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MANABIYA Report vol.03【近藤清人さん】

2017.5.26(金)19:00~21:00/00.Work Shop space & Office

『社会を変えるデザイン~アイデンティティデザインで想いをかたちに~』
SASI DESIGN代表取締役 近藤清人さん

http://sasi-d.com/

近藤さんの本はコチラ

1.アイデンティティデザインの概要及び事例から

中小企業におけるブランド作りのポイントはその企業の根っこ(根幹)からデザインすること。

●ブランド作りは統一感を持ったイメージ総体づくり
ブランド作りは商品作りではなく、統一感を持った発信を継続的に行いイメージを作り上げていくこと。例えば、高級を売りにしている商品が月末になれば安売りしては、どちらかよく分からないイメージを植え付けさせる。

他人への接し方、発信のしかたなど、人間(セルフブランディング)も同じことが言える。

●ブランドは記憶の中にある
大企業でも個人でも、何かを第三者に伝えようとするときは必ず一言で説明する。大企業はお金と時間をかけ、消費者の記憶に残るよう発信し続けている。しかし、中小企業はできない。

●明快に発信し続けるためには筋の通った発信が必要
アイデンティティデザインとは地域資源と事業者のやり遂げたいことの組み合わせ。

理念(過去)をビジョン(未来)につなぐのがコンセプト(現在)である。

理  念:自己同一性、アイデンティティ、変わらないもの
ビジョン:達成イメージ、アイデンティティを広げたい環境
コンセプト:理念をビジョンに変える戦術

自分の思いを込めた商品を作らないと、自己実現は出来ない。


【事例紹介】
①昌和莫大小株式会社
●課題
・靴下売り場で自社ブランドを売れない
●経営状況
・消費者が靴下にかける費用が年々下落している。
・高級ブランド商品のOEMを取り扱っている
・工場が火災
●アイデンティティ
・社長がファッション好き
・アウトドアやスポーツに興味がある
●商品
OLENOブランド:過去あったブランド名「俺の」をファッショナブルにデザイン
・HADASHIRUN:裸足感覚でランニング、健康増進効果も実証
・BOTTELECOOLER:気化熱を利用して簡単でオシャレにボトルを冷やす

http://oleno.jp/

②銀海酒造有限会社
●課題
・自分らしく販売できない。
●経営状況
・営業が苦手
・既存のお酒を採点するフィールドで自分を表現できない。
●アイデンティティ
・お酒が好きでたまらない
・さまざまな分野に興味がある。(多趣味)
●商品
・稜線:養父市の山並みと自分達の人生をボトルにデザイン、黄色みがかった無濾過のお酒を但馬の夕焼け
にたとえる。
・KATSURA with:フルーツを混ぜて楽しむお酒
→自分の価値観で商品を作ったので、営業出来るようになった。(自分自身を表現出来るようになった)
 OEM商品が無くなったが、売り上げは伸びる

③田治米合名会社
●課題
・種類が豊富にあるお酒の楽しみ方を提案
●アイデンティティ
・世界平和は家庭平和から(家庭が円満になると世界も平和になっていく)
●商品
・白銀比(日本人が心地よいと感じる比率)を用いてロゴ「竹泉」を見直し。
・竹の字を家庭に見立ててデザイン
・各お酒のラベルにお酒の特徴を表現し、食事に応じた日本酒を提案。

2.アイデンティティデザインの誕生とアイデンティティデザインで伝えたいこと

地元を活性化するには地元に居続ける人しか活性化出来ない。
地元の企業が誇りを持つことが大切

●「田舎が嫌い」から「田舎を変えたい」へ
生まれ育ったまちが田舎で田舎が嫌いだった

「かっこいいもの」にあこがれ都会へ

デザインに触れデザインに携わるようになる。そのとき、補助金を使った地域活性化事業に関わるが、ことごとく売れない事例に触れる

地域活性化の現状を体験し、地元「丹波」をデザインしたくなった

●イベントを通じ地元活性化に乗り出すが継続しない事に気づきブランディングデザインを始める

「歌とピクニック」丹波でソーシャルイベント

何も無いのが資源としてイベントを実施

一部補助金をもらったが、自費で主催

赤字と言われたイベントだったが、多くの人が集まり黒字になり成功した

しかし、主催者が消耗しイベントが続かない状況だったため、会社を立ち上げる

●中小企業はデザインを求めているのではなく、経営戦略を求めている。
地域活性化のシナリオ:「中小企業は誇りを持って売り上げを上げる→地域に雇用が創出される→地域が徐々に活性化する」

経営スキルの必要性を感じ、商売を始め経営を学ぶ。

●川上から川下まで、トータルにデザインするのがアイデンティティデザイン

経営コンサルティング→ブランドデザイン→ブランド育成まですべてを網羅して企業をサポート

企業が何をしたいかを確かめてからデザイン

立ち上げたブランドは生まれたての赤子と同じ。ちゃんと育ててあげないといけない。

ブランド育成やデザイナー育成の窓口としてcafé DOORを作る。

●アイデンティティデザインで伝えたいこと
アイデンティティを確立すれば地域がチャレンジし続けることが出来る。

地域らしさを表現し、地域が主体的に販売できる環境の創出。

何のために自分は仕事をしているのか?→自分らしさを感じ、自分らしさを表現し、楽しく仕事が出来る環境

企業、町は人で出来ている。有機的・情緒的な部分を動かすのは人でしか出来ない。

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3.感想・意見交換

①自分・会社/理念
【keyword】楽しむ・自分を認める・情熱と戦略
【質問】何のために仕事をしているのか/今までの自分とこれからの自分や会社
・お金ではなく自分の家族にニコニコ笑って楽しみながら働いている父親を見せたい。
・丹波出身の自分は丹波を認めないといけないと感じた。
・これからの会社の方向性、競合する会社のリストアップ、現在と将来の会社のポジショニング、対象となるエリア選定を行い社内
で共有している。

②相手・クライアント/理念
【keyword】自分事・ブライド・愛着
【質問】これからのコンサルティング業/素敵なマチの条件
・中小企業はコンサルティングに費用を出しづらい状況にある中で現在のコンサルタントはより早く成果をあげるため他の成功事例
 ばかり提供している。他人の成功事例は自分にとって本物でないと同時に、競合する企業が多くなりレッドオーシャン化してしまう
・本当に必要なコンサルティングは自分事として企業と向き合うことが必要で、企業側も自分事として丸投げしないことが大事。
 SASI DESIGNは自分事として向き合える企業と業務を行うので、業務を始めるまでを重要視している。
・業務命令においても、いかに自分事として捕まえるかが重要である。
・素敵なマチはまちの人びとがプライドと愛着を持っており、間口の広さを兼ね備えているかだと思う。

③相手・クライアント/スキル
【keyword】最初の会話、思考のジャンプ、成果と費用
【質問】潜在的ならしさの引き出し方/デザインフィーの設定
・クライアントとのヒアリングの中に「らしさ」が潜んでいる。特に初期に話をした中で出てくる事が多く、その「らしさ」を大切に残し最
 後にデザインに反映させてあげるとクライアントも納得してくれる。
・ヒアリングにおいて自己分析は大事であるが自己分析では差別化だけで生み出していない。次の段階としては仮説と自己分析
 を組み合わせる思考のジャンプが必要である。思考のジャンプはトレーニングが必要。
・デザインフィーに関しては企業に1年間新入社員を雇ったとして考えてもらい、それに見合う成果を提出するうようにしている。

④自分・会社/スキル
【keyword】思いをはき出す、生産性と思考の継続、課題解決の方法
【質問】自分に詰まったときの対応/どこまで突き詰めて深掘りするか(クオリティ)/社会的活動とデザイン
・自分の中に貯めずに思いを出すこと。友人との会話や紙に書き出す。書き出すには出来るだけ図解がよい。
・労働に対しては時間の制限を設けているが、思考に関しては24時間考え生産性を高める必要がある。
・情緒的な要素を取り入れながら課題を解決していくのがデザインであり、自身の社会的な活動にもデザイン的な要素は必要
 である。

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4.振り返って

Designのもつ力、その使い方をまざまざと感じた回でした。

途方もないほどの知識と理論に裏打ちされた近藤さんのお話はとっても力づよく素晴らしかったです。その中で時折見せる優しさや暖かさは、近藤さんが持っている人・マチ・未来に対する想いなんだろうと感じました。

みなさんの質問と近藤さんのご意見を自分なりに区分けしてみました。その中で社会に対する暖かい『想い』を実現するために、技術で切り開く熱い『思い』があるんだと感じました。

海外の低廉な製品や高級な嗜好品に押され、大手電機メーカーの海外買収など『日本のものづくり』は苦境にあるように見えます。しかし、欧米とは異なる文化、戦後のアジアで先進的に発展した日本には独自の豊かな文化が育っており、その文化を生かし機能的から情緒的なものづくりに変化すれば、『新たな日本のものづくり』が生まれるような気がします。そして、その先導として近藤さんのような方々が走って行くのかなと感じました。

いち技術者として学ぶところが大きな回となりました。

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5.参加者からのラブレター

ウェブデザイナー/嶋中 奈都未 さん

vol.03 嶋中奈都未 R

この回では、実際にSASI DESIGNさんで実践された事例をいくつか紹介していただきました。

依頼主さんと多くの時間を共有する中で、潜在的ならしさ(アイデンティティ)を引き出し、唯一無二のものをデザインしていく。だからこそ、つくりだされたものは依頼主さん自身にとって誇れる存在となり、主体性が増していく、そんな好循環が生まれていくのだと知りました。

どの事例もひとつひとつに、依頼主さんと近藤さんの関係性の中でしか生まれ得なかった価値が存在しているのだと感じました。

「継続性のない、意味のないもので終わってしまわないためには、まちの人たち自身が主体性を持ち、創るものに誇りを持つ必要がある」という想いで実践し、さらに発展し続けているところが素敵だなと感じました。

参加者同士の意見交換では、らしさを引き出すためのポイントなどを各々考えてみたりと、とても熱量が高く有意義な時間になりました!

今後自分自身が仕事を進めていく上でも、依頼主さんとの接し方や、迷った時の方向性の考え方などでヒントとなる気づきの多い会でした。

ありがとうございました。

全部で4298文字でした。(タイトル除く)


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