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一木けい「1ミリの後悔もない、はずがない」

「俺いま、すごくやましい気持」。ふとした瞬間にフラッシュバックしたのは、あの頃の恋。できたての喉仏が美しい桐原との時間は、わたしにとって生きる実感そのものだった。逃げだせない家庭、理不尽な学校、非力な子どもの自分。誰にも言えない絶望を乗り越えられたのは、あの日々があったから。桐原、今、あなたはどうしてる? ――忘れられない恋が閃光のように突き抜ける、究極の恋愛小説。


はじめて読んだ作家さんでしたが、言葉や文章、物語が美しくて感動してしまいました。


5編からなる連作短編集で、物語は貧しく決して恵まれてはいない環境で凛と生きる由井と桐原の恋愛を中心にして、大人になった今や周りの人間たちの生き様を描いています。



自分もそうなんだけれど、学生の時に一緒に遊んでいた仲の良い友達やクラスメイト、恋人だった人で今でも会ったり連絡を取る人って本当に少なくて。

特に学生の頃を含め、自分の人生を振り返った時に必ず覚えているような後悔って沢山あって、
この物語はそういう後悔を大きく包んで肯定してくれるような、そんな温かさを感じる作品でした。



最後の1ページは由井と桐原にとっての大きな「後悔」
でも読んでいて、なんて幸せなんだ
と涙が溢れるページ。



この小説は「色んな後悔を抱えながらも強く生きていくんだ」
と教えてくれました。

由井の愛読していた有島武郎「小さき者へ」
の一節でもそんなメッセージが語られています。

ぜひ、読んでみて欲しいです。

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