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マウンテンランニングマスターズ世界選手権挑戦期⑥ ~Uphillレースのこと~

緊張しなかったといえば嘘になる。
けれども、今回のチャレンジはものすごく自然体に近い状態で臨むことができた。それもこれも2年目のチームでのチャレンジであったこと。日本から持参した食材と、妻となるなるの料理のおかげでいつもに近い食事が出来たし、リラックスして生活できたことは大きい。

僕は会場にあまり早く前乗りする必要のないレースの方が好きだ。
せいぜい1時間前くらいでいいと思ってる。
なので、会場から車で10分ほどの場所に滞在できたのは時間ギリギリまでゆったり過ごせてよかった。このヴィラでの暮らしはあまりに快適だったので1つnoteを書いてもいいんじゃないかと思うくらいに。

レースの朝、日の出は朝8時くらいなのでまだ外は暗い

レースに話は戻って。

9/15(金)Uphillのレースは開催された。
距離は9kmで800m up(50m - )と決してバーティカルのようなよじ登るようなコースではなく走り通すことができる。
*マウンテンランニングでは目安として1kmあたり100m程度の登りとしている。

レースは9時から4つのカテゴリーに分けて実施された。
9:00~ Woman 55-75
9:30~ Man 55-75
10:15~ Woman 35-50
10:45~ Man 35-50

僕らのスタートは10:45
予定ではスタート30分前にフィニッシュ地点へと運んでくれる荷物預かりの締め切り、20分前が招集の締め切りであった。散歩をしながら会場の様子を確かめる。荷物預けの場所、トイレの位置、招集場所などなど。一通り把握したところで流れを掴むために1つ前の”Woman 35-50”のスタートの様子を見守る。計器の不具合で数分遅れてスタート。大体の流れを理解したので招集までアップをし、トイレを済ませる。

今回の整列は招集を受けたもの順に前へ。早く並ぶに越したことはないが、整列してじっとする時間は落ち着かないのでギリギリに召集を終えた。整列もギチギチではなかったので可能な範囲で前の方へ。


スタート

10:45過ぎスタート。
日本チームは予定通り?成瀬(なるなる)が飛び出し、中村(あっきー)、僕の順で進む。

木曜にコースの序盤2kmほどは下見していたのであらかたのイメージは出来ている(と思ったら1.5km過ぎから違うルートへ。まぁ、そんなもの)ので、それを思い出しながら走る。最初の1kmは舗装路。そこからシングルトレイルになるのでここまでで流れに乗ること、少し我慢して自分の走力に対して頑張っておくことが肝心。速すぎる入りをした選手を拾いながら少しづつ前へ。

最初に飛び出すなるなる


レースで考えていたこととレース展開

いつも思うのだけど、みんな何を考えながら走っているのだろう?レースの展開って、僕の場合ひたすら我慢なので、描写がどうしても地味になるのだけど(特にこのレースはUphillなのでひたすら我慢の極みだ。苦笑)みんなはどうなんだろう?

今回は昨年同様、チームでのメダル獲得を狙っていた。昨年はともかく3人が近い順位でフィニッシュすることを心掛けて走った。この点は今年も同様だったのだけど、昨年の経験を踏まえ、我がチームのアナリストあっきーが僕ら含め、出場選手全員のITRA Performance Index(レース結果に基づく偏差値のようなもの)を調べてレースに臨んだのだ。これにより、どこのチームが相対的に格上なのか、どこの国に抜かれてはいけないのか?逆にどの国を抜かすとチャンスなのか?などなど事前に頭に入れて走ることができた。

データによれば、ポルトガルとアイルランドが我々のライバルであった。ポルトガルは10人?いたので、数えるのが難しいけど、アイルランドは同じ3人。うち1人は個人でメダルを取るのがほぼ確実だったので、残り2名を押さえ、かつ、僕らが可能な限り上位でフィニッシュするれば銀メダルのチャンスがあると推測できた。*エントリーリストから可能な限り同姓同名の選手を拾ったがわからない選手や数値が大きく異なる選手もいたので結果としては偏差値通りの走力でない選手は一定数いたが、レースを進める上で、あっきーが調べてくれたデータはとても心強かった。

2km地点くらいまではこんな感じでかなり狭い

1.5kmほど過ぎた頃だろうか、アイルランドの選手が1人見えた。2番手か3番手かはわからないが、彼を抜かせば我々のチャンスは格段に広がることだけは確かだった。まだ序盤ではあったが、ここで離すことができれば順位も差がつくし、銀メダルの可能性はぐんと高まる。僕にとっての勝負ところであった。流れに乗るために序盤から僕にしては前のめりのペースで走っていたが、メダルは逃したくない。昨年の銅ではなく銀になるなら尚更だ。一踏ん張りして一気に抜かす。抜かしてすぐに相手に切り替えられないようにあげたペースをしばらくキープ。振り返ることはしなかったので、その後はわからないが、見事に逃げることができたようだ。

3kmほど行くと、遠くにあっきーが見えてきた。僕は全て走り、アッキーは登りでテンポの良い歩きを混ぜるので走り続ける僕が徐々に差を詰める。あと少しで追いつきそうになると、傾斜が緩くなって遠くなる。傾斜がキツくなると僕が差を詰める。「アイルランド1人抜かした!」それを伝えたくて、一所懸命に追いかけるが追いつかない。

5km地点くらいまではすぐ目の前に見えていたのだけど、この辺りからフラットになりトラバースする区間に入った。ここであっきーは一気に前に出ていき追い付くことは出来ず。けれども、結果として中間点まで粘って走ることができたのはレース展開にとってかなりプラスに働いたと思う。

僕の前を淡々と進んで行ったあっきー

中間あたりのトラバース区間は右手に大西洋が大きく広がって、それを横目に山の中腹をぐるりと迂回していった。「大会オフィシャルカメラマン、なんでここで撮らないんだろう?今日一の写真が取り放題なのに。」いつもの事ながら真剣なレースでも余計なことが頭に浮かぶ。景色をじっくり楽しむ余裕はないし、とても苦しかったが、それでも楽しかった。この辺りまで来ると後ろのアイルランド選手よりも前を行くあっきーは見えなくなってしまったものの、気持ちが前へ前へと向いていたのだと思う。先にフィニッシュをした上の世代の選手が逆走でちらほら戻ってくるのにも出会うようになったのもこの辺りからだ。きっと彼らの声援が力になっていたのだと今になって改めて気が付かされる。あくまで肌感覚だが、日本チームへの応援は多い。どの国を走っていても好意的に迎えてもらったり、レース中にはたくさんの応援を受ける。これは本当にありがたいことだ。

トラバース区間を終え、再び登り始める。ここで概ね6km地点。今回のレースは距離表示はなかったが、ほぼ3kmジャストの間隔でエイドステーションが設置されていた。トラバース終了地点には2つ目のエイドがあったので距離を把握することができた。水をもらって、それを1口飲み残りは頭からかぶった。気温は控えめであったが登り続けていると暑くなる。残り3kmほど。もうひと踏んばりだ。急登と緩やかな登りを繰り返して徐々に標高を稼ぐ。残り1km強だろうか、なんとなく地形や当たりの雰囲気が変わった。フィニッシュはそう遠くないはずだ。その上りで競り合っていた選手から前に出た。しばらく行くと舗装路に出た。「あれ、フィニッシュはどこだ?」一瞬戸惑いつつも案内に従い平坦な舗装路を数100m進むと右へ曲がる案内が。「あの先がフィニッシュに違いない。」最後のプッシュ。そしてフィニッシュ。

レースを終えて

フィニッシュでは先に完走をした2人が出迎えてくれた。僕の約4分前に年代8位のなるなる、僕の約2分前に年代11位のあっきー、そして僕が14位。速報を見ながら、他チームの順位を合計して僕らの合計と比べる。「銀メダルじゃない?」驚きと喜びが湧き出てくるが、念の為、数え直す…。繰り返すこと数回。「間違いない銀メダルだ!」見事昨年を超えることが出来、明後日のLong Distanceにも弾みがついた。ほっとしたのか疲れがどっと出てくる。

順位を確認して、ほっとしたのと喜びと。

無事にメダル獲得ができたのでフィニッシュエリアを見て回る。色々な国選手がいるので挨拶を交わす。長年の友人のアイルランドのIanは流石、個人で銀メダルを獲得した。「おめでとう」を伝え、お互いの検討を讃える。嬉しい悔しいはどんなレース結果にもついて回るけど、結果以上にベストを尽くしたことを讃えあうこのカルチャーが僕は好きだ。

色んな人と話をしているとテレビ局からインタビューを受けた。レースの感想や景色の素晴らしさなどを心を込めて回答したら、ばっちりと僕のインタビューも盛り込まれる形で大会のニュースが紹介された。

事前にテクニカルミーティングでアクセスを把握していた僕らは家族が応援がてら車でフィニッシュへとアプローチしていた。その為、スムーズに下山し、シャワーとランチを取ることができた。たかが9km、されど9km。疲労感いっぱいの僕らは夕方の表彰式まで昼寝をしたかったのだが、身体が興奮状態の為か疲れ過ぎたのか思うように休めなかったが、それ以上に銀メダル獲得は喜ばしく心地よい疲労であった。

旅とレースの話はもうしばらく続きます。


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11/5(日) 逗子トレイル駅伝2023(受付中)
11/11(土)秋の収穫祭コンサート&マルシェ(受付中)

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