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#248【連載小説】Forget me Blue【画像付き】

 そうして計画通り駐車場に戻ると、受付を横目に二人は再び出掛けようとした。けれども未央がそれを見逃すはずもなく、「あーっ」と叫ぶ声がしたので仕方無く足を止めた。
「やっと帰って来たと思ったのに、二人してどこ行くの!?」
「駅前のタ……」
「あーっ、イチ、正直に答えちゃ駄目でしょ! 未央さん付いて来ちゃう!」
 弟は眉を吊り上げて尋ねたから、イチは正直に行き先を教えようとした。すると佐村が大声でそれを遮ったので呆れた——当然、未央はぶうぶう文句を言った。
「タ◯ーズ行くんなら、俺も混ぜてよ! 全く、仲間外れにするのにも程があるよ!」
「よく最初の一音﹅﹅﹅﹅﹅だけで分かったな……」
「仲間外れって、デートなんだからイチと二人で行くのは当たり前じゃないですか! だから大人しく受付してて下さい!」
 目的地を言い当てた弟に感心半分、呆れ半分になっていたら、例によってぎゃあぎゃあ言い争いが始まった。イチはどうしようかな、と少し悩んだが恨まれたら面倒﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅なので、未央も連れて行くことにした。
「蒼士、パンケーキ食べたら未央には帰って貰おうぜ。その後、少しゆっくりして……」
「何それ、食べたらぐ帰んなきゃいけないの!? ていうかパンケーキ食うん?」
いちご練乳れんにゅうパンケーキっていうのがあるらしい」
「仕方無いですね! パンケーキはおごってあげますから、最後の一口を口に入れた瞬間﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅に帰って下さいね!」
「偉い細かく﹅﹅﹅指定すんな……」
「ちぇっ。でも、佐村さんってネチネチ﹅﹅﹅﹅してて恨まれたら怖い﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅し! 今回は言う通りにしてあげるよ!」
 そんな風に阿呆極まりないやりとりをしながら、三人は駐車場を出発した(勿論もちろん祖父に断って、受付には内線電話の子機を置いた)。

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【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村さむらと出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

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