【ショートショート】夜の高速
赤い光を追いながら、夜を走る。
走っても走っても光景は変わらない。
「ふう」
と田中はため息をついた。
相棒の前田は助手席で、深夜ラジオを聴いている。
「そろそろ運転代わりましょうか」
「いやまだいい」
「朝一に倉庫ですから、キツいですよね」
「一晩中走るのはいいが、こんなに同じ光景だと眠たくなるな」
「わ。兄貴」
「どうした」
「前。前」
「前がどうした」
「あれ、UFOじゃないですか」
「ああ、そうだな」
「え、驚かないんですか」
「このへん、よく飛んでるよ」
「そうだったんだ」
「地味だからわかりにくい」
「あ、地面に下りてきた」
「そうだよ。あいつら、ふだんは地面を走っているんだ。飽きたら空中に飛び上がる」
「トラック型のUFOということですか」
「そうだな」
「兄貴は、どうしてUFOだとわかったんですか」
「だって空を飛ぶんだから、そりゃUFOだろう」
「なにをしているんでしょうね」
「荷物を運んでいるんじゃないか」
「なんだか所帯じみた宇宙人だなあ」
「宇宙人を雇ってくれるところなんて少ないから、仕方ないよ」
「よく知ってますね」
田中はニヤッと笑った。
「え」
前田はぎくっとして田中の横顔をみつめる。
「ちょっと飛んでみるかあ。電気をよけいに使っちまうがな」
そういって、田中はハンドルをぐいと引き上げた。
(了)
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