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#40【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村さむらと出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 溝口に声を掛けた女性の髪型は、イチと同じ﹅﹅﹅﹅﹅漆黒しっこくのワンレングスロングヘアーだった(サラサラの髪質だが、つやはイチに及ばない)。年の頃は三十代半ばで女性にしては背が高く、百七十三、四センチメートルくらいだろうか。そして、睫毛まつげが長いのが目立つ切長きれながの目に、高い鼻梁びりょうと紅くて薄い唇を持つ物凄い﹅﹅﹅美人だった——しかし、学生時代にはスポーツをやっていたのではないかと思う程、(太くはないのだけれど)しっかりした体付きだ。
 彼女は白のロングカーディガンをひるがえしてそばまで来ると、ぽかんと口を開けているイチ達三人に笑い掛け、「こんにちは」と挨拶した。それにハッとして口口くちぐちに挨拶を返したら、溝口に向き直り「お友達?」と尋ねた。
「えっ、あっ、私の推し﹅﹅とその婚約者さんと弟さんです」
「ブッ」
「ああ、しってこの人だったんだ。へえ……」
 溝口の言い様にイチは思い切り噴いたが(一方男二人﹅﹅﹅はむっと口を尖らせた)、女性にじろじろ﹅﹅﹅﹅見られて「ヒェッ」と小さく悲鳴を上げた(目付きが物凄く﹅﹅﹅怖かった)。すると、彼女は不意ににこっとして自己紹介する。
「初めまして。私、溝口さんと最近仲良く﹅﹅﹅させて貰ってる蜂須賀はちすかあかねです」
「うっ、あっ、初めまして。佐藤一と申します……。こっちは佐村蒼士で、あと弟の未央」
「どうも初めまして」
「ちわーッス」
 蜂須賀は何故だか挑戦的な﹅﹅﹅﹅笑みを浮かべているせいか、イチに紹介された佐村はぺこっと頭を下げたけれど目が笑っていなかった(そして未央は無愛想ぶあいそういつもの﹅﹅﹅﹅挨拶をした)。そんな風に不穏な﹅﹅﹅空気になりイチが焦っていると、溝口が蜂須賀に話し掛けた。
あかちゃんさん﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅、今度の誕生日パーティー、イチさんのお家でして貰うことになってるんですよ」
「あかちゃんさん!?」
 物凄く個性的な﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅ニックネームを聞いて、イチ達三人は声を揃えて仰天した。すると蜂須賀もとあかちゃん﹅﹅﹅﹅﹅が「私があかちゃんって呼んでってお願いしたんです」と説明したから、イチは「お、おう、そうなんだ」とぎこちない相槌あいづちった。
「あっ、それで、その誕生日パーティーなんですけど、あかちゃんさんも参加したいって言ってるんです……良いですか?」
 溝口は困り顔でそう聞いたから乗り気ではないようだが、イチが何か言うよりも早く佐村が「勿論もちろん! 是非いらして下さい」と答えたのでぎょっとした。異存いぞんいが、何故だか嫌な予感がした。
「すみません、初対面なのに図図ずうずうしくて。でも私も、絶対に﹅﹅﹅まどちゃんのお誕生日をお祝いしたかったので」
「ねえねえ、二人は付き合ってるん﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅?」
「ブッ」
 突然、空気を読まない﹅﹅﹅﹅弟がそう聞いて、彼とあかちゃん以外の三人は盛大に噴いた。すると、間髪かんぱつれずにあかちゃんが「いえ、猛烈にアプローチ﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅してるんですけど、中中なかなか手強くて」と答えたから、イチは思わず「マジか!」と呟いた。そして内心、溝口は凄くモテるんだな、と舌を巻く。当の本人は耳まで赤くなっていたが、未央が「へえ! 溝口さん、誕生日は兄ちゃんと過ごしたい﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅とか言った癖に、こんな美人とデートしたりして、変なの﹅﹅﹅!」と指摘したので、今度は真っ青になった……。

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