story.06 涼飈の原宿
原宿には異空間への入口がある。
騒がしい人混みから一歩入ると、そこにはまるで避暑地の高原にでも足を踏み入れたような涼と静寂があった。緑に囲まれた参道、頭上に突き抜ける青空、そして、少し張り詰めたような厳かな空気。
明治神宮。
誰もが知っているのに、あまりにも日本人がいない空間。境内を歩いているのは海外からきた観光客ばかり。まるで自分たちの方が、海外にきたのかと錯覚するくらいだ。
歩きながら妻が言う。
「多分日本人はさ、YouTubeとかで満足しちゃって、もうわざわざ出歩かないんだろうね」
実際、東京に住んでいると、案外東京の名所に行ったことがなかったりする。
スカイツリーもまだ登ったことはないし、皇居の桜を見にいったこともない。上野動物園でパンダを見たこともないし、両国国技館で相撲を見たこともない。
だからこそ、気になる場所があったら、飛び込んでみたらいい。
その瞬間、日常が「旅」になる。旅の入口は、どこにでもある。
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