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#286【連載小説】Forget me Blue【画像付き】

 そうして再びなれあい橋を渡り、例の公園へ戻った。イチ達の商店街のそばに架かるR橋側はフードゾーンになっていて、その中に佐村御用達ごようたしの唐揚げ専門店「あるもん」の屋台がある。唐揚げのパックには大中小のサイズがあり、味も甘辛味やチキン南蛮味、それにチリソース味等が選べる。けれども定番の塩味が一番気に入っているから、佐村はそれの大パックを三つも購入した。店主にはすっかり顔を覚えられていて、「いつもありがとうございます!」と言われているのを見てイチはぷっと噴き出した。
「ていうかすっかり忘れてたけど、三好さん出なくて良かったね」
「おお、そういやそうだな」
「俺はちゃんと警戒してましたよ! 未央さんと違って!」
「でも、唐揚げ買った後はそれしか見てなかった癖に!」
「そんなことないですよ!?」
「二人共うるさい……」
 来た道を戻っていると(と言っても徒歩三分も掛からない)、例によって佐村と未央がぎゃあぎゃあ言い合い始めて、イチはうんざりした。しかし、三好が現れなかったのは良かった。
 そうして家の玄関をくぐり、受付の祖父にお土産のあんバターサンドを渡した。それから、イチを先頭にどやどやと階段を上りリビングに入る。まだ十時過ぎだが、熱熱あつあつの唐揚げを頂くのだ(祖父も少し食べると言った)。
「ああ、幸せだなあ。あっつあつの唐揚げとほっかほかのご飯が食べられるなんて! 心まであったかくなるよ……でも野菜も食べなきゃだから、後でブロッコリーでるね」
「俺、もう受付に戻るよ! じーちゃん、代わってくれてありがとー!」
「おう、良いってことよ」
「じゃあ、ぐに取り分けますね、唐揚げ。ご飯と一緒に持って行きますよ、未央さん」
「テンキュー!」
 キッチンに居る三人が口口くちぐちに言うのを聞きながら、イチはゆっくりとダイニングチェアに腰を下ろした。さっきから腰の辺りが痛い——久し振りに寒い外を歩き回ったから冷えたのかも知れない。けれども良い気分転換になったし、暖かくしていれば痛みも治まるだろう。
「イチ、大丈夫? 少し顔が青いね」
「え、そう? 実はちょっと腰が痛いん」
「えっ、そうなの? じゃあ電気ブランケット、取って来るね! あっためないと」
 唐揚げを皿に移そうとしていた佐村は、イチの異変に気付くと手を止め三階へ続く階段を駆け上って行った。それを見送っていると、祖父が「いっちゃん、ソファで食べるか? 唐揚げ」と聞いたので、こっくり頷いて立ち上がる。
 その時——。
 ふっと視界が暗くなり、蹌踉よろめいたイチはテーブルの角に思い切りひたいをぶつけた……。

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【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村さむらと出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

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