インフルエンサーブランドの成否を分けるのは、本人の「のめり込み方」なのかもしれない
こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。
インフルエンサーブランドの成否を分けるのは、本人の「のめり込み方」なのかもしれない
以前に芸能人ブランドについてのまとめを書いたのですが、
この記事がきっかけで、「COEL」(ヨンアさんのブランド)の運営会社の方から直接ご連絡を頂きまして、大阪で開催されたイベントにご招待して頂きました。
今回のイベントは顧客向けのレセプションイベントで、限られた方のみのご招待だったのですが、会場は人で賑わっていて熱気に包まれていました。それもそのはず、リアルイベントにはヨンアさん自身も来られていて、丁寧に接客までしてくれる特典付き。ファンにとっては最高の購買体験です。(ご本人のお写真は掲載できませんのでご了承ください。)
「大概のインフルエンサーブランドって本人は看板で、ほとんどは中の人が運営してるんでしょ?」
なんて思っていてすみません。。中の人から今までの取り組みやこれからの計画など聞いてきたのですが、ちゃんと考えられてて素晴らしいと感じたのでいくつかご紹介したいと思います。
○販売チャネル
ブランド発表の際にもありましたが、メインのチャネルは自社EC。
それ以外は、
・卸(セレクトショップ、ECモール)
・ポップアップショップ(年間8回程度)
というポートフォリオ。卸先のセレクトショップはベイクルーズが展開している「NOBLE」や名古屋の有力セレクトショップ「YAMADAYA」さんなどなど。
運営会社がアパレルでは無いのですが、ちゃんと有名セレクトから地方有力店にまで差し込んでいるあたり、営業にも力を入れているのがわかります。COELの事業責任者が元アパレルの営業出身という事で納得の結果ですね。
ポップアップショップは、今回のようなレセプションイベント(顧客招待型)と百貨店内でのフリーイベントの2パターン。販売チャネルがECメインなので、現物を見たいお客様が大変多いようです。
ECモール出店はあくまで「卸」という捉え方で、ストデパには出品されていますね。後発モールとしては、ヨンアさんの集客力は欲しいでしょうから交渉力がブランド側の方が強くなっているのかと。
○企画がおもしろい!
COELが面白いのは、インフルエンサーの影響力に慢心せず、それを更に濃いものにしていこうという動きが見えるところです。
・COEL便
COEL便とは、期間中にECにてお買い上げ頂いたお客様に抽選で、ヨンアさんがサプライズで直接ご自宅に伺いプレゼントをお渡しするという取り組み。以前、ネッタポルテが、商品をタキシードを着たイケメンに配送させるという件があったのですが、それを大きく超えるサービス。。しかも、ただプレゼントをお届けするだけでなく、一緒にランチしたり、ご自宅でコーディネートしてくれたりと至れり尽くせり。インフルエンサーご本人がここまでやってくれるサービスって他に無いんではないでしょうか。
・Bar COEL
こちらはまだ実施されていないのですが、barにて少人数制のファンミーティングを予定しているようです。LINE@のお客様限定で応募を募っており、ざっくばらんに商品についてお話する事ができそう。こういった座談会的なものってコミュ二ティ形成にも繋がりそうだし、ご意見を取り入れて商品開発にも活かせそう。
・COEL snap
ブランドのInstagramオフィシャルアカウントとスナップを分けているケースは他ブランドでも見かけるのですが、COELは内容がちょっと違います。他ブランドではオフィシャルアカウントは「世界観」中心の投稿で、スナップアカウントは「リアルクローズ」という分け方が多いのですが、COELの場合のスナップは「顧客との交流」。1投稿あたりのライク数は少ないものの、写っている本人からすると100ライク押したくなるような投稿でしょう。
「エンゲージメントはライク数だけじゃないんだ…。」
と思わされる取り組み。全ての取り組みに「顧客を大切にする」という姿勢が垣間見られます。
ここまで見て皆様お気づきの通り、とにかくご本人の熱量と顧客へのサービスという点が図抜けています。社内の企画会議が週1回の頻度で行われるのですが、それもヨンアさん自身が全てご参加されているようです。
(今シーズから展開スタートのキッズライン。子供が休憩できるスペースの確保。また商品もリンクコーデができるようになっていて、随所に顧客への配慮が見られます。)
(店内に設置されたフォトブース)
有名人の名前だけ借りてきて、商品は適当に韓国仕入れ…、なんていう形骸化したインフルエンサーブランドが散見される中、ご本人の取り組みがここまで強く出ているブランドってちょっと珍しいのではないかとも思います。
先日取り上げました上記の記事でも、「メゾンドリーファーは梨花さんのライフワークだった」と当時のご担当者がお話されていましたが、同様の熱量をヨンアさんの取り組みから感じる事ができます。生まれては消えるインフルエンサー系ブランドの中で、メゾンドリーファーに次ぐ成功事例になり得るには、ご本人がどこまでブランド運営にのめり込めるかが大きな指標になるのではないでしょうか。
アパレル企業の初任給の水準はどの程度か?
ユニクロなどを運営するファーストリテイリングは、来年春に入社する新入社員の初任給を一気に2割引き上げ、25万円を超える水準にする方針を固めました。人材の獲得競争が激しくなる中、グローバル展開を担う若手社員を確保したいねらいです。関係者によりますと、ファーストリテイリングは、来年春に入社する大学卒の新入社員のうち、海外を含めた転勤がある職種の初任給を、今の21万円から一気に4万5000円、率にして21%引き上げて25万5000円とする方針を固めました。
ユニクロの初任給が25万5000円になるという事で、恐らくアパレル業界では最高水準の初任給になったのではないでしょうか。業界で初任給が高いで有名なのはTOKYO BASEですが、高額商品をがっちり接客するのと、ユニクロのようにセルフ販売方式で売るのとでは、店頭スタッフの業務は大きく変わります。時代が変わると共に、店頭スタッフの役割も変わっていくのだなぁと思いますが、何より気になるのは各社の給与水準。今後も恐らくどんどん変動するでしょうけど、現状の大手企業の給与水準をちょと調べる事にしました。
○売上トップ10企業の給与水準は?
上記は直近でのアパレル国内売上トップ10企業です。まずはこちらの給与水準から調査してみましょう。ファーストリテイリングは上記の記事の通りなので、2位から記載していきますと、
※全て大卒での数字を記載しています。
2位 しまむら 23万7000円
3位 青山商事 21万2080円
4位 オンワードホールディングス 20万9000円(オンワード樫山の数字です)
5位 アダストリア 22万円
6位 AOKIホールディングス 22万2000円程度((株)AOKIの数字です。)
7位 ワコールホールディングス 22万3000円((株)ワコールの数字です。)
8位 TSIホールディングス 19万4100円((株)サンエーインターナショナルの数字です。)
9位 ユナイッドアローズ 22万3200円
10位 グンゼ 21万2000円
しまむらが実はかなり高い給与だったのは恥かしながら初めて知りました。流石、世界ランキングでもトップ10に入る企業ですね。業績悪化してますが、給与水準下げないよう頑張ってほしいです。その他、注目すべき企業は、
・TOKYO BASE 30万円
※一律通勤手当20,000円・一律固定残業代79,000円(45時間分)含む。 ※45 時間を超える時間外労働は追加で支給。
まさかの30万円の大台に突入しているTOKYO BASEですが、ここまでの高給でも離職が止まらないそうです。残業代が固定でかなり支払ってくれるみたいですが、そんなに残業多いんですかね。。
・ストライプインターナショナル 23万1000円
福利厚生が充実していて人気なストライプも業界最高水準。ブラック企業と言われていた頃が嘘のようなホワイトへの転進を見せています。
・ベイクルーズ 20万円
新卒に人気な企業としてはやはり抑えておきたいベイクルーズ。20万円が普通の水準になっていますが、過去から考えると本当に水準上がりましたね。
・マッシュスタイルラボ 22万円
業績好調でよくニュースになっているマッシュスタイルラボ 。残業代が出ないとよく噂されていますが、固定で含まれているようですね。(30000円弱)これでブラックと叩かれるくらいには、アパレルの労働環境は良くなっている印象を受けます。
僕が新卒だった10数年前の給与水準って、初任給が額面で20万を超える企業なんて珍しく、大卒でも19万円程度だった記憶があります。それが、今や専門卒でも20万円程度もらえる企業も増えてきたことを思うと、業界の給与は引き上げられてきていると感じます。(物価や最低賃金の問題もあるでしょうけど。)アパレルの参入障壁も過去より上がってきていて、寡占化もどんどん進んでくれた方が未来は明るくなるのではないでしょうか。
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