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#276【連載小説】Forget me Blue【画像付き】

 昼間沢山寝たのに、風呂上がりに歯磨きを済ませ布団にもぐんだら、ぐに眠気が襲って来た。けれども、イチは入れ替わりに風呂に入っている佐村が出て来るまで起きていたかったから、スマホを弄って待っていた。どうせ十五分も掛からない——そして、予想通りしばらくして自室のドアが静かに開き、寝間着ねまき姿の彼が入って来た。
「今日は驚かされないぞ……イチ、寝てる?」
 彼は昨夜驚かされたことをしっかり根に持っていて、ドアを閉めるなり小声でそう聞いたから、例によって布団を頭まで被って待ち構えていたイチはブッと噴いた。すると佐村が「やっぱり!」と叫んで寄って来た。そして掛け布団をがすと、間近に顔を覗き込んで……。
「ン……」
 優しくキスされて、うっとりしたイチはぐに目を閉じた。すると何度も唇が合わさり、ぬるりと舌が滑り込んで来た。それから佐村はベッドに上がってイチに覆い被さり、大きくて温かい手を寝間着ねまきの下に滑り込ませ腹を優しくでた——しかし、その手は次第に胸の方へ上がって来ていただきつまんだ。それにイチが「あン」と声を上げると、はあはあ息を荒げた佐村は耳元で「シよっか……?」と聞いたので、慌てて首を横に振る。
「駄目……流石にこの家では出来ない」
「でも、明日はイブだよ……? せっかく下着買ったのに、サービス﹅﹅﹅﹅して貰えないの……?」
「そういや、そんな約束してたな……あっ」
 佐村の質問に、初めてのクリスマスプレゼントは彼の好みの下着を穿いてサービス﹅﹅﹅﹅する約束だったのを思い出して、イチは赤くなった。しかし、胸を優しく揉まれて再びあえかな声を上げる。
「ブラも着けてね……セットじゃないのが残念だけど」
「ええ、ブラも着けるん? てかセットって、こだわるな……あン」
「やっぱりシようよ……今夜は我慢するの無理……」
「だって、父ちゃんに聞こえたら困る……」
「まだ帰って来ないよ。後三十分くらいは大丈夫……」
「ああ、駄目……」
 イチは必死に抵抗しようとしたが、今夜ばかりは佐村は聞いてくれそうになかった——どうせ明日イブの夜だってする癖に。そう思ったけれど、イチは自身の服を脱がせる彼の手を止めることが出来なかった……。

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【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村さむらと出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

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