』(mayuさん)

・心がざわついているときは、何かにハッと気付かされる本が読みたい。普段の生活では、刺激に対して反応したり考えたりしないようになりがちだけれど、そこに一石を投じてくれる。(mayuさん)

デラさん(初)→緒方憲太郎『新時代の話す力 君の声を自分らしく生きる武器にする』ダイヤモンド社

なんと、サイン本です!!

◆本や帯の紹介
〈1〉著者は音声メディア『Voicy』の社長。イベントで緒方さんの話を聴いて、その様子や勢いに引き込まれました。
「話し方は、内容以上にその人の印象を決める」「毎日するからこそ、軽視せず磨き続けることが重要」と言われて、本当にその通りだなと思いました。

〈2〉この本では、すぐ使えるTipsはあまり紹介されていません。
むしろ、道のりは長いなと。自分の話を録音(録画)して「相手に伝わったとき」と「伝わらなかったとき」とを比較したり、自分が魅力的だと思う人物の話し方を実践してみたり。
絶対的な方法はないし、自分らしい話し方を身に付ける難しさを感じました。

〈3〉例えば、Voicyの(パーソナリティーである)伊藤羊一さんは、聴き手を鼓舞するように話しますし、ファッション系のMBさんの話は凄く論理的で、頭に入ってきやすい。
自分も参考にしながら、もっと話し方を磨きたいなと思いました。

◆リアクション、雑談
・(質問)”新時代”の意味とは?→画面越しで話す機会が増え、相手と目線を合わせられない中で、話し方の影響がより大きくなってくる時代ですね。(デラさん)

・教師、塾講師、芸人、噺家…話す職業の人々は、それぞれどうやってスキルを磨いている??

・(受講生?からの声)ヒロさんの「劇場型」本紹介が上手い!毎回楽しみ。

・結論で相手を引き付けて、反応を待ちながら話す勇気がない/昔はミラーリングが流行ったけど…わかる人にはすぐバレる/焦って先を読み過ぎているのかも?

せーやさん(5):辻村深月『かがみの孤城』ポプラ文庫

2018年、本屋大賞受賞作!

◆本や帯の紹介
〈1〉鏡の向こうにある断崖絶壁の巨城に集められた、7人の中学生。彼らは「オオカミさま」の言葉を信じ、願いを叶える”鍵”を探し始める。

〈2〉不登校になっていた主人公の「こころ」を始め、7人の中学生はそれぞれ学校に行けない事情を抱えています。
彼らが少しずつ辛い想いを吐露しあう中で生まれる共感や、話を聴いてもらえる環境の大切さに、ホロリと泣けてきました。

〈3〉昨日、アニメ映画版も観て、そちらも感動しました。小説との差もなく楽しめたので、どちらもオススメです。
あらすじから子ども向けと思われがちですが、大学生や大人にもぜひ読んでほしい(観てほしい)作品です。

◆リアクション、雑談
・他の参加者さんの友人は、映画を公開から1週間足らずで2回観に行ったとか!

・辻村さんの小説は、子どもの中の大人な部分を鋭く捉えた台詞が多いので、それが(声優さんによって)どう表現されているか気になる。

こーせーさん(39):ジェイムズ.P.ホーガン『星を継ぐもの』創元SF文庫

続編『ガニメデの優しい巨人』も面白い!

◆本や帯の紹介
〈1〉帯の通り、SFの凄さを感じた小説。まず結論ありきで詰め込まれた中身の細部に、科学的な説得力があるなと感じました。

〈2〉宇宙探査が当たり前になった時代。月で宇宙服を着た遺体が、木星付近では2500万年前の宇宙船が発見されます。
それらの正体を、進化生物学など色々な角度から分析し、推論が行われていくのですが、詳しくはネタバレなので言えません。

〈3〉1977年の作品ですが、今に違和感なく通じていたり、一歩先を行ったりしている技術の描写に驚きました。
特に、ブラックホールを人工的に発生させて、そこに落ちていくような感覚で推力をつくる…これは近いうちに実現するんじゃないかと思いました。
めちゃめちゃ納得させられるので、疑り深い人にこそオススメしたいです(笑)。

◆リアクション、雑談
・イーロン・マスクなど、海外の起業家が推薦している。子どもの頃に読んで、夢を思い描いているイメージがあります。(デラさん)

・読めば読むほど、魔法的な設定に頼らず組み立てられているとわかってきます。
また話のテンポもよいので、科学の知識がなくても止まらずに読み進めていけますね。(こーせーさん)

ふっかー(47):島田潤一郎『あしたから出版社』ちくま文庫

頑張ってる編集者は、ノリスケさんだけじゃない。

◆本や帯の紹介
〈1〉出す本の多くは、全国の書店数より少ない初版2500部。でもその一冊一冊に心を込めて、読者に届ける。
そんな”ひとり出版社”「夏葉社」を立ち上げた、編集者のエッセイです。

〈2〉著者は、紙の本は「メールマガジン」と「美味しいパン」のどちらに似ている?と聞かれたら、後者だという。
その理由は、本を情報の束ではなく、有機物に近い「もの」として考えているから。
そんな「ものづくり」の見習い職人として、自ら書店を回って本を売り込む姿勢や、その過程で紡がれる言葉には読者として感嘆します。

〈3〉正しさに囚われず、本に関わる人を楽しく支える”善い”読者でありたい。この本を読み、そんなことを考えました。

◆リアクション、雑談
・紙の本と電子書籍の使い分け、どうしてる??

・ひとり出版社の視点で見た出版業界のいいところ、残念なところ。

・以前、装丁家(菊地信義さん)のドキュメンタリーを観て、紙質への入念なこだわりを知った。ひとり出版社にとってはより大変な作業だろうなと思いました。(カラシニコフさん)

2022年の読書会に参加してくださった皆さん、ありがとうございました!
2023年も、Book Fairをよろしくお願いいたしますm(_ _)m

この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?