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【1記事¥100】Forget me Blue【連載小説】

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会社員×両性具有の管理人【超長編】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過…
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#1【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#1【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 メールアプリの通知音がして、だかだかタイピングしていたイチは手を止めた(激しくタイピングする方が捗っている気がする)。「おっ?」
 見ると、朝食前にパソコンテーブルを注文したオンラインショップからの受注連絡

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#2【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#2【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

「チョレギ〜、チョレギ〜、チョチョチョチョ、チョレギ〜」
 また月曜がやって来た。イチは実家のリビングへ出勤してから二時間くらいは執筆に集中していたが、小腹が空いたので最近ハマっているチョレギサラダを作ること

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#3【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#3【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 クローゼットの中にはイチのこれまでが詰まっていて、小学校の時に使っていたリュックや習字道具の鞄まで出てきたので懐かしくなった。
「どれも思い出があるから、ショルダーだけ外すの、勿体無いな……」
 手に取ると

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#4【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#4【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 ホットサンドは、イチと佐村、未央の分の他に余りを一つ作った。どんどん焼いていくうちに、リビングに良い香りが充満して、祖父が「美味そうだなあ」と言ったので、イチは「じーちゃんもちょっと味見する?」と聞いた。

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#5【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#5【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 シルバーウィーク最終日の朝食は、白米と味噌汁に、さつま揚げとしめじと小松菜の炒め物だった。
 小さなキッチンで炒め物を手早く作った佐村は、フライパンから中皿に料理を移しながら、にこにこして「今日は大山海苔食

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#6【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#6【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 佐村は部屋に戻ると早速紙袋からアルバムを取り出した。
「こらこら、お風呂に入ってからにしなさい」
 そう注意すると、子どもみたいに口を尖らせて「はあい」と言ったのでぷっと噴き出した。
「めっちゃ出てくるの早

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#7【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#7【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

「イチがブラジャーしてたら、ちょっとドキドキしちゃうかも……」
「今、具体的に想像してるやろ!」
 佐村は陳列してあるマタニティブラジャーを見ながらそう呟いたので、イチは真っ赤になったまままた突っ込んだ。

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#8【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#8【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 夕方の六時過ぎ、帰宅してリビングへ上がって来た佐村に「おかえり」と言うと、彼はにっこり笑って「ただいま」と応えたが、続けて尋ねた。
「イチ、どうしたの? 少し元気無さそうだけど」
「え? そう? そんなこと

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#9【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#9【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 明くる日の日曜は、午後三時からイチが入院する予定だったから、佐村はガブちゃんの絵画教室を休んだ。
「さてさて、お粥出来ましたよ〜」
「おお、ありがとう。しっかし、七分粥だけだと腹減るな……」
 手術の前前日

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#10【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#10【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 明くる日の朝食は相変わらず全粥だったが、昼から普通食に切り替わるのでイチは楽しみにしていた。貰った献立表によると、メインは「鶏肉と野菜のソテー」だ。いきなり肉で嬉しくなったが、ちゃんと食べられるか不安だった

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#11【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#11【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 翌日の花金、イチは妊娠十八週になった。入院も四日目になり、血液検査と尿検査、それから診察を受けて問題が無ければ退院出来る——昨夜はシャワーも浴びることが出来たからすっきりしていて気分が良かった。
 退院が決

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#12【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#12【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 翌朝、佐村は先週休んだガブちゃんの絵画教室へ行った。彼はイチが心配だから今日も休むと言ったのだが、行けるときに行っときなさいよ、と送り出した。色色あって都合が付かない場合も屢屢あるから、出来るだけ授業には出

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#13【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#13【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 「散らかっててごめんね」と謝る麻美に付いて奥の和室に入ると、ベビーベッドの前に立っているヒカルの後ろ姿が見えた。
「すっかり遅くなっちまったけど、ヒカル、麻美ちゃん、おめでとう。お祝いはまた持って来るわ」

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#14【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

#14【1記事¥100】Forget me Blue 【連載小説】

【会社員×両性具有の管理人】寂れた商店街の一角にある駐車場の管理人であるイチは、ある日訪れた時間貸しの客、佐村と出会いすぐに惹かれていく。しかしどこか陰のある彼には悲しい過去があって——。

 楽しい週末がやって来た。当たり前だが平日は佐村と出勤前と夜しか一緒に過ごせないので、イチはいつも楽しみにしている。それは彼も同じようで、目覚めるなりがばっと起き上がって「土曜日だ! 土曜日が来たよ、イチ!」

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