story.02 差添いの祈り
「縁切り神社に行きたい」
その当時、妻は疲れ切っていた。
「グリーン車にタダで乗れるチケットあるけど今月末で切れちゃうから、新幹線でどっか行こうか?」
妻にそう聞くと「熱海に行きたい。来宮神社に行く」と言うので、急遽日帰りの旅が決定した。
朝一のグリーン車でゆったり熱海へ向かい、昼前に来宮駅に着く。長い狭いトンネルを通り抜けると来宮神社があった。
妻は自分の分だけでなく、職場の友達の分もとお守りを3つ買い、パワースポットの大楠の周りを回りながら祈りを捧げていた。
「なんか、人の不幸を願うのは不健康だから、とにかく仕事での良縁をお願いした」
妻のそういう所が好きだ。
差添いの祈りは、その数ヶ月後、現実のものとなり、妻が悩んでいた人間関係は解消され、新たな人間関係が構築されたという。
神はいたんだ、と喜ぶ妻。
しかしその数ヶ月後、またその新たな人間関係に悩まされることになろうとは、その時の妻には知る由もなかった。
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