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【児童虐待と男性育休】「保護を怠ったことによる死亡」とは

男性育休が広まれば、児童虐待を減らすことができるか?
前回の記事で、実母の動機で最も多いのは「保護を怠ったことによる死亡」であることをお伝えしました。
「怠った」という言葉、子育て中の親にはとても厳しい言葉です。
胸を張って「怠ったことはない」と言える親はほとんどいない気がします。
「保護を怠ったことによる死亡」ということばから想像できる部分もありますが、少し調べてみました。

ネグレクトの具体的説明

保護を怠ることは、児童虐待の4つの分類のうち、ネグレクトに相当するそうです。

子どもの健康・安全への配慮を怠っているなどの具体例
(1)重大な病気になっても病院に連れて行かない
(2)乳幼児を家に残したまま外出する
 親がパチンコに熱中したり、買い物をしたりするなどの間、乳幼児等の低年齢の子どもを自動車の中に放置し、熱中症で子どもが死亡したり、誘拐されたり、乳幼児等の低年齢の子どもだけを家に残したために火災で子どもが焼死したりする事件も、ネグレクトという虐待の結果であることに留意すべきである。

厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課「子ども虐待対応の手引き(平成 25 年8月 改正版)」より改変

ネグレクトについて、さらに次のようなことも書かれています。

○子どもの意思に反して学校等に登校させない。子どもが学校等に登校するように促すなどの子どもに教育を保障する努力をしない。

○子どもにとって必要な情緒的欲求に応えていない(愛情遮断など)。

○食事、衣服、住居などが極端に不適切で、健康状態を損なうほどの無関心・怠慢、などの具体例
 (1)適切な食事を与えない
 (2)下着など長期間ひどく不潔なままにする
 (3)極端に不潔な環境の中で生活をさせる、など

○子どもを遺棄したり、置き去りにする。

○祖父母、きょうだい、保護者の恋人などの同居人や自宅に出入りする第三者が虐待行為を行っているにもかかわらず、それを放置する。

厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課「子ども虐待対応の手引き(平成 25 年8月 改正版)」より改変

最近の具体的な事例

はじめに、病院に連れて行かなかったことによる死亡事件です。

■2017年12月 埼玉県上尾市 4歳女児 
2017年12月、埼玉県上尾市で、4歳女児が十分な食事を与えられず、適切な医療を受けられずに低体温症で死亡しました。
死亡時、女児の全身に数十カ所のあざがあり、両親の日常的な虐待も疑われていました。
両親は「2017年10月下旬ごろからご飯を食べなくなった」と言っていたそうです。

■2020年9月 埼玉県美里町 3カ月女児
2020年9月、埼玉県美里町、けがをした生後3カ月の女児が放置され死亡しました。
死因は、低栄養で免疫力が低下したことによる全身機能障害とされました。
父親は「けがをさせたことに間違いありません。虐待で捕まるのが嫌で病院に連れていかず、そのままの状態にしました。」
母親は「病院に連れていかないといけないと思ったが夫に拒否され、従ってしまった」と言っていたそうです。

続いて、車などに放置したことによる死亡事件です。
ニュースでもかなり大きく取り上げられるのに頻繁に起きています。

■2021年7月 千葉県八千代市 1歳女児
2021年7月、千葉県八千代市の集合住宅駐車場、車の助手席で放置された1歳女児が熱中症で死亡しました。
母親が仕事を終えて、女児とその姉を車で迎えに行き、姉だけを自宅に入れたそうです。
母親は「エアコンはつけていた」と言っていたそうです。

■2020年6月 茨城県つくば市 2歳女児
2020年6月、茨城県つくば市で、約7時間車内に放置された2歳の女児が死亡しました。
父親は、朝、お姉ちゃんを小学校に車で送るときに妹の2歳の女児も一緒に乗せました。
そして、自宅に戻ってテレワーク。
この時、父親は「妹を保育園に連れて行ったつもり」になっていたそうです。
お姉ちゃんを迎えに小学校に行き、小学校の駐車場で妹の存在に気付いたようです。

■2018年4月 茨城県那珂市 生後3カ月乳児
2018年4月、茨城県那珂市で、生後3カ月の乳児が車内に4時間ほど放置され、死亡する事件が起きました。
場所は商業施設の駐車場でした。
母親、祖母、1歳の兄の4人で、この商業施設を訪れ、3カ月の乳児に授乳後、数センチ窓を開けて車内で寝かせ、買い物をしていました。
母親は「1時間ごとに乳児の様子を見に行っていた」と言っていたそうです。

車内に放置ではなく、置き去りした事件もありました。

■2020年9月 香川県高松市 6歳女児と3歳女児
2020年9月、香川県高松市内の駐車場に止めた乗用車に、6歳と3歳の姉妹が半日以上置き去りにされ、熱中症により死亡しました。
母親は、知人男性と複数の飲食店を飲み歩いていたそうです。
車内には飲みかけの水や食べかけのパンがあったそうです。

自宅に放置して死亡したという事件も起きています。

■2020年7月 東京都台東区 生後3カ月女児
2020年7月、母親が東京都台東区の自宅マンションに生後3カ月の女児を16時間にわたって放置して外出、翌日、女児は死亡していました。
母親はシングルマザーで、「生活費を稼ぐために外出していた」と言っていたそうです。

自宅のクローゼットに閉じ込め死亡した事件も起きています。

■2021年6月 北海道札幌市 2歳男児
2021年6月、北海道札幌市の自宅クローゼットに2歳の男児が30分間にわたって閉じ込められ、心肺停止の状態になり、翌日死亡しました。
母親は「言うことを聞かないので閉じ込めた」と言っていたそうです。

虐待なのか、虐待ではないのか

車内や自宅での放置は虐待事件になりますが、マンションでもベランダに放置して転落事故が起きたというニュースもありました。

2019年1月、大阪市浪速区で2歳の男児がマンションの3階から転落し、死亡しました。

母親は「子どもがおもちゃを散らかして片付けないので、ベランダに出した」とし、「10分ほどして様子を見ると転落していた」と説明しています。

厳冬期に外に締め出すことは身体的虐待に当たるようですが、この事例では虐待はないと判断されたようです。

虐待なのか、虐待でないのか、私には判断することはできません。

マンションのベランダに放置すれば、転落死するおそれは否定できません。

以前、家庭でのしつけの範囲として思われていたことが、今では虐待と思われ、児相へ通報されるようになりました。

今後、世間の見方が変われば、同じようなケースでも虐待事件と扱われるようになるのかもしれません。



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