◇#247【連載小説】Forget me Blue【画像付き】
「チンは一分五十秒かな。ところでイチ、巨大タコさん買いに行くのいつにする? 今日でも良いけど……」
「え」
タッパーに移して保存してあったスープを電子レンジに入れながら、振り返った佐村がそう聞いた。それにイチは目を見開いたが、直ぐにぽっと頬を染めぼそぼそと「じゃあ、今日行く……」と答えた。
「ふふ。そんなに恥ずかしがることないのに。ぬいぐるみ、俺だって偶に欲しくなるし」
「ええ、そうなん?」
「前におもちゃ屋さんで見掛けた、デッカいキングペンギンの赤ちゃんのぬいぐるみには心惹かれたなあ……等身大サイズよりも大きいんだよ」
「等身大サイズよりも? キングペンギンの赤ちゃんってかなり大きいんじゃね?」
「本物の身長は八十センチメートルくらいかな」
「ホンマや。『キングペンギンは、体長八十五センチメートルから九十五センチメートルになります』。体重は十四キロから十八キロ程……まあまあデカい」
検索大魔王のイチは光の速さでインターネット検索をし、結果を読み上げた。すると佐村はこっくり頷いて、「最後の方は殆ど親と大きさ変わらないんだ。それなのに茶色いふわふわの毛に覆われてて、ぼうっと突っ立ってるの。凄く可愛い……」と言ってうっとりした。
「しかし、そんなに大きなぬいぐるみ、買っても置くとこ無いな。って、今からタコさん買う俺に言われたくないだろうけど」
「あ、そういやそうだね。タコさん、どこに置くつもりなの?」
「え、一緒に寝る……だからベッド」
「ブッ」
イチは大真面目にそう答え、佐村は小さく噴いた。それからあははと笑うと「俺とイチと、そうちゃんとタコさんの四人で寝るの!?」と言った。
「そういえば、そうちゃんカウントしたら四人だな。でも、そうちゃんが生まれて一緒に寝るようになったら、タコさんには移動して貰うよ。足が絡まったら危ない」
「そうだね。でも、それまでは一緒に寝るつもりなんだ……ベッドが狭くなりそう」
「駄目?」
「ううん、良いよ。触り心地も最高なんでしょ? きっと一緒に寝ると気持ち良いよ」
おずおずと尋ねると、佐村は笑顔でそう答えたのでイチはホッと息を吐いた。やっぱり、彼はとびきり優しい。
それから、電子レンジから取り出した熱熱のスープを二人で飲んだ……。
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【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。
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