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エキマトペに見る、社会課題解決とデザインの可能性 ~駅での実証実験から本の出版まで

近年デザインが取り扱う領域は、サービスや体験などかたちのないものにも広がり、富士通のデザインセンターにも「社会課題をデザインの力で解決したい」という志を持って入社してくるメンバーも増えました。

今回は「エキマトペ」とその周りで起きたことを中心に、エキマトペのプロジェクトリーダーであり、6月末にソーシャル・イントラプレナー(社会課題を解決する社内起業家)としての働き方についての本が発売された本多の取り組みや想いなども合わせてお伝えします。エキマトペについて改めて知っていただくとともに、デザインやテクノロジーの力で社会課題を解決するひとつの事例、働き方としても参考にしていただければ幸いです。この記事はやまが担当します。



エキマトペとは?

駅のアナウンスや電車の走行するときの音などの環境音を、文字や手話の映像、オノマトペやアニメーションで視覚的に表現する装置。川崎市立聾学校の子どもたちと一緒に毎日の鉄道利用がより楽しく便利になるように考えたアイデアがベースになっており、富士通とJR東日本、大日本印刷株式会社(DNP)、株式会社JR東日本クロスステーションがプロジェクトチームを組み開発した。
【参考】エキマトペ公式サイト


エキマトペはこれまでに各所で紹介されています

エキマトペについては、ありがたいことにこれまでにも富士通内外のいろいろなところで紹介されています。その一部をご紹介します。
 
日本財団ジャーナルでは、本多のインタビューを交えながら、開発の経緯なども詳しくご紹介いただきました。

富士通のデザイン公開サイトでも、手話動画の制作にご協力いただいたJR東日本の駅員さんたちと本多の鼎談を記事にしています。
(実はこのとき、やまも現場にいたんですが、本当にみなさんの熱い想いが伝わってきてとても楽しい取材でした)


SNSでもマンガになったり、動画になったりしました

エキマトペは、上のような公式のサイトだけではなく、SNSなどを通じて聞こえない方や聞こえにくい方などからも多くの反応をいただきました。その中で、やまが印象に残っているのはうさささんのマンガ投稿と、うえまさんのYouTube動画です。

うさささんの描かれたマンガ正解の音たち 」では、私が日頃特別に気に留めていないような環境音が聞こえないことで、うさささんは普段こんな感じ方をしているんだと衝撃を受け、読んでいて涙が出てきました。当事者の立場に立って、というのはよく聞く言葉ですが、やはり実際の声を聞くことの大切さを痛感しました。

また、うえまさんの動画【感動】駅アナウンスをリアルタイムで映像化されていたでは、とてもわかりやすくエキマトペの巣鴨駅での実証実験の様子が紹介されていて、その後JR東日本さんや富士通の担当者と話したことや気づきなどもシェアしてくれています。

その他にも、実際に巣鴨駅や上野駅で実証実験を見てくれた方や、エキマトペのことをネットやメディアを通じて知った方々がSNSで話題にしてくれました。(関心を寄せてくれたみなさん、ありがとうございます!)

各賞の受賞から、国際会合での出展、書籍の発売まで

エキマトペはこれまで、Good Design賞、IAUD国際デザイン賞などに選んでいただき、G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合の「デジタル技術展」にも出展するなど、多くの方に知ってもらう機会をいただきました。
第17回キッズデザイン賞を受賞しました。2023年8月30日追記)

さらに2023年6月には、本多の著書SDGs時代のソーシャル・イントラプレナーという働き方』 が出版。本書では、ソーシャル・イントラプレナーとしての働き方 を、野中郁次郎教授落合陽一さんなど様々な分野のエキスパートたちと対談を行うなどして紐解いており、前出の富士通のデザイン公式サイトのエキマトペの鼎談記事も掲載されています。


エキマトペのプロジェクトリーダーである本多のパーパスと取り組み

本多は大学時代にろう者の友人ができたことがきっかけで、聞こえない人や聞こえにくい人を含めた多くの人の世界を豊かにするようなプロダクトやサービスを生み出すことに取り組んでいます。2016年に富士通に入社してからOntenna(音の大きさやリズムを振動と光で伝える身体装着装置)の製品化に取り組み、現在では8割以上のろう学校でも導入されています。
【参考】Ontenna公式サイト

そんな本多のパーパスは、「デザインやテクノロジーを使って社会に多くの笑顔を生み出す」。(富士通では、社員一人ひとりが自身の半生を振り返り自分が大切にしているものを再確認しながら、自分自身のパーパスを言語化する「パーパスカービング」を行っています)

エキマトペのことを本多は「テクノロジーを使って多様性を尊重する考えを広めていき、サステナブルな社会をつくっていくことを目指すプロジェクト」と話していました。まさに自ら自分のパーパスを実現するプロジェクトを創り出し、世に送り出しているといえるのではないでしょうか。
 
これまでの本多の取り組みや想いは、富士通のフジトラニュースでも紹介されています。興味を持たれた方は、こちらの記事もご覧ください。


企業に所属しながら、社会解決に取り組むということ

様々なスタンスで「自身の想いやパーパスを叶えたい」「社会課題解決に取り組みたい」と考えている人がいると思いますが、今回は、ソーシャル・イントラプレナーとして活躍を続ける本多に、社会課題解決に取り組む際に大事にしていること、自身の働き方や想いなどについて聞いてみました。

Q. いろいろな働き方がある中で、ソーシャル・イントラプレナーであることのメリットは?
まず、会社のリソースを活用できること。各分野のプロフェッショナルな人材やものづくりのノウハウなどを活用してプロジェクトを推進できますし、会社のブランド力やネットワークを生かすことで、周りの協力が得やすくなったり様々なステークホルダーにもリーチできたりするメリットもあります。また、資金調達や自分の生活の心配をしなくてよいという点も挙げられます。
 
Q. ソーシャル・イントラプレナーとして、社会課題解決に取り組むときに大事にしていることは?
社会課題解決に取り組むこと自体も大事ですが、常に所属する会社の価値を押し上げることを考えることも必要です。会社のパーパスとプロジェクトの方向性を合わせることで、会社がそのプロジェクトを存続させる理由を見出せるようにしておくこと。またプロジェクトに関わったメンバーのマインドや業務にもプラスの影響を及ぼすことができるのも、ソーシャル・イントラプレナーが果たせる1つの役割かなと感じています。
 
Q. 「社会課題解決に取り組みたい」と思っている人が、ソーシャル・イントラプレナーの最初の一歩としてできることはなんでしょうか?
まずは自分の想いを社内で発信すること。そうするとできないことを手伝ってくれる人が見つかります。まだ身近に感じる社会課題が見つからないという方は、地域のボランティアやSDGs関連のイベントに参加してみてください。現場での気づきや当事者との会話から感じることがあるはずです。
 
 
この記事が少しでも、みなさんのよりよい働き方や自身のパーパスを実現するためのヒントになれば幸いです。ぜひ、感想などもお寄せください。


最後にGood Job! Projectさんが、本多にインタビューして書いてくれた素敵な記事を見つけたので、ご紹介しておきます。
(Good Job! Projectさんありがとうございます!)


社会課題について楽しく学ぶトークイベント「目的地は鬼ヶ島」に本多が出演しました!(2023年9月14日追記)


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