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イベントレポート: デザインセンター松井晶子がDesignship2023に登壇!

2023年9月30日~10月1日に開催されたDesignship2023。
新コンセプト「広がりすぎたデザインを接続する」を掲げ、4年ぶりのオフライン開催を果たした国内最大のデザインカンファレンスに、富士通デザインセンターから松井晶子(メインセッション)、杉妻謙(パネルディスカッション)、インスピラボチーム(ワークショップ)が登壇。また、企業ブースの出展を行いました。
 
この記事では松井のメインセッションの内容を中心にご紹介します。


スピーカー紹介

松井 晶子
富士通株式会社デザインセンター戦略企画部所属。
製薬会社でDXを推進する中で「デザイン」の必要性を感じ転職。コロナ禍の中、日本の豊かさと共にそれぞれの地域が抱える課題と可能性を知り、現地で様々なデザインアプローチを実践する。





「地域の社会課題に企業が取り組む理由とは?」セッション概要

私たちの周りにあるさまざまな社会課題。社会課題は複雑で、ひとつの会社やひとりの人間が抱えられるものではありません。
社会問題を同じ志に繋げ「みんなの問い」に変換することが必要です。
我々、富士通デザインセンターが、いま本気で取り組んでいる活動です。

そして、これからのデザインは企業への貢献(ビジネスインパクト)だけではなく、長期的な社会の投資(ソーシャルインパクト)の両方が必要であり、そのバランスが重要だと我々は考えています。

昨年は同僚の横田が、デザイン起点での社会課題解決の仕組みづくりについてお話ししました。

今回は、私が社外のステークホルダーと連携して進めている地域課題解決、佐渡島のプロジェクトの試行錯誤の様子をお伝えします。

佐渡島で行った課題探索

佐渡島での取り組みは、地域が持つ課題のくくり出しと施策の実施、そして検証で構成されています。
まず、調査はフィールドワークやインタビューなど定性的な情報を重視しました。調査が進むにつれ見えてきた島の課題は、人と人、コミュニティとコミュニティをつなぐファシリテーターの不在です。
 
それぞれのコミュニティが孤立しているため、コミュニティ内で同調圧力やしがらみが生まれやすくなっていました。また、共創の場が少ないため、起点となるプロジェクトが立ち上がりにくいという問題も分かってきました。

私たちは、この「ファシリテーターの不在」を解決するために、佐渡の豊かな食資源を生かした、島の高校生とシェフの2日間限りのディナーイベント「Gachiコミュニティレストラン」を企画しました。
「Gachi」という言葉には高校生も大人も、汗水書いてとにかくガチンコで取り組もう、という思いを込めています。

我々が「Gachiコミュニティレストラン」を通じて達成したいことは次の3つです。


  1. 高校生が食を通して、社会の仕組みを学び、食のビジネスを認識すること

  2. 佐渡島の人たちを、このレストランイベントでつなげること

  3. 高校生のチャレンジを新聞やテレビなどのメディアで発信することで、新しいチャレンジに対する受容性を上げ、佐渡の大人たちを刺激すること


 また、高校生とプロフェッショナルとの交流や彼らの自立心を養うこと、といった次の世代を元気にしたいという狙いもありました。
注:イベントは10/8,9に開催され、大好評のうちに終了しました。

社会課題の中でデザイナーが発揮できる力

最後に、私が佐渡島のPJで学んだ「社会課題の中でデザイナーができること」についてお話します。

まず、地域プロジェクトにおいて、住民との信頼関係が重要なのは周知の事実です。しかし、信頼関係の構築は簡単ではありません。

 私が心掛けたのは以下の3つです。

間に入りつなげる
まずは人と人の間に入りファシリテーターに徹すること。そして出会っただけでは人は繋がりません。各々の言葉を丁寧に翻訳することが必要です

飲み込み 共感する
次に、相手の話すことを受け入れ、話の向こうにある思いに集中します。相手が心地よいと思う距離感に合わせると、本音を引き出すことができます

創造性を引き出す
そして、タイミングを見て、相手の背中を押すことにチャレンジしました。今回は高校生の創造性を引き出すべく、ポスターやチケットのデザインをしてみないかと声掛けをし、私から高校生にデザインの主体性を移していきました。こうした積み重ねで彼らの自己肯定感が上がっていくのを感じることができました。

この3つに加えて、メンバーそれぞれの志をリフレーミングして1枚の絵として表現することを心掛けました。メンバーの思いが一見違っているように見えても、実は目指すゴールは同じであることをみんなに気づいてもらうためです。

デザインが触媒になり、メンバーの内発性を触発し、主体性の獲得にもつながったと考えています。
 今回の、佐渡島におけるソーシャルインパクトの土台作りは、今後のビジネスインパクトにつながる機会創出の探索につながると考えています。そして、この探索は我々富士通デザインセンターだけでなく、みなさんとともに取り組むことを願っています。

登壇後インタビュー

松井のDesignship登壇後に、社内でインタビューを実施しました。

---松井さん、登壇おつかれさまでした!登壇した感想や手ごたえはいかがでしたか?
 
松井:
本番まではすごく緊張していました。というのは、現場のリハーサルで初めて分かったことがあったり、当日のリハーサルの後でスクリプトを変えたりということがあったからです。

今振り返って、一番印象に残っているのは、本番直前に舞台袖でプレゼンの練習をしている時、登壇のお手伝いしてくれた同僚の皆さんの顔が頭の中に浮かび、強調する箇所を変えようと思ったことです。それにより、「松井晶子」目線のストーリーを、「富士通デザインセンターの松井晶子」目線のストーリーに近づけた気がします。
私のセッションを聞かれて、富士通の取り組みに驚いた方も多かったようで、登壇後は他の会社の方からお声がけいただき、その中には今後につながる出会いもありました。

---そもそも、今回のDesignshipで松井さんが登壇するきっかけは、どのようなものでしたか?

松井:去年、横田さんが登壇するDesignshipを配信で見ながら、家族に「この舞台に、来年は私が出るよ!」と宣言したら、今年は本当に会社から登壇のお話をいただきました。お話をいただいた時は、「来たな」という気持ちと「本当に?」という驚きのどちらもありましたね。
去年のセッションは「社会課題への取り組みを始めるデザインセンター」というストーリーでしたが、今年は私が手掛けた事例をお届けしています。
去年のセッションに心から共感していたので、佐渡のプロジェクトを紹介して去年のストーリーを強化したいと思っていました。
 
登壇の準備を通して「Gachiコミュニティレストラン」のプロジェクトを振り返ることもできました。企業として地域課題を解決するにはソーシャルインパクトだけではなくビジネスインパクトも絶対に必要だと、改めて感じています。自分一人でカバーできなければ他のメンバーがジョインするなどの方法もあるでしょう。

---このイベントから1週間後に「Gachiコミュニティレストラン」も本番を迎えました。そちらはいかがでしたか?

松井:
大成功でした。終わった今となっては最高の気分です。
レストランのチケットは本番3日前に完売したのですが、当日はスタッフの頑張りもあって、飛び込みのお客様もお迎えできました。地元のテレビ、新聞などで取り上げていただいたり、市長に来訪いただいたりと、みなさんに好意的に迎えていただいて、プロジェクトの狙いの一つである、新しいものに対する島の皆さんの受容性の向上にもつながったと思います。
 
そしてレストランが終わった後に、地元の方から活動を引き継ぎたいとお申し出がありました。こうやってプロジェクトが私の手を離れて地元の人に継承されるのも、狙い通りでとても嬉しいです。

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