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メゾン ド リーファー(MAISON DE REEFUR)全店閉店は多店舗展開が原因か?

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・メゾン ド リーファー(MAISON DE REEFUR)全店閉店は多店舗展開が原因か?
・「エキゾチックレザーのみ廃止」がサステナビリティーでアースの「エシカル」が全く倫理的ではない理由
・ファーフェッチは粗利率が低い?
・マークスタイラーのプロデューサー制度は終焉に向かう?
・Shopifyの実店舗支援は何故正しい戦略のか?



メゾン ド リーファー(MAISON DE REEFUR)全店閉店は多店舗展開が原因か?

梨花が手掛ける「メゾン ド リーファー」年内で全店閉店へ

「メゾン ド リーファー(MAISON DE REEFUR)」を手掛ける梨花が、年内をもって全店舗を閉店すると自身の公式インスタグラムで3月2日に発表した。 メゾン ド リーファーは梨花が約2年の歳月をかけて準備を進め、2012年4月にジュングループを通じて代官山に1号店を出店。オリジナルアイテムに加えてインポートアイテムも展開している。

梨花さんのブランド「メゾンドリーファー」がまさかの全店閉店を発表。2012年からスタートしたブランドでしたが7年でその幕を閉じる事に。

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以前、こんなnote書いたんですが「芸能人ブランドの一番の成功事例!」って記載してました。それは今でも間違いでは無いとは思っているのですが、全店閉店の理由が何なのかちょっと推測してたところ、事情通の方からの連絡もあり、記事にする事にしました。


○多店舗展開のタイミングは意外と遅かった?

今でこそ6拠点、カフェ含めて8店舗を展開しているメゾンドリーファーですが、その拡大のタイミングは意外と遅いです。

まずは2016年8月に新業態を3店舗出店。ブランド始まってから既に4年が経過していました。

その8ヶ月後には名古屋と博多にカフェを併設したショップの展開。このあたりに急激に拡大に踏み切った印象があり、割と最近の事なのでこの多店舗展開が足を引っ張ったのかな?と推測してしまいます。多店舗展開の弊害としては、「管理の煩雑化」「人材の担保」や、ブランドの希少性が損なわれるという問題もあるので慎重に行うべきなのですが、ちょっと一気に広げすぎたのではないでしょうか。

で、ここにについてはどうやらブランド統括の方は反対はしていたらしいのですが、最終的には本部の意向で決められたのではないかと思われます。中の人が反対し続けていたからこそ、このような遅いタイミングでの展開になったようですね。多店舗展開したものの、売上もそこまでついてこなかったみたいですし、反対していた事は正しかったようですね。

メゾンドリーファーの事例を見てみましてもやはり、初期フェーズに路面店でブランド力高めていくっていうのはブランドビジネスとして正しい方向性だと思えます。商業施設の展開だと、どうしても売上がどこかで漏れてしまうので、売れてない場合はすぐ噂になったりというリスクもあったり。(メゾンドリーファーは初動からめっちゃ売れてたみたいですが)そこでもし退店させられたりすると、そのデベロッパーが運営している商業施設には2度と入れない可能性が出てきます。

それを回避するには、

ブランド力高めて顧客増やす → 商業施設に出店してさらなる認知と売上拡大 → EC強化

って方向性が合理的だったりします。


○自社ブランドはどうなのか?

2015年の自社ブランドのリニューアル。

2017年にディレクターを据えての新ラインの発表。

直近では昨年末に新ラインを発表。

売上伸ばそうと思うと単純に店舗数とSKUを増やさないといけないので、ここでも拡大路線に踏み切っていたのがわかります。しかも、数ヶ月前に新ラインを発表していたところを見ますと、年末には全店閉店は考えてなかったのでは?とも思います。以前書いたnoteにも記載していますが、僕の周りではオリジナルレーベルの「LI HUA」の評判は良くなかったです。

ここに関してもやはり評判通りだったようで、それまでの「MAISON DE REEFUR」のレーベル廃止もあり、アパレルカテゴリーは結構な落ち込みがあったようです。


○ECは?

早い段階から自社ECをスタートしていたメゾンドリーファーですが、ここはかなり好調だったようです。実店舗の売上と同等か、それ以上を叩いていたようで、売上のポートフォリオの組み方としては理想的でしょう。これならフラッグシップショップとして代官山に1店舗と自社EC、あとは定期的なポップアップの展開だけで十分のような気がします。特に梨花さんがトークショーをされるポップアップの集客は半端ない数の人が来ますから。

中の人の各チャネルの位置付けですが、

・リアル店舗は「ディズニーランド」
・自社ECは「プロフィットセンター」
・ZOZOは「アウトレット」

という戦略だったようで、これもめちゃくちゃ正しい。。ていうか中の人、優秀すぎ。この人、途中からいなくなったようですが、そのせいで数字落ちたんでは?と勘ぐってしまう。。まとめますと、多店舗展開と自社ブランドの不振が大きな原因でECは超好調って内容でした。

ざっくりと自分の予測と中の人のお話交えてみましたが、想像通りな部分はあるにせよ、それを超えるくらい素晴らしい部分があって驚きました。あと余談ですが、他のインフルエンサーブランドと違い、梨花さんのコミットの仕方も相当なものだったようで、メゾンドリーファーは梨花さんのライフワークであると言い切っているほどだそうです。それだけに今回の全店閉店はめっちゃ残念です。どんな人気ブランドでも舵切りをちょっとミスするだけでこうなってしまうくらい、ブランドビジネスはデリケートだという事を痛感させられるニュースでした。




「エキゾチックレザーのみ廃止」がサステナビリティーでアースの「エシカル」が全く倫理的ではない理由

英百貨店セルフリッジ、エキゾチックレザー製品の販売を2020年までに廃止

英百貨店セルフリッジ(SELFRIDGES)は、2020年までに爬虫類などの革から作られたエキゾチックレザー製品の販売を取りやめると発表した。対象となるのはヘビ、ワニ、トカゲなどで、20年2月には食用の家畜から取られた皮革製品のみを取り扱うことを最終目標に掲げている。
(中略)
セルフリッジは05年に毛皮製品の販売を取りやめており、ほかにも“意識的な消費”を推進するなど、環境保護に先進的に取り組んでいる。

ロンドンの百貨店「セルフリッジ」がエキゾチックレザーの販売を2020年までに廃止するとの事。注目すべきは「農畜レザー」は継続して使用するという点でしょうね。この取り組みはとっても納得できるものだと思うのです。

エキゾチックレザーとは…クロコダイル(ワニ革)・リザード(トカゲ革)・パイソン(ヘビ革)などの爬虫類皮革に加え、オーストリッチ(ダチョウ革)・シャーク(サメ革)・エレファント(ゾウ革)などの希少性の高く独自の模様を持つ皮革の総称です。 レアレザーとも呼ばれています。


○農畜レザーの使用はサステナビリティー?

農畜のレザーのみ継続という事は、つまり牛・馬・豚・羊などですね。これのどこが環境保護なんだ?と思われる人もいるかもしれっませんが、環境保護だしサステナビリティーであると言えます。

レザーを使うことを廃止したところで、レザーの原料になる原皮は毎日何万枚も生産され続けているのです。 理由は簡単です。食肉がなくならないからです。 原皮は、食肉用に屠殺された牛、豚、羊、馬などから毎日自動的に生産され続けているのです。 となると、レザーを使わなくなったところでなんの意味もなく、原皮は捨ててしまうしかないのです。もしくは何かの飼料にするか。

上記記事にも記載がありますが、衣料品で使われるレザーは基本的には食肉用の動物の物が使用されています。食肉が無くならない限りは、衣料品に使ったりしなければゴミが増えるだけです。そして、食肉用の動物って家畜なのでこれもサステイナブルなんです。動物愛護を唱え、自身も一切肉を口にしないデザイナーのステラ・マッカートニーさんのような人しか文句言えない訳ですね。

最近、こういった「エシカル」「サステナビリティー」といったメッセージを伝えるブランドが増えてきています。国家としてGDPが上がり豊になってくれば、環境や健康に配慮するといった動きが高まって当然なんですが、どうやらそういったブランドを使う事がクールであるという空気感があるみたいです。セルフブランディングにも利用しやすいんですかね。


○工場の風景を写せばエシカル?

earth music&ecology2019年春新CM「エシカルへ」篇スタート、ブランドメッセージは「エシカル」

株式会社ストライプインターナショナルの主力ブランド「earth music&ecology」は2019年春の新CM「エシカルへ」篇を2月27日(水)より全国で放送を開始いたします。 20周年を迎えるアースは洋服を生産する立場の責任を改めて考え、 ブランドメッセージを「エシカル」に決定しました。

こういった流れの中、ストライプインターナショナルのブランド「earth music&ecology」が新たにエシカルを打ち出しています。しかし、動画を見る限りではバングラディッシュの縫製工場を紹介しているだけで、これの何がエシカルなのかが不明です。

記事中に記載がありますが、アースは現在274店舗。これだけの店舗の商品を生産しようと思うと結構な生産量になります。更に価格も安価であり、原価率も恐らく相当低い。(製品見たら大体わかります…。)商社関連の方々からも、ストライプは仕入れコストを相当買い叩くというお話がある事で有名なのですが、これって結局「低価格」「大量生産」「大量消費」なんです。

例えば今の取り組みを見直して「工場へ支払う工賃を上げる」とか「大量生産を抑制する」とか具体的な施策がセットであるならまだわかるんですが、それが全く無い。今のアースの状況でそれを実行しようと思うと、単純に売上か利益が下がりますから、具体的な施策は実行しにくいでしょう。できない事を伝える必要はありませんし、大量生産・大量消費を今すぐやめる必要もありません。今で消費者には十分なメリットがあるのですから。

細かな点を見ていけば、どの企業がちゃんとしたメッセージを出しているかはわかります。ストライプインターナショナルは企業としてはCSR(企業の社会的責任)に取り組んでいるので、わざわざエシカルという位置付けが難しいアースとして発信せずとも、企業としてプレスリリースしておけばいいのではないのでしょうか。


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