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「誰も発言しない会議」は誰のせい?

「どうやって若手から意見を集めていますか?」

「会議に活気がない」「若手が意見を言わず困っている」という話を聞く機会はとても多いです。またリモートワークや在宅勤務になってから、部下や同僚の様子が見えず、仕事は進捗通り進んでいるのか?体調は問題ないか?サボってやしないか?今、何を考えているんだ?!そんな不安の声も聞こえてきています。

研修や会議の場で「自由闊達な会議を!」といっても、声を大きくするたびにまわりは萎縮していく。そんな様子も見てきました。

そんな中で冒頭の言葉は、ある活気あふれる八百屋を運営する経営者から聞いた一言。とても印象的で、今でも覚えています。

ー 若手から意見を集める、ですか。

「若手を見てるとね、どうしても自分たちの頃と比較しちゃうじゃないですか。でも、創業当時と今とでは、状況も違っていて当然ですよね。」

ー 確かにそうですね。

「組織が成長すると、規則や階層が生まれますし、意見も言いづらくなって指示待ちになるなんて当然なんですよ。だから問うべきは、若手個人ではなく、まわりが「どうやって意見を集めるか?」なんですよ。」

「どうやって意見を集めるか?」

多くの人はこの問いに続く言葉を持ち合わせていないとも言います。

「世界で最もイノベーティブな組織の作り方」の著者である山口周さんは、「イノベーティブな組織」へ向けて社員の立場から出来ることとして、若手は常に自分の意見を持ち、口に出すこと。シニアやベテランは人に意見を求めることとしています。

また同著で「組織体質の問題」として事例に上がっているのが、NASA。一流のエリートが集まる組織でありながら、その官僚的体質が防げるはずの事故を招いたと指摘されています。

「(1986年に起きた)スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故は、積極的に意見を述べない、不都合なことは聞きたくないという組織風土が原因で起きた。それから17年後、コロンビア号の爆発事故が発生してしまった。文化とは組織に深く根差しているだけに、やっかいなのだ」
引用:https://www.dhbr.net/articles/-/2720?page=2

それほど、組織内で弱い・下の立場にある個人が意見を発する上で「組織文化」の影響は強く、若手の努力のみに任せていては困難なことがわかります。

特に今は、オンライン対応を余儀なくされている状況。普段から意見や双方向のやり取りが少ない組織にとっては、なおさら発言のハードルが高いことが想像されます。

では、「自由な意見」や「若手からの意見」が生まれるために、組織や上の立場にいる人には何が出来るでしょうか。いくつかポイントを整理してみました。

意見を聞きに行く、定期的な場を設定する

先の事例にもあるように下の立場からの発言は、ときに「組織文化」という大きな障壁が立ちはだかります。営業活動や商品自体の改善につながる情報やクレームの兆候は現場の近くにあることが多いものの、組織にとって不都合な情報ほど、下の立場から発しづらいものです。そのため、自ら意見を聞きに行かなければ、真実の情報から遠ざかってしまいます。

そこで、1回あたりは短く(15分程度)とも、1週間、隔週、1ヶ月単位と頻度をあげて「話をする場」を設定してみてはいかがでしょうか。

5秒待つ

定期的に話をするときに気をつけたいのは、お互いの話す割合です。つい若手からの話や報告に結論を急かしたり、先が見通せてしまうためアドバイスをしがちですが、「若手からの意見」を期待しているのであれば、グッと待つことも大切です。

「◯◯については、どう考えているの?」と問いかけた後に、5秒待ってみる。特にオンラインの場合には沈黙を恐れ、一方的にまくしたてたくなりますが、グッと5秒を待ってみる。

少し余談ですが、5歳の娘が薬を飲むことをとても嫌がり、飲もう、やだ、飲もう…のやり取りに疲れ果てた後、モードを切り替えて、薬は苦いよね。飲みにくいよね。薬ってね…。治ったら遊びたいね…。という話をしました。最後には決断を委ねたところ「……のむ」と自分から進んで薬を飲み始めました。

信じて待つことには、それだけ人の意志を引き出す力があると思います。

雑談をする

業務的な会話の中から自由で創造的な意見は生まれづらいものです。かといって「自由に話してよ」と伝えても自由な意見は期待しづらいでしょう。そこで時間をかけて取り組みたいのが、雑談です。「なんで業務時間中に雑談なんて…」と思われるかもしれませんが、お昼休憩や移動時のちょっとした時間に同僚や別部署の方とおしゃべりすることで、以降の業務連携がスムーズになる。そんな経験も記憶にあるのではないでしょうか。

オンライン対応により「雑談」が失われたからこそ、少し意図的に雑談の場を設定することで、組織内の創造性や情報のめぐりを良くする取り組みをしている組織もあります。中でも、2016年からオフィスを撤廃し完全リモートワークに切り替えた「ソニックガーデン」では、以前から組織内における雑談の有用性を指摘しています。

“全社員リモートワークを始めて、オフィスを撤廃したことで課題になったことは何か?と聞かれれば、私たちのチームで最初に明確な課題となったのも雑談だった。毎日オフィスにいれば、すれ違いざまやちょっとした機会に自然発生的に生まれる雑談がなくなってしまったのだ。それで仕事をしていく上で問題があったかというと、業務遂行という観点だけなら問題はなかったのだが。”

(中略)

“普段から雑談をしていれば、本当に困った時に声をかけやすくなる。普段は全く話をしないのに、困った時だけ声をかけるのは、たとえ「いつでも相談して良い」と言われていても、なかなか難しいだろう。話しかける心理的なハードルを下げておくためにも、雑談は有効だ。疎通確認のようなものなのだ。“

ホウレンソウからザッソウ(雑談・相談)へ

とはいえ、いきなり「雑談をしよう!」といっても戸惑ったり、声のかけづらさがあるかもしれません。まずは朝礼や定例会議の場で各自が気になっている身のまわりのニュースを紹介するなど、既存の会議体の中の数分で出来ることから考えると、負担も少なくスタート出来ると思います。

(ちなみに、最近実施した会議では「自分の今の調子」を絵文字(😊😁😂😣)で共有したあとに、その状態を解説するというものをやりました。まず絵文字で表現した後に言葉にすることで話しやすく、目に見えづらい調子を共有することは、業務分担やケアを考える上でも有意義でした)

冒頭のスーパー経営者の発言に戻ると、「意見が生まれない」状況を社員個人の責任にするのではなく、組織風土の問題と捉えているところに大きな違いがあると感じます。

「どうやって若手から意見を集めていますか?」

という問いかけは、「自分にできていないことは何か」を考える必要に気づかされる話でした。自分自身も場所によっては「若手」と呼ばれなくなってきた寂しさと責任を感じながら。

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