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普段着のまちづくり

僕は兵庫県加古川市の街なかで月一回、学びの場を主催している。
MANABIYA Kakogawa
僕が加古川に生み出したイベント。
なぜ始めたのか。自分の振り返りも兼ねて少しづつ書いていこうと思う。

#08  //////////

今日は少し横道をそれて、数年前に出会った本について書こうと思う。

・ジェイン先生との出会い
今までのやり方に悩んでいた僕。周りの先輩は今までのやり方をやっていた人たちだから、手本となるようなものは僕の周りに無かった。大学ではロクに勉強せず、単位が足らない理由で衛生工学(下水道ってやつ)に進んだが、よこしまな気持ちでやっていただけに身になっていない。都市計画に関する知識もツテも無く、何もない状態からのスタートだった。学校に通い直すほど時間もお金も無く、ネットでそれっぽい記事を読むくらい。ただ、本は30代半ばくらいから少しづつ読んでいたので、何かいい本は無いかと思っていた。そんなとき、ふと手にした本。

「常識の天才 ジェイン・ジェイコブス」

ネットで少し名前を見て覚えていたので、手に取って読んでみた。そこにはジェインの生い立ちが書いてあった。
ざっくり言うと、都市計画に関して素人だった女性が鋭い観察力と洞察力でこれまでの都市計画を批判し、使う人の立場に立ったまちのあり方を説いた人。芸術のように「まち」を仕立て上げようとする計画家、「まち」を資本主義の装置にしようとする事業家。そんなよそ行きのまちづくりをしている人たちに、自分たちが住みたいまち、自分たちが人間らしくイキイキ出来るまちを作ろうと市民と一緒に声を上げていった人。
その人の代表作
「アメリカ 大都市の死と生」
を読みたくなった。

・まちなかで踊る
分厚い本だった。そして文字がぎっしり詰まっていた。少し読んでみた。
これは全編に言えることだが、ジェイン先生の文章は読みにくい。いろんな例えが入ったりしながら書いているので一文が長い。結局何が言いたいのかわからない所も多々ある。でも、それよりなにより「まち」の本質をついているところがとても面白かった。

最初にまちを植物や自然界の生物に例えた。それらは周りの環境に応じて、朽ち果てるトコは朽ち果て、成長するところは成長する。そしてその成長の中で循環する栄養素。まちも同じで必要な場所や機能は発達し、不要なものは廃れていく。そして、その循環をつくるのが人。無機質な「まち」がなんだかイキイキと成長する生き物のように感じられた内容だった。

そして、多様な都市を作る4要素
① 混合一次用途の必要性
② 小さな街区の必要性
③ 古い建物の必要性
④ 密集の必要性
土地区画整理をしている人間としては当時は国土交通省から大街区によるメリットをさんざん伝えられ、街区は大きくないとダメだと思っていた僕にとって、小さな街区は衝撃だった。そしてそこにはペリーが唱えた近隣住区論やハワードが提唱した田園居住区のエッセンスは無かった。一住区単位で都市を考え、用途に合わせて都市機能を配置していく。土地利用に合わせた都市の純化。僕が20年間実務で学んだ内容はそこにはひとかけらも無かった。
ただ、本当に人が住むサイズのまち。自分たちが良いまちだなーと思う要素の中にその4要素はあると思った。

一番僕が好きになったのは”歩道のバレエ”
まちなかで多様な生活様式の人たちが、時間を変えて次々に歩道に姿を現す。朝は学校に行く子供や通勤に出かけるサラリーマン。その横でお店を開ける用意をしている店主。そして、昼間は買い物をする主婦やコーヒーショップでくつろぐ人たち。夕方は子供たちが外で遊ぶ。それを近所の店主が見守っている。誰に頼まれたわけでもなく、誰かがわざわざ出向いたわけでも無いのに、子供たちは安全に見守られている。そして、夜。バーでは若者たちがお酒を飲み、楽しい雰囲気が夜まで続く。酔っぱらってまちを壊そうとしている人がいても、付近の住人がそれを許さない。
そんな日常の一コマを切り取ったシーンはとても豊かな暮らしを感じさせてくれた。

土地区画整理で作った住宅地。平日の昼間に訪れると、誰にも会えない静寂と不安を感じさせるまち。人の目が無いから防犯をシステムで補おうとする。そうではなく、人の目が最大の抑止力であり最高に安全な場所。安全で安心なまちに住むなら、いろんな生活様式を持った人たちがまちなかでダンスを踊れる場所なんだと思う。


この本を読んでから僕は、
・ジェイン先生のような素養は無いが、自分事として色んな事を見る観察力、いろんなことに疑問を持つ洞察力を大事にしようと思っている。
・ジェイン先生のようにイキイキとした「まち」はつくれないが、誰もがいろんなシーンでダンスができるような公共空間を作りたいと思っている。

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