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ブランドは1日にしてならず

時間がコンセプトの「HINEMOS」という日本酒ブランドをつくっています。

ブランドはどうつくられるのか?

ブランドをゼロから立ち上げていると、1週間に一度くらい「ブランドってなんだ?、どうすればブランドになるんだ?、うううぅ・・・」となる日がやってきます。うそです。泣き叫ぶ日がやってくるのです。

本を読んで、ブランドの作り方を学んでみるものの、どれも抽象度が高かったり、個別性があり過ぎて、すぐに応用できなかったりします。

ブランドのミッションステートメントを確立し、普段の実務に落とし込む。それが難しい。配送ケースの形状ひとつ取ってみても、思い描くブランドに近づくために理想を選んでいたら、原価が爆発しますし、一方で妥協していたらブランドはつくれません。

この「ブランド」という最強に抽象度が高い言葉に日々苦しめられています。

いくつかブランドを形づくるものの大切なことのひとつに、「一貫性」という言葉あります。それはお酒の味のみでなく、ラベル、パッケージ、ケース、はたまた飲むときの体験まで、どのようにブランドに「一貫性」をもたせていくのか、ということです。

例えば、プロダクトをリリースした当初、酒質、ボトル、パッケージ、どれも妥協せずにつくったつもりでも、最後、カスタマーに届けるまでの過程で、ダンボールをつくることが遅くなって、妥協せざるを得ませんでした。

左上で、シックな色のダンボールを選んで発注したけれど、強度が弱く、割れてしまう可能性が高くなりました。ユーザーテストではカスタマーに手元に届くまでにダンボールの角が折れてしまいました。

しょうがなく、ぷちぷちで補強しました。一気に「HINEMOS」が目指している世界観が壊れてしまいました。さらにロゴを入れるだけでもコストがかかったのに、表面にヤマトの伝票を貼ってしまうとロゴが隠れて何の意味もなくなりました。

次は伝票を裏面に貼っても、ヤマトの方は伝票を上にして渡すので、カスタマーは玄関で手に取ったときに、何が届いたか分かりませんでした。

右下はキャラメル包みという包装の仕方ですが、頼んだぷちぷちのサイズが大きすぎて、なんとも不格好になってしまいました。

一方、いやいや配送ダンボールなんて関係ないでしょう、という気もしてきます。大切なのはお酒の味であって、ダンボールでもラベルでもなく、味や香りがすべて、ということです。万人が美味しい、という味が生みだせれば自然と評判が伝わって手に取られていく。それが理想な気がします。

そんなときに思い出すのが、アップルと日本のメーカーのスマートフォンです。ご存知のとおり、使っている部品やスペックはほとんど同じにもかかわらず、日本のメーカーは撤退が相次ぎ、iPhoneは世界中で売れました。アップルは世界観がある、とよくいわれます。

今度は「世界観とはなんだ?」という問いが生まれます。その「世界観」を考えると、スマートフォンの機能やスペックは関係なさそうです。アップルの製品を選ぶ人に聞いてみると、「世界観があるから」「クールだから」「スタイリッシュ」だから、という応えが返ってきそうです。

わたしは、結局「なんとなくよさそう」だから、選んでいるんじゃないのかな?という風におもっています。

だとするならば、その「なんとなく」手にとってみたくなる、その「なんとなく」はどうつくればよいのか?という問いに、つぎは行き着きます。

ブランド = 世界観 = なんとなく、全部、同義語っぽそうです。

ただ、その「なんとなく」を言語化して体系化できる人がいるならば、もっと日本から世界中で知られているブランドは出ていてもよさそうな気がします。

そう考えていたら、われわれは日本酒のアップルをつくりたいんだな、とおもってきました。なので、上述のダンボールの不格好さは「世界観」を壊してしまっているんじゃないか、という気がしたのです。

すべての過程において、「HINEMOS」を手に取っていただくときから飲み終わるそのときまで、ある種の「なんとなく」手に取ってみたいとおもう「世界観」を感じてほしい、そういう風に考えています。

3ヶ月ほど試作を繰り返して配送ケースを刷新しました。手に取った瞬間に「HINEMOS」を感じてもらえるように。配送しているときに、ケースに傷や汚れがつかないように、アパレルのZARAのケースを参考に、ケースを薄い透明フィルムで覆いました。伝票をそのままケースに貼ると、剥がしたらケースも破れるので、これなら透明フィルムと一緒に伝票を捨てることができます。

そうしたひとつひとつを改善して、理想のブランドに近づくべく試行錯誤しています。

「HINEMOS」の世界観

HINEMOS」は時間をコンセプトにした日本酒です。ミッションステートメントは「時間に寄り添う日本酒」。それぞれの銘柄の名前に「時間」を用いており、シーン設定を行っています。銘柄のロゴ(三角形)は、時計の時間帯を表しています。たとえば、SHICHIJI(7時)の三角は、7時〜8時をあらわしています。

SHICHIJI(7時)

種類:スパークリング
時間:PM 7:09  
設定:30代前半カップル
グラス:シャンパンガラス
場所:家
シーン:週末、夏のまだ明るい夜。家のキッチンで夕食を一緒に作りながら、スパークリングの日本酒、家にあるチーズやナッツをつまむ。

HACHIJI(8時)

種類:にごり酒
時刻:PM 8:21
設定:20代半ば女性3人
グラス:ステムなしワイングラス
場所:家
シーン:マッコリで野菜手巻き寿司。引っ越したお家で家主が初めてお客さんを呼ぶ。家主は桐島カレンのショップで働いている。

KUJI(9時)

種類:純米大吟醸
時刻:PM 9:06
設定:30代後半夫婦
グラス:赤ワイン用ワイングラス
場所:家
シーン:豪華に純米大吟醸とステーキディナー。今夜は夫が妻へのサプライズでステーキを焼く。妻の昇進祝い。シンプルにサラダと肉とじゃがいも。

JUJI(10時)

種類:デザートライスワイン
時刻:PM 10:18
設定:20代後半と40代前半男性(男子職業:アートディレクター)
グラス:デザートワイン用ワイングラス
場所:代々木上原 AELU
シーン:明るい年の差デート。食通の男性がお酒の楽しさを紹介。おしゃれだけど健全な雰囲気の食後。

REIJI(0時)

種類:赤色酒(黒米)
時刻:AM 0:01
設定:20代後半女性2人
グラス:ワイングラス
場所:駒沢公園公園付近の隠れ家BAR
シーン:30歳間近、夜の隠れ家的お店に女性だけで行くのも楽しくなってきたタイミング。古いビルの1室のナチュールワインや日本酒を出す隠れ家BARで週末に恋話。赤い日本酒とチーズとフルーツを楽しむ。

NIJI(2時)

種類:りんご酸純米酒
時刻:AM 2:07
設定:40代後半男性
グラス:バカラのアンティークグラス
場所:家の寝室
シーン:ベットサイドのサイドテーブルに本をのせ、寝る前にゆったりとした1人時間を堪能。

ブランドとは

最近、エルメスの伝記をよみました。馬具からはじまったエルメスが戦争やさまざまな困難を経て、ブランドとして成り立っていく過程です。1837年からつづく、エルメスブランドは今もなお、眩くかがやいています。

年月がブランドをつくるなら、「HINEMOS」は生きているうちに日の目をみませんが、そうではないとおもうので、地道に挑戦していきたいとおもいます。

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週末、8/31(土)と9/1(日)に恵比寿ガーデンプレイス内の三越B2Fにて、11:00-20:00に店頭試飲会を行っています。「HINEMOS」の全銘柄が無料で試飲できますので、お近くにいらっしゃる際はぜひお越しください。

日本酒を一緒に世界に届けてくれる仲間を募集しています。いつでもご連絡ください。

オリジナルブランドの日本酒「HINEMOS」のECサイトをオープンしています。

HINEMOS」が生まれるまでは、こちらのnote(前編)と(後編)をご覧ください。

日本酒を事業領域として選んだわけ」はこちらをご覧ください。

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