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漫才論| ¹⁰⁸M-1決勝の審査員はどんな「基準」で審査している❓

今年のM-1決勝の審査員はいつも以上に大変そうな気もしますが,どんな審査をしても,結局誰かしらに文句を言われます。なぜかというと,「笑い」というのはほぼ「好み」の問題で,本来審査のしようなどないからです。それに輪をかけるように,M-1の審査基準は「とにかくおもしろい漫才」というあってないような"基準"ですから,「公平な審査」などやりようがありません。ですから,どんなに頑張っても「誰かしらに文句を言われる」というなかなかつらい仕事です

そうは言ってももちろん,単なる「好き嫌い」だけで判断しているわけではなく,少なくとも次の7つの点を考えながら審査している審査員が多いのではないかと思います

❶会場のウケ
❷漫才ファンにウケそうか
❸一般視聴者にウケそうか
❹漫才師とネタの仕上がり具合
❺当日の出来
❻自分の好み
❼世間体

❶~❸についてはこちらの記事で書きましたので,それに以外について書きます

❹漫才師とネタの仕上がり具合

ネタをみて,よく「仕上がっている」という言い方をすることがあります。「仕上がっていない」というのは,迷いや無駄などがある状態のことだと思います。例えばM-1でいうと,2005年のチュートリアルや2018年のかまいたちにそういう印象を受けました。どちらも翌年のM-1では「仕上げてきたな」というかんじがしました(チュートリアルは翌年優勝,かまいたちは翌年ミルクボーイに次いで2位)

逆に,仕上がっていない「粗削り」な状態が高く評価されることもあります。2002年の笑い飯がまさにそれです。そこに素質が見え隠れしている場合,粗削りの尖ったかんじが妙に魅力的に映るのだと思います

❺当日の出来

この点については特に書くことはないかなと思いましたが,何かご質問などありましたらコメントをお願いいたします

❻自分の好み

「好き嫌い」だけで判断するということはもちろんありませんが,それでも,審査に一番大きな影響を与えているのが各審査員自身の「好み」だと思います。「『好み』なんかで判断されては困る」と思われる方もいると思いますが,冒頭で述べたように,「『笑い』というのはほぼ『好み』の問題で,本来審査のしようなどないようなもの」で,❶~❺のその他の要素によって調整はするものの,最大の決め手は「好み」だと思います

私はそれでいいと思っていますし,むしろ,「『笑いは好み』を共通認識として全面に押し出したほうがいい」と思っています。例えば,「正統派漫才が好きな審査員」「ベタな笑いが好きな審査員」「下ネタは絶対に認めない審査員」「それとは正反対の審査員」などなど,審査員の特徴を表に出して,その人の「好み」という基準でバシバシ審査してもらったほうが清々しいです

「好み」で審査するといってもそこはみなさんプロです。しかも,決勝に関しては「審査員も審査されている」ような状況ですから,許容できないほど偏った審査をする人はそうそういないでしょうし,全体のバランスは審査員の「人選」によって取ればいいと思います

❼世間体

「世間体」という言い方が適切かどうかは分かりませんが,年々低い点数が付けにくい雰囲気になってきているような気がします。初期の頃は,点数の付け方に関しては特に「手探り状態だった」というのももちろんありますが,60点台70点台もバンバン出していて,50点台が出ることもありました

M-1グランプリ各大会ごとの最低点

2001【50】おぎやはぎ [島田紳助]  チュートリアル [松本人志]
2002【50】スピードワゴン [立川談志]
2003【70】アメリカザリガニ [松本人志]  千鳥 [松本人志]
2004【76】東京ダイナマイト [大竹まこと]
2005【70】アジアン [松本人志]
2006【75】変ホ長調 [松本人志]  POISON GIRL BAND  渡辺正行
2007【75】POISON GIRL BAND [島田紳助]
2008【80】ザ・パンチ [松本人志]
2009【80】ハリセンボン [松本人志]
2010【79】ジャルジャル [中田カウス]
2015【83】馬鹿よ貴方は [石田明/吉田敬]  ハライチ [吉田敬]
2016【81】カミナリ [上沼恵美子]
2017【83】マヂカルラブリー [上沼恵美子]
2018【80】ゆにばーす [松本人志]
2019【82】ニューヨーク [松本人志]
2020【85】アキナ [松本人志] インディアンス [塙宣之]  ウエストランド [塙]  東京ホテイソン [塙]

最近では70点台も出ていないことが分かります。「場合によっては70点台でも60点台でも出すよ」という雰囲気がもっとあってもいいような気がします。「今年はランジャタイが出してくれるんじゃないか」という変な期待もかかっていますが・・・

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