18.ストロベリーファームは腰が死ぬ
このファームのトップピッカーが言うには、
ピーク時には週に10万円ほど稼げていたが、2週間前に『ヒョウ』が降ったことにより、ストロベリーが壊滅的な状態になった。おかげで今はほとんどストロベリーを取ることができない。
スタンソープでは、何年かに1度ヒョウが降るらしく、ヒョウの被害にあったファームは、回復が非常に困難な状態になるのだ。
なんというタイミングで来てしまったのか。
『あ、でもサンは、もうすぐビッグシーズンが来るって言ってたんですけど・・・』僕
『コントラクターはいつもそう言うよ笑』男
『えー・・・』僕
『まあ、頑張ってください』男
そうだ、なんとか頑張って金を稼がなければいけない。
とにかく明日からやってみようと思った。
1月のオーストラリアは夏なのだが、スタンソープの朝と夜は寒く、暖房がないと眠ることができない。
と言うのも、スタンソープの標高は約800mほどあり、東京の高尾山よりも300mほど高いのだ。
次の日、早速仕事が始まった。
朝の7時前にワーカーが集合し、そこから『トロリー』と呼ばれる乗り物を取ってストロベリーが生っている場所まで押していく。
トロリーに乗ったワーカー達が、まるで競馬のスタートのように、ストロベリーの生えているレーンに並ぶ。
そして、足で地面を蹴りながらトロリーを前に進め、地面にあるストロベリーを採っていく。
ストロベリーピッキングと聞いて、日本のイチゴ狩りを想像する人もいるだろう。日本のイチゴ狩りだと、イチゴは取りやすいように腰より上にあることがほとんどだ。
しかし、オーストラリアのストロベリーは、地面に近い位置にある。
そのため、常に腰を曲げて草をかき分けてストロベリーを見つけて、ヘタの少し上にある茎を「ポキっ」と折って取る。この作業をひたすら繰り返すことになる。
これで、腰を殺すことができるのだ。
採ったストロベリーは、トロリーの前にストロベリーを入れるためのトレイに入れていく。
トレイがストロベリーでいっぱいになると、トレイを交換し、トレイを積み上げていく。
ある程度トレイが積み上がると、トロリーが重くなって動かすのが大変になるため、トレイの重さを測り、売り物にならないストロベリーがトレイに入っていないかチェックを受ける。
その時に売り物にならないダメなストロベリーがあると、容赦無く捨てられる。
ここで計測された重さに、「レート」を掛けたものが僕たちの給料となる。
この流れを朝7時ごろから、午後2時ごろまでやる。
ストロベリーピッキング初日、この日僕が稼いだ金額は、約3000円ほどだった。
それに加え、強烈な腰の痛みも手に入れた。
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