Snow Peak(スノーピーク)のアパレルラインがどういう状況か決算書を確認してみた
こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。
・Snow Peak(スノーピーク)のアパレルラインがどういう状況か決算書を確認してみた
・アパレルブランドの「ZOZO離れ」はいつかの「楽天離れ」の再現
・卸メインの企業が小売店を運営するとどうなるか
・アバタータイプのバーチャルフィッティングが流行らない理由
・「素材」のInstagramアカウントはどうやって成長したのか?
Snow Peak(スノーピーク)のアパレルラインがどういう状況か決算書を確認してみた
スノーピークのアパレルラインが黒字化達成!というニュースを見たのですが、「もう5年もやってたのか…」と月日の経つ早さを実感します。どの程度伸びているのか?と決算書見てみたんのですが、
昨年からなんと5億円も伸びてますね。事業別構成比見ても全体の12%と立派な成長を見せています。事業別の利益率出てないのでどれくらい利益出てるのかは不明ですが。。既に販路と顧客持ってるのって強いですね。既存顧客のLTV向上の為に、アパレルも差し込んだんでしょうけど、、
取り扱い店舗一覧見ると、ライフスタイルを提案しているセレクトショップもちらほら名前が挙がっております。シップスやジャーナルスタンダード、ナノユニバース、アーバンリサーチドアーズ、スティーブン・アラン(UAの取り扱い)などの高感度セレクトから、スポーツ系の量販店まで。
で、卸先含めてなんと
「128店舗」
も販売店があります。卸だけでも結構な流通量ですね。1件あたりの取引金額と掛け率が気になりますな。。
海外展開では、台湾で年間5000万円、アメリカで1億5000万円、アパレルだけで販売しています。この図で見ると事業展開もかなり手広くされているのがわかります。
粗利が改善されたとの事で、理由の一つに「アパレル評価損額減少」との記載があります。確かに過去、店頭見てる感じだとセール時期でも潤沢に在庫持ってそうな印象あったので、「結構在庫残してるのでは?」と思っていたのですが、これが今年度に入り改善されているとの事。
棚卸資産に改善が見られますね。評価減して且つ営業利益も大幅に上がっているので、今期の業績が良かった事が伺えます。棚卸資産は全体の数字なので、アパレル単体でどれだけ改善したのかはわかりませんが。
年商も20億円ほど伸ばしているのにこれはすごいですね。
昨年のデータですが、キャンプ人口はここ数年、伸びを見せています。
それに合わせて市場規模もやや伸びています。セレクトショップでもアウトドアのイメージ打ち出しているショップはよく見かけますし、日常着としての提案も含めて増えている印象は確かにあります。国内にグランピングの施設もどんどん作られていますし、アパレルラインは今後も伸びる可能性が高いのではないでしょうか。
アパレルブランドの「ZOZO離れ」はいつかの「楽天離れ」の再現
『ZOZOの方針が間違っている』といった類いのことではありません。確かに、「ZOZOARIGATO」に端を発してはいるけれども、ZOZOを離れる決意をしたブランドは、単なるZOZOへの反発心から離脱したわけでは、もちろんないでしょう。 それよりももっと早い段階から「自社EC」の重要性を見通し、そこへの投資を惜しまず体制を整えてきた企業が、今回の件をきっかけに満を持して撤退している、というのが本当の見方なのではないでしょうか。
年末のオンワード撤退から、常に話題になる「ZOZO離れ」。上記の記事では、そもそも自社ECの重要性は各社感じていた事で、体制が整った企業から離脱したという言い分。細かいところは置いといて、このあたりは同意です。ていうか、このお話どこかで聞いたことあるなーと思っていたのですが、、
楽天離れからの自社EC強化のニュースが2017年4月に報じられてました。楽天離れの原因は、
・楽天市場で目立つには価格を下げるか、派手なデザインにしないといけない
・外部リンク禁止の制約で、InstagramなどSNSとの連携ができない
との事です。
○ECモールは今も顧客囲い込みの手を緩めていない
ZOZOもプラットフォーム内で埋もれない為に「プロダクト広告」や「クーポン発行」が必要ですし、
(プロダクト広告)
(クーポン)
ソーシャルメディアは楽天同様、ZOZO用のもので無ければ禁止です。よく、「モールのお客はモールでしか買わない」なんて事を言われます。当たってる部分ももちろんあるのですが、全部が全部そうという訳ではない。だからこそモールはセールやクーポン・ポイントなどで顧客を囲いこもうとしますし、外部リンクを許しません。ZOZOでは特にクーポンやセールはブランド負担なので、モールのお得感を作っている元凶はブランド側なのですが。。
つまり先に顧客の囲い込みをしたのはECモール側なので、ブランド側は本来であれば自社ECに取り込めていた可能性のある「ブランドを認知しているライトユーザー」を取られた形になります。ECモールの先行者利益とも言えますね。で、アパレル企業の沿革を数社分見てたんですが、
(ユナイテッドアローズ 沿革)
(アーバンリサーチ 沿革)
各社、EC事業が本格的に立ち上がったのは2005年以降くらいでしょうか。ZOZOTOWNが立ち上がったのが2004年、そこからすぐユナイテッドアローズ(以下、UA)が出店。当のUAは自社ECを開始するのが2009年です。気づいた時には後の祭りでしょう。この頃、僕の古巣周りの競合他社はZOZOでの売上を楽しそうに自慢していましたし(当時、半期で億単位売れると聞いて驚愕してました。)、僕も「めっちゃ売れるやん…。ZOZOすげぇ。。」と純粋に思っていました。今でこそZOZOでトップの売上を誇るブランドは年間50億円以上売ったりしますが、どんな大手セレクトに卸したところで年間に億単位の売上作るのってめっちゃ難しい。それがZOZO1軒に卸すだけで軽く億越え…。
当時、自社ECで顧客データ獲得して囲い込むという発想はブランド側にはもちろんありません。自社ECやり出した頃にやっと気づいたんだと思います。「楽天は顧客データが取れないし、出店料が高い…。」と嘆いていた当時のセレクトショップを思い出すくらい同様の事が今起こっているという訳です。
○プラットフォーム事業以外の切り口が必要になる?
有名ブランドほど、自社のプラットフォームを拡大するのに時間がかかりませんから、このままいけば更なる離脱が加速する事でしょう。「楽天はダサいから」という理由で敬遠されてきた事が、ZOZOにも降りかかる可能性が出てきてしまってます。楽天は「ポイント」という経済圏のおかげか、決済事業にてまた違ったところでアパレルと組み始めていますが…、
ビームスや、
ユナイテッドアローズ、
ライトオンなどなど。
切り口がプラットフォーム事業のみだと、離脱が起こった際のリカバリーが効きませんが、決済とポイントで囲いこむ事に成功しています。ZOZOはこうなる前に、早いところアラタナを活用してto B強化しておくべきでしたが、ちょっとタイミングが遅かったように思いますね。今後、離脱を避ける為に料率を下げていくのか、安物のマーケットプレイスとして継続していくのか、注目したいところです。
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