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名付けてエニグマスタイル/天下をとるSNSはiPadに優しくあれ/『化学の授業をはじめます。』を読み終えました/植木等とセックス•ピストルズとクレイジーケンバンド/アメコミビブリオバトル合同同人誌のこと/etc

 ツイート/ポストにせよnoteにせよ、自分の場合まずテキストエディタで下書きを書くようにしているのだけど、色々と思うところあり、今年からSNSについては、そうやって書いたものをただコピペするんじゃなく、丸っとスクリーンショットしたりお絵描きAppで整えたりして、画像で投稿するというスタイルを試し始めています。

たとえばこんなのを作って投稿する。別段たいしたことは書かない。
(でもこの試聴アイコンはなかなか助かります本当に)

 別に、長文スクショ投稿なんていまさら珍しくも新しくもないやり方なんでしょうし、実際自分も以前からちょくちょくやってたわけですけれども。
 ただ、文字数を気にしなくていいという以上に、画像化という手順を一個挟むことで、各SNSと程よい距離をはかれるような感覚があって、かなり気が楽になってます。たとえ10字に満たないほどの内容であっても、今後はガンガンこの形式でやってやろうと思ってる。

 タイムラインの外側に居を構えつつ、それでいてすべてのSNSに同時に関与することもでき、まとめればこのようにnoteにもなるこのスタイルに、現行X-MENシリーズから採って〝エニグマ〟と名付けました。SNSがキツくなったり、引越し先に悩んだりしている人たち、スパッとやめちゃうのも手だけど、こういう道もありますよ。みんなでドミニオンに達して、エニグマになろう。


 というわけで、エニグマの構えから益体もなきことをチビチビと書いては、BlueSkyとThreadsとXへ投げ込みながら、SNSの趨勢を見守っています。

Fuji-ta - BlueSky
Fuji-ta - Threads
Fuji-ta - X

 招待制じゃなくなったBlueSkyに活況の兆しが見える一方、個人的には、タイムラインを読むだけであれば案外Threadsにいちばん落ち着きを感じる。Facebook/Instagramの文脈からいっしょくたに揶揄されがちだけど、フォローやいいねの傾向を汲んでくれて、充分な文字数でさまざまな本や読み物の話が流れてくるからわりと心地良いです。コミュニケーション重視ならBlueSkyなのかもしれないが、そこは結局、こういうミニブログ的なSNSに何を求めるかですなあ。直接的に人とやり取りしたいというよりは、読んだり書いたりを楽しむ延長線上にコミュニケーション〝も〟ある、くらいの感じがいいのかな、自分にとっては。

 BlueSkyのほうはといえば、ユーザー増加に伴い、Appの使いづらさを訴えるiPad使いが増えていて心強い。本当に使いづらいんだ。

過去ツイートより

 こんな感じで、ちょっと気を抜くとすぐに横長で見辛いレイアウトに化けてしまう。アップデートが入るたび一瞬だけ直るけど、秒で元に戻ってしまう。正直、利用自体をくじけかねないレベルの見辛さ読み辛さなので、いまこのタイミングでちゃんと対応してほしい。

 というかね、BlueSkyにもThreads(あとインスタも!)にもいえることですが、仮にもこれから天下とろうってんなら、ちゃんとiPad OS向けのAppを用意していただきたい。Xにはありますよ。Xにだけあるなんて、恥ずかしいことだと思わないか。
 TwitterはTwitterで、とうとうiPadにスペースを実装してくれなかった。これもひどいと思っている。そんなにもスマートフォン中心の社会なのか。iPhoneを各種支払い機能付ポケットWi-fiぐらいの使い方しかしていないStupid iPad-manなので、こういう時に寂しい思いをしていますよ。androidだとこの辺の事情はどうなってるんだろう。


 ボニー・ガルマス『化学の授業をはじめます。』(鈴木美朋 訳、文藝春秋)を読了。すっかり堪能しました。本年の娯楽小説ナンバーワン候補ですね。みんなに読んでほしいので、またあらすじを引用させてください。

 舞台は1960年代アメリカ。才能ある化学の研究者エリザベスは、いまだ保守的な男社会の科学界で奮闘するが、無能な上司・同僚からのいやがらせ、セクハラの果てに、研究所から放り出されてしまう。無職・未婚のシングルマザーになってしまった彼女がひょんなことからゲットした仕事、それはテレビの料理番組「午後六時に夕食を」で料理を指南する出演者だった。「セクシーに、男性の気を引く料理を」というテレビ局の要望を無視して、科学的に料理を説くエリザベス。しかし意外にも、それが視聴者の心をつかんでいく……。

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163917979 より

 特に海外のエンタメに慣れてる人ほど、梗概から「なんとなくこういう感じかな?」と読み味を想像されると思いますが、おそらくあなたの予想よりもこのボートは軽やかで、オールは重くて、これを水面に走らせるエネルギーは魂にも効きます。

 前にちょろっとだけ書いた前半の感想はこちらに。後半からは、ついにショービズの世界に迷い込んだエリザベスの快進撃がスタート! 序盤から絶えずのしかかってきた男性優位の構造と、それによって野放しになった邪悪が、テレビの世界でも形を変えて襲ってくるけれども、同じくもの言えずにいた多くの視聴者と連帯を深めながら前に進んでいく様は痛快であります。
 彼女の行く先々に登場する、そうした構造の象徴のような下衆い輩たち一一物語内で果たす機能としては同一キャラクターとすらいってもいいが、残念ながらそうではなくてマジでこの程度の手合いはあちらこちらにウジャウジャいるんだわ、いるでしょ、と念押しするがごとく、きっちり計3名出てくるーーを除くと、キャルヴィン、シックス=サーティ、マデリン、ハリエット、ウォルター、ウェイクリー、フラスク、誰もかれも満身創痍な登場人物がみな愛おしい。”ボーイズ、っちゃそうなんだけど、総じて気のいい英国紳士的スポーツバカな漕艇関係者のみなさんもぼくは好きでした。

 そしてアメコミ読者/Agent of G.I.R.L.としては、舞台設定も作品形式も著者も出版社も違えど、『化学の授業をはじめます。』こそは若き女性科学者/ヒーローチームコミック不滅の傑作UNSTOPPABLE WASPの前日譚だと断言したい。

Jeremy Whitley, Elsa Charretier〈UNSTOPPABLE WASP (2017)〉 #1, 2より

 忘れられた科学者ボビー・モース、名乗り出るまでムーンガールを見つけられない世界の賢者様ランキングから始まり、〝家族の木〟のテーマも含めて、全部繋がってます。Jeremy Whitley was right!

 で、『化学の授業をはじめます。』とUNSTOPPABLE WASP誌の近くに、ジュディ・ダットン『理系の子 高校生科学オリンピックの青春』を置いてあげると、科学を志すすべての人のための美しい三角形が描けそう。こちらも久々に読み返したいな。


 2月11日(日)は、いちばん好きな作家、殊能将之センセーのご命日でした。

 名作『ハサミ男』の中に、植木等「スーダラ節」の歌詞でセックス・ピストルズ「プリティ・ヴェイカント」を歌うコミックバンドという妙に印象を残す場面があって、いや歌えるかー!っていうギャグなのだろうとは初読時からうすうす気付きつつも、でもこれ、実はどうにかしたらうまくハマるんじゃないのか?という疑いも心の中に抱き続けています。
 ふと思い立ち、YouTubeのそれぞれの公式チャンネルを覗いて、スーダラ節を倍速再生したり、プリティ・ヴェイカントの速度を落としてみたりしながら検証してみた。

動画とにらめっこしながらそれぞれをすり合わせていく

 依然糸口すら掴めないけれど、スーダラ節はめちゃくちゃいい曲だと再確認しました。

 この日は久々に、センセーが激賞しておられたクレイジーケンバンドの名盤『ZERO』も聴き返した。偏頭痛がひどい日でもあったんだけど、剣さんの歌声で治りましたよ。

「猫」「蜂」「零」「亀」など漢字一文字タイトルが妙に目立つ名曲群の中、いつ聴いても痺れるのは「夏」の途中でいきなり引用される「高校三年生」のメロディ、からシームレスに歌い上げられる自身の初期衝動、そしてうんと年の離れた世代に混じってライブで戦う現在の情景へと繋がっていくところ。『♪アーアァ〜アーアァァァ〜…高ー校ー、2年の夏は終わらない 俺だけが取り残されまわりは皆世代違い 汗かいてマイク握り客を呼び込み』

『ハサミ男』のサウンドトラックことXTC『Drums and Wires』、これは日頃しょっちゅう聴いています。


 あまりにもサイレントリスナーすぎるから喝っちゃんを名乗るのはおこがましくてできないけれど、袋とじも含めて何周もループするくらいにはオトステのファンなので、一昨年のM-1はウエストランドを応援したし、去年のKOCはジグザグジギーを応援したし、もちろん今年のR-1ではルシファー吉岡を応援するに決まってるわけです。
 でも、話題のどくさいスイッチ企画がYoutubeにあげている創作落語群がどれも抜群に面白くて、ここ数日聴き漁っています。どっちも頑張ってほしいよ。

 吉住も街裏ぴんくもいるし、トンツカタンのお抹茶がめちゃくちゃ面白いという噂も聞くし、いつになく決勝が楽しみです。


 先日行われたアメコミビブリオバトル合同同人誌のオンライン感想会。ぼくも参加させていただきました。

NARATANIさんによる最高のカバーアート! 本文も充実だ!

 同イベント参加メンバーがコミックについての原稿を自由に書いて持ち寄ったもので、昨秋の文学フリマと昨年末のコミケで頒布されました。今後もそういう機会がまだあると思いますので、折がありましたらどうぞご笑覧ください。特にX-MEN: クラコア系列全誌追い勢の皆様には、とまさんの『地球の歩き方 クラコア』が載ったことによって本書も〝全誌〟に含まれたということをお伝えしておかねばなりますまい。2019年以降に作られたX-MENファンメイド作品として間違いなく世界最高峰に連なるもののはずです。ぜひぜひ。

 主催のお二人 アメージング太郎さんMAIKOさんとは、以前勤めていた古書店でアメコミ・海外コミックを担当していたことでご縁を持ち、催しの初期から混ぜてもらっています。ぼくが書いたページでは、そのあたりの経緯をかんたんに振り返りつつ、以前のバトルでうまくできなかったFUTURE FOUNDATION誌 (2019)の紹介に再チャレンジしています。(Jeremy Whitley was right!)

「どうもこんにちはアメージング太郎です」はニンジャスレイヤーすぎるだろ、
っていう話し合いはすでに行われました、ちなみに。
(提出からずいぶん経って気付きました)

 ……これはこれで自分の中では必要な工程だったのですが、本題に入るまでに冒頭3ページ・4000字に渡ってこんな調子で虚実入り混じった〝びぶりお道〟を書き散らかしまして。
 なので原稿の提出からこっち、誌面で浮いていやしないかずーっとビクビクしていたわけですが、今回の感想会で、笑って読んでくださった方もおられることが判明し、とにかく安心しました。もちろんFUTURE FOUNDATIONを読んでもらえるのが一番ですけど、笑ってもらえるのが何より嬉しい。このあと、締切を守らなかった廉で裁きを受けることにはなると思いますが、少なくとも胸を張って沙汰を待つことができそうです。次回書く題材を考えながら、アメージング太郎さんの急襲に備えているところ。


 ついでにアメコミ周辺の雑感をもうひとつ。いよいよ5月刊行群でエンディングを迎えそうなクラコア期X-MEN、しかし主要ライターが変わりながらもそれなりに長く続いたラン(ほぼ5年!)なわけだし、オメガ的なフィナーレ的な、厚めのワンショット誌が最後にあと1冊あってもいいじゃないか、という希望を述べておきます。アベンジャーズだとあるじゃないですかそういうの。ポストクラコアの物語も楽しみな6月、もう一花だけ待ってますね。

 ところで、セブルスキ氏がかつてインタビューで述べた『マシュー・ローゼンバーグのUNCANNY X-MEN誌で起こったことはヒックマンの物語と繋がる』の件は解決してます? ヒックマンとともにその構想も消えたのかしら? これについてもまだ待っていますよ。

ジョナサン・ヒックマン『HOUSE OF X』の開始前週まで連載されていた、マシュー・ローゼンバーグ脚本のUNCANNY X-MEN誌。全滅寸前で最後の戦いに挑む、サイクロップス率いる異色編成・レジスタンス型X-MENが熱い好シリーズながら、その後半、UNCANNYの大看板の下でカタストロフなその作風を剥き出しにしたローゼンバーグの作劇には賛否が分かれた。特に読者の批判を集めた17号のある描写などは確かに配慮に欠け明らかに練度も甘かったが、それをローゼンバーグただひとりが謝らせられたり、同時期のイベント『WAR OF THE REALMS』とのスケジュール調整が噛み合わなかったせいでとりわけシビアなエピソード群の刊行順が前後してしまったりと、編集もうちょっと助けてあげてはどうかと気の毒になることも多々(クラコアの準備で大変だったのはわかる)。セブルスキ氏のインタビューで仄めかされているとおりこの物語がヒックマン構想と無関係ではないのだとして、それにしてはローゼンバーグがひとりで泥を被らされた感が強くて、当時一部の本国ファンダムにあった『ウェルカムヒックマン、バイバイローゼンバーグ』な空気はちょっとあんまりだよなと思ったものです。(熱を帯びた注釈)

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